第26話 添い寝
――――ライブ配信後。
喉元過ぎれば熱さ忘れるじゃないが、俺たちのコラボライブという一大事イベントが大成功に終わったあと、課長と姫野は取っ組み合って
「なにゆえ、姫野と結月が結婚せねばならないのだ? 金か? 札束で結月を買収したんだな。さしずめ『逆玉に乗りませんかぁ~、せ~んぱい』などと誘惑したのだろう」
「課長の物まね、ぜんぜん似てませんからっ! 課長こそ、せんぱいは
「なっ!? なぜそれを……。だが父は関係ない! それに結月にはひとことも話したことないのだからなぁ!」
「お嬢さまも、お客さまもどうされたのですか、落ち着いてくださいませ……」
「あなたは黙っててください。これは絶対に譲れない戦いなのです。怪我したくないなら危ないから部屋から下がって」
「そうだ。愛を巡る戦いに第三者を巻き込みたくない。姫野とは結月はどちらが相応しいのか、きっちり決着をつけねばならないのだ」
二人は、ああ言っているが……。
そうだよな、1億ものスパチャを得たんだから。
俺と結婚する=配信とスパチャの財産を得られるんだから俺を巡る戦いというより、
「二人とも喧嘩しないで! 今日得た配信の広告収入とスパチャは二人で分けて。俺はいらないから。今日たくさんの人に見てもらったのは二人のおかげだし、二人のメリットがないことに協力してくれたことに感謝してもし足りない。そんな二人がお金で揉めてほしくないんだよ……」
俺の言葉に課長と姫野は掴んでいた手を緩めて、取っ組み合いを止めてくれた。
「結月違うんだ。お金なんてどうだっていい。私はただ姫野がさも結月と結婚すると言い回るのが許せなかっただけだ……」
「わたしも課長がせんぱいにしつこくアプローチするのが、許せなかったんです……」
課長と姫野はお互いに顔を見合わせ、申し訳なさそうに俺にぺこりと頭を下げたあと、ぐいっと足を踏みこんで俺の左右から上目づかいで訊ねてくる。
「せんぱいはわたしか、課長……どっちが好きなんですか?」
「私は結月の出す答えに従うつもりだ。頼む教えてくれ」
そんな二人に俺は正直な想いを伝えた。
「ごめんなさい、俺にどっちが好きなんて選べないよ。課長はいつも格好よくて仕事もできるけど、ときおり見せる弱さを見ると支えてあげたくなる。姫野は俺を慕ってくれて、かわいいし、とても頑張り屋さんだ。お嬢さまなのにフレンドリーで気取ったところがない。とにかく二人とも魅力的すぎるんだ」
どちらも俺を本当に心配してくれる親友だから。
「では結月の魅力を知らずに加賀山と浮気してしまった残念極まりない彼女と別れた暁には私と付き合ってほしい」
「いいえ、課長よりもわたしと付き合ってください」
うちの会社の男性社員の人気を二分する課長と姫野が俺とつき合いたいだって!?
そんな馬鹿な!!!
「ありがとう、俺を励まそうとそんな冗談まで言ってくれるなんて……」
課長は超大物政治家のご令嬢、姫野は大金持ち……それをいっさい鼻にかけない上に美しくかわいい魅力的すぎる女性たちだ。
そんな子たちが俺みたいな平凡を絵に描いたような男を好きになるわけないだろう。
美玖からさんざん「モテない麟太郎につき合ってあげるのなんて、私くらいしかいないんだから感謝してよねっ」と言われていたことを思い出していた。
「冗談でこんなこと言えるはずない……」
「せんぱいは自己肯定感が低く過ぎるんですよ……」
なにか二人が口ごもって、ぶつぶつ言ってるみたいだったが、蓮のような自意識過剰さを戒めていると、姫野はうつらうつらと半目になりながら、上半身をゆらゆらと揺らし始める。
「せんぱい、わたし……なんだか眠くなってきました。ちょっと休みませんか?」
「私もだ。ああちょうどいい、姫野の大きなベッドがある。あれなら、三人で休めるだろう」
「わたしも課長の意見に賛成ですぅ!」
えっ!? 課長も姫野も、なに言ってんの?
