第40話 監禁プレイ

――――【蓮目線】


 くそっ!


 メスカリで機材を売ろうにも、【安くしてください】、【送料持ってくれませんか】、値切ろう値切ろうとしてきやがる。ふざけた奴は何万も負けろとか……。


 だが早く金作んねえと部屋代すら払えねえ!


 なんとか半額ぐらいで処分できて200万くらい手元に残った。ん? ならショッピング枠で高額商品を買って現金化すればいいんじゃねえか。


 やっぱオレって、天才だわ!


 待てよ……こんなちまちまつまらねえ配信や転売で儲けるよりも、AVに出りゃ一攫千金いっかくせんきんじゃねえか。もう世の中じゃオレの性癖までバレちまってんだ。


 それに好きでもない女と金のために寝たはずが、逆に金を巻き上げられるとか、マジでふざけてる。だが慰謝料を払わねえとアイドルや女優どころか、美玖とすらやれなくなっちまう。


 だからオレは椅子に腰かけ、スマホをいじっている美玖にハグしながら迫った。


「美玖……残念なんだが動画配信で金を儲けるのは無理みたいだ。おまえはこのまま貧乏になってのたれ死んでしまうか、金に糸目をつけずに遊んで暮らすか、どっちを選ぶんだ?」


「えっ!? 蓮くん……実家がお金持ちなんじゃ……」


 美玖は振り向き、オレに戸惑いの表情を見せる。


「乗っ取られたんだよ!!! まさかの結月の野郎になぁ! あいつに復讐するためにも金が必要なんだよ。だからよぉ、頼む。アダルトビデオに出演して金作って、おまえを捨てた結月を見返してやろうぜ」


「麟太郎が!? なんで、なんでなの?」

「知るかよ! だがあいつはオレたちが思った以上に儲けてるのは間違いねえ。このまま終わっていいのか?」

「うん……もっといい生活がしたいからそうする」


 もうこうなりゃ、恥も外聞もねえ!


 訴訟の方も美玖に内緒で示談で済ましたんだが、2件の慰謝料だけで手元にあった200万がすべて飛んでいきやがった……。このままじゃ、あと800万はむしり取られかねねえ!


 美玖の同意が得られたことで、業界大手のS・EXソフト・エグゼクティブに蓮と美玖の浮気セックスと題した動画をわざわざ売り込みにいく。


 オレと美玖は革張りのソファーに座らされていたが、いくらAVの会社といえども事務所のソファーでやってるとかねえだろうな?


 目の前の日焼けしたプロデューサーを名乗るおっさんにオレのスゴさをアピールするために言い放ってやった。


「くっくっくっ、業界大手だか知んねえけど、いまは配信の時代なんだよ。わざわざDVDやらブルーレイを買う奴なんているのかよ? あんたも知ってんだろ? 寝取られ動画で一世を風靡ふうびした蓮と美玖が来てやったんだ。まもなく落ちぶれるあんたのとこの会社も俺たちが来たことで安泰あんたいだなぁ、はっはっはっ」


