第28話 ネトラレ電話

「じゃあ、おじさん、おばさんによろしく」

「うん! ありがとう、麟太郎」


 美玖は旅行券のお礼のつもりか、かかとを浮かせて俺の頬にキスしようとしてくるが、俺は素知らぬ顔で身を翻して、美玖の白々しいスキンシップを突然忘れていたことを思い出したようにして避ける。


 俺はキッチンへ行って戻ってくるなり、彼女に水と薬を渡していた。


「はい、酔い止め。美玖はすぐに酔うから、いま飲んでおいた方がいい」

「あ、うん。そうするね」


 ゴクリと喉を鳴らして、なんの疑いもなく俺の渡した薬を飲んでしまった美玖。もちろん、うちのチャンネルの看板女優に危ない薬を飲ませるなんて馬鹿な真似はしない。


 むしろ美玖の方が危ないと言っていい。


 美玖は旅行中に危険日を迎える。そこへ蓮に中出しされて妊娠されたら、たまったもんじゃないからな。酔い止めと偽った薬を低容量ピルとも知らずに飲んで、本当におめでたい奴だ。


 美玖は蓮のミルクを絞り出し、俺は蓮と美玖をうまくセックスさせて、金を絞り出す。


 改めて美玖を見送る俺。重そうなキャスター付きのスーツケースを鼻歌交じりに引きずり、こにこと蓮との旅行に浮かれているようだった。


 女優と男優を管理するちょっとしたマネージャーになった気分だった。


 なぜ、俺が美玖が浮気旅行かって予測がついたのかと言うと……蓮は第一営業部へ異動に合わせて、溜まった年休を消化すると情報を掴んでいたからだ。


 蓮と美玖は浮気がバレてないとでも思ってるのか?


 いくら俺が鈍感と言っても、ここまであからさまに分かりやすい行動を取ればすぐにバレるだろ……やれやれ、知らぬ存ぜぬの演技は疲れるな。



 美玖を地獄の一丁目に送り出したあと、俺はいつも通り仕事をしていた。並べられたファイルの山に隠れて、スマホに星乃から逐次送られてくる情報をくすくすと笑いながら確認していると、姫野がびっくりすることを問いかけてくる。


「もしかしてぇ、女の子からですかぁ?」


 んふふふ~と顔は笑っているが、目は笑っていない姫野の鋭い勘に俺はなんだか後ろめたさを感じて、視線を逸らしそうになってしまっていた。


 空調の効いている部屋にも拘らず、俺はなにも答えられずにだらだらと額から汗を流して口ごもっていると、姫野は椅子同士をくっつけて追及を止めない。


「せんぱい、女の子からスゴくモテますもんね。昔、関係のあった子だったりしてぇ?」


 姫野は猫のように身体を愛らしくすり寄せて、俺から関係を問いただそうとする。


「……俺はモテないって。連絡は会社がお世話になってる弁護士の先生に紹介してもらった浮気調査の探偵さんからだよ。……やり手の女性探偵だけど、やましいことなんてないからな」


 同級生というノスタルジックさと元々ポテンシャルは高かった星乃が美しくなった真の姿を見せてくれたことで、えっち寸前まで行きそうになってしまっていたけど、してないからノーカンだ。


「もしかして、星乃のぞみ先生ですか?」

「な、なぜそれを!?」

「せんぱいは才色兼備の星乃先生にまでモテてしまうなんて……やっぱり放っておけません!」


 姫野は俺が隠れ見ていたスマホの画面を覗きこもうとしていた。


「うっ!?」


 星乃とのやり取りでやましいことはないので、堂々と見せたのだが姫野は手を口に当てて顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。


 そりゃそうだろう。


 真っ昼間から蓮と美玖が裸で抱き合ってる写真を星乃は送ってきていたのだから。


 星乃は打倒美玖に炎を燃やしているらしく、盗撮まがいのことですら、平気で……いやノリノリでやってくれており、外で撮影した動画も溜まってきてはいた。


 俺は姫野からスマホを覗きこんだとはいえ、不可抗力でも後輩に仕事中にエロ画像を見せてしまったことを謝罪する。


「ごめん、これじゃまるっきりセクハラだな」

「せんぱい……私、えっちな画像を見せてしまった責任……取ってください」


 ライブで蓮と美玖のアブノーマルな行為を見慣れてるはずの姫野だったが、目を細めて不機嫌になっていたかと思われた。


「昼食奢るし、会社帰りに姫野とゲームするし、それで――――」

「はぁ……はぁ……あううん」


 機嫌直してもらおうと姫野に声をかけたのたが、デスクに隠れた姫野のスカートの辺りが視界に入り、思わず言葉を失った。


 姫野はスカートを撫でて声をあげていたのだから!


「責任って……まさか」


 姫野は色っぽい流し目でチラッと俺を見てきて、こくこくと頷いている。俺は思わず姫野の発情した姿を見てごくりと唾を飲み込んだ。


 ――――ガシッ!!!


「痛いっ、イタい、いたいぃぃーーー!」

「こおらぁ! 仕事中になにしてるんだ」


 姫野がことを致そうとしているときに後ろから課長が現れ、姫野の頭をアイアンクローで掴んで叱っていた。


「痛いです、課長ぉ!」

「まったく、次にやったら結月は私のそばの席に移すからな!」

「そ、それだけは許してくだ~い! すびばぜん、もうしませんからぁ……」


 涙目で姫野は課長に謝罪していたが、課長はふうっとため息をついたあと、俺と姫野に対して笑っていた。



 昼休みになり、俺たち三人は小さな会議室でお弁当を食べながら、星乃から送られてくる動画を確認している。課長にくわしい事情を話した俺だったが、そういうことならと彼女が空き会議室を速攻で押さえたのだ。


 俺の私用のノートPCに送られてくる蓮と美玖の組んず解れつ……。


「まったくバレてないと思うとこんなにも大胆になれるんだな。呆れてものが言えん」

「あっ、栄養ドリンクを飲んで、また始めるつもりですよ」


 課長と姫野は仲よく二人の営みにツッコミを入れてくれている。まあ誰が見ても蓮は日本が誇る変態だし、美玖は立派な汚嫁になれるよう蓮から日々調教を受けているのだから、ツッコまざるを得ない。

 

 美玖に送った旅行券の指定の武士沢温泉郷は星乃の顔が利くらしく、どうしても浮気の証拠を集められないときに、温泉に誘導して動かぬ証拠を掴む最終手段に使っているとのこと。


「俺、ちょっと美玖に電話入れてみるよ」

「おおっ、ナイスアイデアだ!」

「おもしろそうですぅ!」


 俺はイジワルで美玖と蓮がえっち中に電話しようとしていた。エロ漫画あるあるなテンプレシチュエーションで寝取られた彼女が間男に電話中に責められて、バレないように奮闘するというもの。


 さあ、美玖……おまえの下手くそな演技を俺たちに見せてくれ!


―――――――――――――――――――――――

大根(?)が刺さった美玖の艶技について詳しく書きたいんですが規約に大根おろし器のようにガリガリこすれてしまうので、サラッとしか無理なことをお許しください。その代わりに蓮が地獄を見るざまぁが待ってますよw


ざまぁにご期待される読者さまは是非フォロー、ご評価願います、ご声援に応じて蓮が盛大にざまぁされる予定ですwww

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