第24話 ド変態

 蓮が黒いエナメルのようにテカテカした光沢の紙袋から、ブツを取り出していた。


 それは真っ赤なロープ!


 さすが上級国民!


 エロのレベルもぶっちぎりで上級。


           《まさかの緊縛プレイw》

           《予想裏切らないな》


 だが蓮はほぼすべてのリスナーの予想の斜め上を突っ走ってしまう。


 美玖が緊縛され、あられもない姿が見れると思って全裸待機していた彼らはさぞかし衝撃の光景を目の当たりにしたことだろう。


「美玖……そいつで俺を縛れ!!!」


 は?


「「えっ!?」」


 俺も課長も姫野も蓮の声を拾うと、数秒間思考が停止してしまっていた。


             《えっ!?》

             《ミクじゃなくて?》

             《まさかの蓮で草》

                ・

                ・

                ・

             《まさに自縛w》


 それは600万人に増えたリスナーたちも同じだった。


「これでいいの?」

「もっと強めに縛れ」


 ある意味では美玖を調教というよりエロの英才教育をしているような蓮の指示に従い、美玖はロープで蓮を縛り上げていく。


「くうっ、股間の締めつけがたまんねえ」


 縛られた蓮が思わず、漏らした言葉に反応するリスナー。


            《玉だけに?》

            《玉んねえw》

            《二子玉川》

            《世田谷区民に謝れw》


「ぶっはっ! もうダメ……して、許してっ! もう腹筋が崩壊してしまうっ」

「あはははっ、おっかし! ホントに変態っているんだぁ!」


 下ネタ全開なのに、なつみんとミランのアバターがお腹を抱えて大笑いしてしまっていた。


 俺たちとリスナーが連の痴態に笑い転げている間にも、美玖は蓮を縛り上げていく。


 後ろ腕に縛られた蓮だったが、胸元にはロープで編まれた美しい六角形が描かれ、股間は見事な二等辺三角形が現れている。足元は胡座をかいたまま膝をロープでがっちり固定されており、動くことは難しいそうだ。


          《何気にミクスゴくない?》

          《初縛り!》

          《SMクラブに就職?》

          《女王ミク陛下w》


 俺がいま自宅に戻り踏みこめば、蓮の人生は確実に終わるだろう。だがまだそれには早い!


 どちらにせよ、全世界に蓮が変態M男と知られてしまったのだから。


        《もっと蓮の性癖を晒してくれ》


 蓮の特殊性癖はそんなものではなかった。


 美玖に蓮は顎をくいっくいっと動かしており、どうやら蓮のバッグを示しているようらしい。


「バッグ?」

「バッグの中に道具が入っている。取ってそいつで撫でてくれ」


          《縛られてるくせに生意気》

          《立場分かってねえ!》


「蓮くん……まさか、これ?」

「そうだ、それで撫でてくれ」


 美玖が手に持っていたのは絵筆……。


「もうなにも言えないのだ……」

「プレイに絵筆とか初めて見た」

「気持ちいいなかなぁ?」


 未知の領域に俺たちはただただ呆れるばかりだった。


            《やっぱレンは変態王》

            《性に貪欲w》

            《バカだけどwww》


「あふっ! はあっ! あはん、くっくっ!」


 蓮は美玖に絵筆で肌を撫でられ、キモい声をあげていて……。


             《マジキモ!》

             《サイテー!》

             ¥50000

             《だがおもろいw》

             《親に見られたら》

             《人生終わるなw》


 動けないはずの蓮はなんとかもがいて、うつ伏せになり美玖に頼みごとをする。またあの紙袋を漁って、ブツを手にしていた美玖。


「美玖! そいつを俺の尻につけてくれ!」

「ホントに……いいの?」


 イヌっぽいしっぽの根元についたプラグを恐る恐る掴んで美玖は浣腸の要領で蓮の頼みごとを叶えていた。


         《WOW! HENTAI!》

         《ただのM男に留まらないw》

         《変態さが天元突破してて草》

         《そこに憧れない、痺れない》


 美玖に願いを叶えられた蓮は姿勢を起こされると

なぜかバキバキに興奮していた。美玖はゆっくりと蓮へと腰を下ろしてゆく。


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 満足し終えた二人をなつみん、ミランと見ていたのだが……、


「正直ボクにはプレイが高度すぎて、理解が追いつかないのだ」

「ミランもだよ……」

「なかなかスゴい世界があるものだな……」


 三人して珍獣の変わった交尾を見たような気がしてならなかった。蓮、美玖っ、おまえら、俺の初コラボなのになんて物見せるんだよ!!!


 ドン引きする俺たちに対して、リスナーの反応はまったく違っていた。


         ¥10000

         《いいぞ、もっとやれ!》

         ¥20000

         《レンとミクは最高だわw》

         ¥39393

         《レンはバカでいいですね》

         ¥15000

         《腹マジいてーーwww》

         ¥20000

         《明日思い出してしまうw》

         ¥500000

         《緊縛種付け料くそワロタ!》


 そしてこの日、蓮は伝説になった。


「みんな、見てくれてありがとうなのだ!」


 俺たちのコラボのスパチャはメイドさんがすぐさま計算してくれていたのだが、ぷるぷると震えていた。


「お、お、お、お嬢さまっ! 今晩のスーパーチャットは1億円を超えておりますっ!!!」

「さすがせんぱいです!!!」

「そうか、そうか、さすが結月は私が見込んだ男だな」


「いや俺はなにもしてないし、課長と姫野のおかげなんだよ」


 ブレない蓮と美玖の活躍ももちろんだけど。


「お嬢さま! やはり未来の旦那さまはとても謙虚なお方ですね」

「うん! 早くせんぱいと結婚したいなぁ~」


「おいおい、姫野……寝言は寝て言え。結月はすでに私と結ばれる運命にある。疲れてるなら、私がずっと眠りにつかせてやってもいいんだぞ」

「それはこっちのセリフです!」


 さっきまでの共闘はどのへやら、二人はガシッとプロレスのように手のひら同士を合わせて、取っ組み合いを始めていた。


 はわわとメイドさんは慌てるが、俺も慌てていた。なんせベビードールを着て取っ組み合いをしようものなら、危険が危ないのだ。


 ポロリしたらどうすんだ!!!


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こんなヤバい性癖が全世界に知られてしまうとか、蓮がその事実を把握したとき、どうなるんでしょうかねw いったいいくつ爆弾を抱えて走ってくれるんでしょうか。もっと蓮に爆弾を抱えさせてほしい読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。


 

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