 オレたちたちの応対をしているニットを肩にかけている化石みたいなプロデューサーに言い放つと、そいつは口が開いたまんまな~んもことばが出ねえでやんの。


「……ははは……面白い冗談が言える方なんですね……とりあえず、うちの男優と女優志望ということでよろしいでしょうか……?」 


「ああ、頼むぜ! 俺はそんじょそこらの汁男優とはわけがちげえんだからよ。美玖も丁重に扱ってくれよな」


「よろしくお願いします。最低1000万くらいはほしいです。私、SSRじゃなくUSSRウルトラスーパースペシャルレア級素人なんで!」


 はは、美玖までプロデューサーに言い放ちやがった。まあオレたちはここのトップに、いや世界に名が知れ渡ってんだから、すぐに売れまくるだろ。



 男優、女優志望はまず性病検査からということで病院へゆき、美玖とともに検査を受けたのだが……。


「あのお二人ともHIVエイズは陰性でした」


 プロデューサーの紹介の医者がカルテを見ながらオレたちに告知していた。


「そうだろう、オレがそんなちんけな病気にかかるはずもねえ! オレの精液は女どもが好んで欲しがる聖水みたいなもんだからなぁ!!!」

「私だって病気なんてしてないし、至って健康だよ」


 ほっとプロデューサーは胸をなで下ろしていると、医者はしゅうとめの小言のようにオレたちに言ってくる。


「あー、ですが梅毒からクラミジア、それに性器ヘルペス、淋病りんびょうなどのさまざまな性病を併発しておりますので、とてもアダルトビデオのたぐいに出演できるようなものではありません。即治療してください」


「は?」

「え?」


 オレと美玖は互いの顔を見合わせ、診察室から出るとプロデューサーがガチ切れしていた。


「ああ? なにが配信だよ、てめーらのせいで何時間損したと思ってんだ! 話を聞いてりゃ、うちのソフトが売れねえとか……ふざけんじゃねえぞ、てめーらみたいな性病のデパートどもが、来るんじゃねえよ! いまは病気持ちなんてどこも雇わねえって」


 くそっ、使えねえ女だ!


「そうか、邪魔したな」


 美玖さえ、病気じゃなきゃ他の男の相手させて、儲けてやったのに……。ギャーギャー騒ぐプロデューサーの下を去ろうとすると肩を掴まれる。


「検査代二人で7万払っていけよ」

「ああ? なんでそんなかかんだよ!!!」



 結局病院から騒ぐなと怒られ、治療代を払うまで帰さないと言われ、仕方なく支払って帰ってきた。


「はあ……まさか病気になってるなんて……これじゃ風俗でも働けないじゃない」


 美玖はオレがハンドルを握る高級外車のシートの横で深くため息をついたかと思えば、ジロッとオレを睨んでくる。


「蓮くん、浮気とかしてないよね?」


 おまいう?


「してねえよ! 美玖こそ結月に感染うつされたんじゃねえの? あいつ会社でこそこそマッチングアプリいじってたからなぁ」

「うそ……麟太郎が? ゆ、許せない! こっちが慰謝料ふんだくってやるんだから」


 ホント、美玖はチョロいぜ!


 マッチングアプリいじって、やりまくっていたのはオレだよ、オレ!



 怒りの矛先を結月に向けさせ、帰ってきたまではよかったが、郵便受けにまたなにか入っており、見ると……。


「なんだと!?」


 マンションの家主から退去通知書が届いており、最終勧告とまで書いてあった。どうやら数ヶ月前から通帳引き落としができずに通知書を送っていたが、連絡がないので一週間以内に退去するように、とのことだった。


 出向でバタついていたし、つまらねえDMごと捨てちまったからまったく気づいてねえよ!!!


「美玖! おまえ、貯金いくらあんだよ?」

「ないよ……そんなの。麟太郎から生活費もらってたけど、蓮くんとのデート代にぜんぶ消えたし」


 この女、くそ使えねえ!!!


 つかオレがおごることも多かったのになんで金がそんな消えるんだよ。つか、デートんときに高級ブランドの服やバッグをやたら身につけてやがったか……。それもこれも追い出されて結月の部屋にあんなら、売りにも出せねえとかあり得ねえ!


 オレが美玖の浪費癖に呆れているとインターホンがなり、美玖が対応に出たのだが……。


「蓮く~ん……」


 なんかかすれた声でモニターを指差してオレを呼んでいたので、確認する。


「すみません。私、こういうものでして……」


 モニターには警察手帳を掲げて、にっこりと笑うスーツを着たおっさん、その周りにもずらりと警察らしき奴らがドアを取り囲んでいた。


―――――――――――――――――――――――

「安くしてください」が「安心してください」に見えちゃう。おパンツ穿かずに待機してるからかな?


コメントたくさんいただいており、返信できずにすみません。また完結後にお返ししようと思うのでしばらくお待ちください。


USSRソビエトは崩壊しちゃいましたが、美玖も崩壊しちゃうんでしょうねw

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