第17話 ウマ娘

 ボイスチェンジャーで地声を変え、VTuberとしての初配信のごあいさつをした。


 ある程度、姫野のそばで収録とかライブの様子を見させてもらっていたので大体の手順はわかっているつもりではある。

 

「え、え、あー、みんな、ちゃんと見れてる? 初めまして、ずんだ……違った。抜根ネトラなのだ! ご存じの通り、職場の後輩に彼女を寝取られちゃった悲しい男の娘なのだ」


         《ネトラかわいい》

         《かわよ!》

         《VTuberデビューおめ》

         《かわいさレベチ》


「ありがとうなのだ!!! もっと誉めるのだ」


              《茶に反応したよ》


「いままで応えられられなくて、ごめんなのだ……」


              《かまわんよ》


「リスナーはやさしいのだ!」


              《うれしい》

              《マジかわよ!》


 うさ耳っぽい黄緑色の葉っぱと黄緑色の髪、あどけなさの残る顔つきはどう見てもオタク受けする美少女にしか見えない。


 衣装は付け襟に蝶ネクタイ、光沢のある黄緑色のバニースーツを着込んでおり、幼児体型なので貧乳である。


 さすが神絵師しぶみるい先生といった感じでFGOのアストロフォに勝るとも劣らないかわいさだった。


 TS化したわけではないのだが、みんなからかわいいと言われまくると変な気分になってしまう。


           《ネトラのママ、だれ?》

           《しぶみるいっぽいな》

           

 さっそく目の肥えたリスナーはネトラのママを特定しようとしてくる。


              《ねえよ》

              《絵師は素人だろ》

              《AI術師だな》


「ママはないしょ、AI術師の出力でもないのだ。だけど他に答えられることなら質問に答えたいのだ。なにかある?」


 やっぱり、しぶみるい先生は人気があるなぁ!


 チャットにあった素人との言葉……確かに普通は超売れっ子神絵師が俺みたいな素人で個人の相手なんてしてくれない。


 だがそこは神さま、姫野さまである。


 彼女はしぶみるい先生とオタク友だちで、しかも学校が同じでクラスがいっしょたったこともあり、“みのりちゃん“、“るいちゃん“と呼び合い、いつも互いの夢を語っていたらしい。


 姫野たちのJK時代にきゃっははうふふしていた風景を妄想している間にも、生配信はスゴいことになっていた。


 ネトラレの生配信というセンセーショナルなことに加え、しぶみるい先生の描いてくれたアバターによって同接が開始5分と経たない内に同接は……。



 100万人を超えてしまっていたのだ!!!



「みんな見にきてくれて、どうもなのだ。いまちょうど同接が100万のリスナーが見てくれていて、ネトラとってもうれしい!」


              ¥500

              《おめ!》

              ¥1000

              《ご祝儀!》

              ¥10000

              《栄養分》

              《ナイスパ!》

              《ナイスパ!!》

              《ナイスパ!!!》


 猛烈な勢いで下へ流れていくチャットに目が追いきれず、辛うじてスパチャの色の変化した枠を追うのが手いっぱいになってしまっていた。



「ネトラからのお願いなのだ。動画がおもしろかったら、チャンネル登録をして、いっぱいいいねを押してほしいのだ」


          《するする!》

          《もうしたよ》

          《いいね1000回押した》


「偶数はだめなのだ。奇数にするのだ」


            《偶数草》

            《押してないのと同じ》


 なんてお約束の話をしている間にも腰ザコ蓮と美玖は俺の部屋で乳繰りあっている。俺ことネトラは画面左下に位置に移動し、リスナーにしっかり浮気現場を見てもらうことにする。


「蓮くん、大丈夫?」

「大丈夫じゃねえよ! 美玖がよんだんだろ」

「そ、そうだけど……怒んないで」

「すまん……」


 別に興奮してるわけでもなさそうなのに前屈みで歩く蓮を美玖が蓮の腰をさすりながら、ベッドへと座らせていた。


 やっぱり蓮の腰の調子はリスナーから見ても明らかにおかしいらしく……。


          《そんな弱腰で大丈夫か?》

          《腰は大事だぞw》

          《ヘルニアン》

          《これぞまさしく弱腰交渉》

          《誰がうまいこと言えと?》

          《大草原!!!》

          《wwwwwwwwwww》


 俺のベッドの上でいつも通り、ちゅぱちゅぱと音を立てながら、キスし始めた二人。


       《いいねいいね》

       《アイドリングのストローク開始》

       《↑はえーな、おいw》


 キスしている時間が少々長かったので、リスナーにさっき言った質問タイムにすると伝えたら、リスナーたちはすぐにネトラに訊ねてきた。


            ¥500

            《二人はAV関係者?》


 ひとりのリスナーが反応。


 レスポンス超速だな。


「ちがうのだ。素人なのだ」


           ¥1000

           《マジで寝取られたの?》


「本当なのだ。だからボクの部屋を勝手に使ってるから、復讐がてら晒してやってるのだ」


         ¥2000

         《NTRされて悲しくない?》


「悲しくないかといえば、少し前は悲しかったのだ。だけどここのリスナーがいっぱい見て励ましてくれるのだ」


              ¥200

              《がんばれ!》

              ¥1000

              《応援!!!》

              ¥5000

              《負けるな!》

              ¥200

              《続けてくれ~》


「ありがとうなのだ。ネトラ、いっぱいクズ後輩に阿婆擦あばずれ彼女を寝取られるのだ」


 画面では、美玖と蓮がいちゃいちゃから、どんどん行為をエスカレートさせていた。


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 明らかに蓮の動きに不満そうな美玖。


             《うわっ童貞ぽっ!》

             《あっやしいw》

             《やめれw》

             《ぶはっwww》


 まさか120万人の衆人環視の下、蓮の怪しすぎる腰使いが披露されようとも二人は思ってもいなかっただろう。


 だがもう遅い!!!


