第34話 実家

「へ~、ここがせんぱいの部屋なんだ」


 俺がいない間もかあさんが掃除してくれいた俺の部屋に三人を招き入れていた。それまで実家の俺の部屋に入った女の子は美玖だけ。


 課長は棚にディスプレイされたエアガンを眺めて、「触れてみていいか?」と訊ねてきていたので俺は「どうぞ好きなだけ」と返す。


 俺の両親には美女三人との関係を職場の上司と後輩、同級生と伝えておいたが、特に気にしたことはなかった。それよりも美玖と別れたこととご近所である美玖のご両親との関係悪化を気にしているようだった。


 ご近所トラブルはやっぱり避けたいものだからな。


「課長ぉ……。もっと端っこによってくださいよ。無駄に幅を取ってるんですからぁ、その胸が!」

「姫野だってそうだろ。なんだ、この駄肉は! ちょっとは運動しろ」


 それにしても狭い……。


 課長と姫野は俺の使わなくなったベッドのマットレスの上に座り、いちゃいちゃとじゃれ合ってる。


 俺と星乃は座布団の上に座り、ローテーブルに並べれていた資料を眺めていた。といっても美玖と蓮の浮気の証拠ではない。


 それは星乃の調べた蓮の実家について。


 俺は資料をめくりながら、星乃にお礼を告げる。


「星乃、いつもごめんな。浮気調査だけじゃなく、身辺調査まで頼んでしまって」

「いいえ、こんなことお安いご用よ。なんと言っても結月くんの頼みだから……私……結月くんに頼まれれば、なんだってする覚悟はできてるの……」


「あ、いやそこまで危ない橋は渡らせないから」

「ありがとう……やっぱり結月くんはあの頃とちっとも変わってなくて、やさしいまま。美玖に浮気されて変わってしまったと思ったのに」


 いや変わってしまったと思う。愛情より金銭を俺は選んでしまったのだから……。


 浮気していて、憎さもあった美玖と別れたあとに自分の部屋に戻るとやっぱり思いだしてしまう。高校の卒業式の日に美玖と俺のベッドで初めて結ばれたときのことを。


 俺が過去を思い出し、うつむいていると星乃が肩に手を触れて、俺をなぐさめようと努めていた。


「結月くんは美玖に洗脳されてたのよ、ずっとモテないって。でもあんなの嘘。結月くんはみんなにすごくモテてた。だけど、結月くんと仲よくしようとすると美玖が、つき合ってもいないのに彼女面してきて、彼女が結月くんと幼馴染なこともあって誰も割って入ることができなかったの」


「……そうなのか?」


 俺と星乃はお互いの美玖に対する認識の違いを語り合ってるうしろで、課長と姫野は二人で俺の部屋を見て盛り上がっている。


「ルパンの銃だぁ!」

「ふっ、ワルサーP38だな。私はこっちだ、ジェームズ・ボンドの銃」


 姫野は棚のアクリルスタンドに飾られた見知った拳銃のエアガンを見て、感心していると課長はワルサーPPK/Sを胸前に持ってきてポーズを取っていた。本当はPPKなんだけど、つっこむのは野暮やぼってもんだろう。


 はっ!!!


 なるほど、その手があったか!


 おそらく蓮は枕営業の代償として、高額の慰謝料を請求をされるに違いない。


 その補填ほてんとして、俺が蓮と美玖は二人のプレイを生配信していたことなどを理由に肖像権の侵害だと訴訟を起こすだろう。


 だがそう易々と問屋が卸さねえ。 


 くっくっくっ、蓮……おまえは俺に訴訟なんか起こさせねえし、頼る宛てもなくなるんだからな!


 俺は蓮の実家と課長と姫野がワルサー社のエアガンで遊んでくれていたことに感謝していた。


「もう美玖と別れたんだから、いいよね」


 浮気ぜったい許さないマンになっていると星乃が盛り上がっている課長たちの目を盗んで俺の手の上に、手を重ねていた。


「ねえ、ないしょでキスしよ……」


 えっ!?


 ふーっと耳元に吐息を吹きかけるように星乃はささやいて、俺を誘っていた。


 それだけじゃない!


 テーブルの下の下半身がやたら気持ちよくなってる。


 星乃は人の目を盗んでえっちなことをすることに興奮を覚えるようで、彼女は俺の足の付け根をもう片方の手でまさぐり、気づいた俺に蕩けた眼差しで微笑みかけていた。


 美玖と別れ、緊張の糸がぷっつり切れた俺はゆっくりと目を閉じた星乃に顔を寄せていく。俺が目を閉じ、星乃の肩に手をやって唇が重なる。


 ん? 重なる?