いまでも二人のえっちすぎるランジェリーを見て股間がヤバいのに、そんなことしたらラブホの料金体系にある休憩とは名ばかりの激しい運動になってしまいかねないよ!
「いや俺、男だから……」
「ふむ、それでは姫野とまた争わねばなるまい」
「ですね。二人でせんぱいをシェアすれば、喧嘩しなくていいかも。せんぱいとみんなで川の字になって寝れば問題は起こらないと思うんですぅ」
いやいや、それって絶対に問題だよね!
課長と姫野は腕組しながら、たわわを強調し俺にゆっくりと迫ってきており、後ずさりしていったが、ついに追いつめられベッドにすとんと腰掛けてしまった。
「ほんのちょっと仮眠を取るだけですから」
「私はもう疲れた。早く休みたい……結月の腕に抱かれて」
課長……もうそれ添い寝じゃないですよね!?
俺はいままさに前門の姫野、後門の課長状態である。
膝の上にはたゆんと揺れる姫野のたわわが乗っかり、アイドル声優にも勝るとも劣らない彼女のかわいらしい美顔が、あろうことか俺のズボンの前立てをもふもふと戯れるように頬ずりしていた。
そんなことしたら、特殊警棒のようにジャキンと臨戦モードになってしまぅぅぅ……。
姫野と対峙してると、いつの間にか課長に裏を取られて背中に触れられ、ベッドに倒されてしまっていた。
「俺たちは友だちみたいな関係なのにこんな淫らなことしちゃ……」
――――んぷっ!
「結月は私たちに任せてほしい。黙っていれば、天国に連れて行ってやろう」
課長はふふっと小悪魔的な笑みを浮かべかたかと思ったら、ベビードールを脱ぐどころか、ブラジャーまで外して放りなげてしまい、そのまま美乳を俺の顔にダイレクトアタックさせ、おっぱい上四方固めで俺を黙らせる。
一瞬だったが目に焼き付いた課長の美乳……。
つきたてのおもちのように柔らかく、温かく俺を包みこむ。
いつもビシッと決めたスーツに窮屈そうに押さえ込まれた感じは常に自分を律する課長そのもの。俺も男なので、いつもいっしょに働いている彼女のたわわに実った乳房を見たいという願望はあった。
それがまさか叶ってしまうなんて……。
はあ、はあと課長の興奮している息づかいが聞こえてきて、すっかり
目をおっぱいで覆われ、見えないがいま課長はセミヌードなんだよな?
そんなことを思っていると、姫野は大きな声で課長を非難していた。
「あーーっ! 課長だけ先に脱いでずるいっ! わたしも脱ぎますぅ」
「あっ! こら、姫野! ぜんぶ脱ぐんじゃない! 具が見えてるじゃないか」
具!?
池の水ぜんぶ抜くみたいに、着てる服ぜんぶ脱ぐとか、まさか姫野はぜんぶ脱いで、生まれたままの姿を俺の前で披露してくれているというのか!?
これは夢に違いない……。
もう課長と姫野っていうSSR級美女が俺に素肌を露わにして添い寝してくれるなんてあり得ないのだ。
ああ……今夜の夢は間違いなく夢精するな!
ありがとう神さま、蓮に美玖を寝取られた俺に夢でも最高のプレゼントだよ。
仕事もそうだが、コラボ前の調整やらで疲労が溜まっていた俺は課長のおっぱいとヌードになった姫野にハグされるという妄想全開の肉布団に包まれ、意識が遠のいていった。
薄れゆく中で二人の声が聞こえる。
「結月は寝てしまったか……起きてるか、姫野?」
「はい、こんなチャンス寝れるはずありません」
二人とも眠くなったんじゃなかったのか?
「姫野は結月のどこが好きなんだ?」
課長は仲の良い姉妹がじゃれるように姫野にやさしい声で訊ねる。そこにはさっきまで争っていたような刺々しさはまったくない。
俺は狸寝入りしながら、ぴくんと聞き耳を立ててしまっていた。
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モラハラ彼女はさっさと捨てて、もうしあわせになるしかないですね。かわいい上司、同僚、同級生と……なんて憧れですねw
麟太郎好きすぎヒロインたちから溺愛される展開がお望みの読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。
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