 俺は蓮に寝取られ、心まで蓮に委ねた美玖に一切の手を抜くことなく晒しあげること誓ったのだ。せいぜい周囲にバレるまでスリリングな浮気を楽しむがいい。

 

              《ギックリ腰か?》

              ¥100

              《種付け料》

              ¥100

              《種付け料》


 恒例の種付け料スパチャをたくさんのリスナーからいただけたのだが、どうも蓮の動きは評判がよくなくて、いつもより金額が低い。


 確かにあれじゃ、興奮もへったくれもないよな。


「チクショーーーーッ!!! 腰が痛くてできねえよ!!!」



 パァァーーーーーーーーーーーン!!!



 えっ!?


             《えっ!?》

             《なに?》

             《ケンカ?》

             《別れんの?》

             《叩いた!!》

             《親にも》

             《打たれたこと》

             《ないのに!》

             《↑アムロやめいw》


 蓮の弱音に美玖は奴の頬を思いきっり引っ叩いており、リスナーたちは突然の美玖の行動に戸惑いを隠せない。


 あんな子じゃなかったのに、どうして?


「ネトラも驚いてるのだ。ボクの彼女は浮気してるけど、暴力は振るわない」


          《思いきっり叩いてるしw》


 美玖は蓮の肩を強く掴んだかと思ったら、奴を押し倒してしまっていた。


「蓮くんは動かなくていいから」

「えっ!? 美玖……なにを?」


 蓮にまたがった美玖。そのままの体勢で始めてしまっていた。


         《その手があったか!》

         《どんだけヤりたいんだよw》

         ¥1000 

         《えっつw》

         ¥1000

         《ライドオン!》


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 蓮の上でサキュバス化した美玖にリスナーのみんなは大はしゃぎしていた。


「はわわ……美玖がウマ娘になってしまったのだ」


          ¥1000

          《ウマい!》

          ¥1000

          《まさかのウマ娘》

          ¥5000

          《ウマ娘言うなw》

          ¥10000

          《調教師が調教されとるw》


「ネトラレスキーさんありがとうなのだ、エロパンダさんありがとうなのだ、ほっかむりさんありがとうなのだ……――――あざす、あざす、あざすなのだ。みんなまとめて、ありがとうなのだー!」


 もはや大喜利のネタになった蓮と美玖、淫乱ウマ娘と化した美玖に高額のスパチャが飛び交い、名前を読み上げながらのお礼が追いつかない!



 この日……ネトラの登録者数は一気に膨れ上がって50万人を突破してしまい、さっそくコメント欄には切り抜き動画を出したいという依頼が殺到していた。


 は?


 再生回数を見た俺は目が点になっていた。


 同接が150万と狂った数値を叩き出しており、再生回数はすでに300万回となっていたからだ。


 格闘家の朝比奈ピクル主催のクラッシュアンドダウンのオーディションでも1日でそこまで行かないっていうのにどいうことなんだよ!



 興奮冷めやらぬまま、ライブを終えた俺……。


 電車の中でスマホを見ながら、ライブの成果を確認しているとわなわなと手が震えてくる。


 再生回数だけでも30万円……スパチャはもっとヤバかった。


 なっ!? 


 1,132,156円だと!?


 一晩でスパチャが100万円を超えてしまった……。


 帰宅するとウマ娘はロデオに疲れたようですでに泥のように眠ってしまっている。俺は眠る美玖にそっと心の中でつぶやくいた。


 ああ美玖……本当に残念でならないよ。


 キミさえ俺を裏切んなきゃ、しがないリーマンの給与じゃ儲けられない額を分かち合ったっていうのに。



――――翌日。


 俺が仕事から帰ると美玖がきょとんとした顔をしている。


「私って、ウマ娘の誰かに似てるのかな?」

「ウ……ウマ娘がどうかしたの?」


 きっとライブの影響に違いないと思った俺は必死で笑いをこらえ、美玖の話に耳を傾けた。


「んとね、なんかお買い物にいったら、若い子が私を見て、ひそひそ噂してたの。やだなぁって」

「そうか、それは美玖がかわいかったからだよ。周りから美玖が見られてて嫉妬しそうだな」


 俺は心にもない言葉をかけると美玖は「ヤダー」と照れながら、うれしそうにしていた。


 くっくっくっ、いいぞ!


 美玖……もうしばらくすれば、キミは外をまともに歩けなくなるだろう。せいぜい、いまの内に蓮に騎乗させてもらうこった。


―――――――――――――――――――――――

ウマ娘も窮地だけど、作者もピンクなのだ! 違う、ピンチなのだ!!!

肝心のえちちシーンに検閲が入ってしまって、申し訳ありません。またしかるべき所にて差分を公開できるよう頑張ります。それでもよろしければ、フォロー、ご評価お願いいたします。

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