 なにか星乃の唇とはちがう感触に目を開けると、俺は姫野の指先とキスしており、課長も星乃に同じようにしていた。


「星乃先生、約束を守っていただかないと……抜け駆けは許されませんよ」

「まったくです。油断もすきもあったもんじゃないですね」


「おかしいわね、私が気配を気取られるなんて……やっぱり結月くんに目がくらんでしまったのかしら」


 星乃はまったくりてなさそうだった。


 

――――数日後。


 会社に戻ると蓮の枕営業問題は失踪しっそうした黒木沢課長が営業成績欲しさに目がくらんだことにされてしまっていた。


「不本意だ……」


 審査部から呼び出されていた課長がうちの課に戻ってきたのだが、がっくりと肩を落としておぼつかない足取りで席につく。


 課内の者一堂が課長を心配して駆け寄り、みんなが俺を見て課長に訊ねるように促してくる。


「まさか、課長の進退は……」

「いや、それは大丈夫だ。ちゃんと会社に残れる。むしろ黒木沢課長の穴を埋めるために急遽きゅうきょ、辞令が出てしまった……第一営業部に黒木沢課長の後任として異動とな」


 ――――課長、おめでとうございます!


 ――――実質、出世みたいなものですね!


 みんなが拍手と賞賛を送るものの、課長の顔色は優れないので、俺は気になって再び訊ねた。


「浮かない顔してますが、いったい……」


 姫野が俺のスーツの裾を掴んで、耳打ちしてくれた。


「……そんなの決まってるじゃないですか! 課長はせんぱいと離れたくないんですよ!」


 そうなのか!?


 俺と課長は、お互いの目をじっと見つめ合うとなんとなく姫野の言ったことが通じたのか、なんとなくうなずいたように見えた。


 課長は指を交互に組んで、ため息混じりにおとがめなしの理由をみんなに伝える。


「会社は失踪した黒木沢課長にすべて責任を負わすつもりらしい。確かによい噂のない黒木沢課長だったが……」


 黒木沢課長より課長のことが大好きな課の者たちは課長を励ましていたが、休憩時間になって俺と姫野は課長に屋上に呼びだされ、黒木沢課長の追放理由の真実を明かしてくれていた。


「上層部はどうやら、政治家の娘という立場を利用したいがために私は不問にして、黒木沢課長をスケープゴートに仕立てるつもりらしい。私の実家のことを持ち出されるのは本当に不本意だ……」


 いままで実家のことを隠していたのに、すで会社にはバレていて、実力で若くして管理職にまでなった課長にとっては許せなかったんだろう。


「俺は知ってますよ。課長がコネなんかで出世したんじゃないってことを」

「そうですぅ、課長が政治家の娘だって、あの男みたいに威張りちらしてたら、嫌いになって意地悪できてたんですよ!」


「なんだ、その励まし方は……ぷっ、まったく姫野らしいな」

「ああーっ! 二人ともそんなに笑わないでくさいよーーっ!」


 実に姫野のらしい励まし方に俺と課長は大笑いしてしまっていた。


 姫野は頬を膨らましており、それをまた課長が笑っている微笑ましい光景を眺めていると、ポケットのスマホがうごめいて、確認すると星乃からのメッセージだった。



【のぞみ】

《すごいわ》

《Googleマップの》

《間男の実家を見てみて》


                 【麟太郎】

                 《わかった》

                 《ありがと》



 蓮の実家、加賀山アクリル工業で調べてみると……。


★☆☆☆☆

枕男レンの実家で~す!


★☆☆☆☆

赤ちゃんプレイグッズ作ってます。


★☆☆☆☆

縄も買えました!


 前に確認したときは星4評価だったのが、低評価の嵐のために限りなく星1になってしまっており、口コミには蓮の浮気や枕営業に関連した罵詈雑言が現在進行形で次々と書き込まれていく。


★☆☆☆☆

アナ○ビーズの新製品がでるみたい。


★☆☆☆☆

うほっ、いい男の社員揃ってマス


★☆☆☆☆

入社式で掘られるぞ!!!


★☆☆☆☆

ぶっとい浣腸の入射式ね


 もしかしたら社内で俺と同じように彼女を寝取られた者がいて、情報をリークしたのかもしれない。


 だが俺にとってそれは好都合でしかなった。


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  WEB作家あるある

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