第8話 不審者
俺はカウンターの下でスマホをチェックしていると疲れた美玖と蓮の姿があった。
¥1000
《あざす!》
¥1000
《nice NTR》
¥1000
《マジもんパネェ!》
¥2000
《種付け料》
俺に……いやリスナーたちにガン見されてるとも知らずに二人を見てたら、浮気されてた怒りより、もう笑いが止まらなくなりそうになってきている。
スマホのチェックをしていると頭を掴まれ、俺は無理やり課長と目を合わせられていた。
「いまは私の彼氏だろう?」
んんん!?
課長はさっきチャラ男から守るためについたうそをいまごろ持ち出してきて、長いまつ毛に宝石のように輝き潤んだ瞳で俺を真剣に見つめてきていた。
――――トクン、トクントクントクントクンッ。
それだけで胸の鼓動が高鳴ってしまってしょうがない。
「すまん、ちょっと結月を困らせてみたかった」
「あれはその……仕方なくついたことでして……」
俺が言い訳がましいことを言っていると、
「鈍感な結月にムカついたから、撃ってくる!」
課長は俺の顔から手を離すとふらふらといかないまでもいつもより緩慢な足どりでバーの端にあるシューティングレンジへ向かっていた。
「おっ、
ガラスケースに入ったレンタルエアガンを見て、レイヤー魂が騒いだのか、リコリコに登場した銃のレプリカを見て目を輝かせている。
怒っていたのかと心配する俺を課長は手招きして呼び寄せていた。
「でたばっかりなんですよ、お使いになられます?」
「ああ、頼む!」
課長はレンタル料を払おうと財布をバッグから取り出そうとしたが、受付のお姉さんに止めらている。「先ほどの件もありましたのでお二人は無料で良いとマスターから仰せつかっております」と言っているようだった。
この“山猫“のシューティングレンジのエアガンの貸出カウンターはアメリカのポリスオフィスの銃器保管庫を模しており、なかなか心憎い演出をしてくれている。
俺が課長の隣に並ぶとお姉さんはストライクへッドが特徴的な拳銃からマガジンを外して、金網の隙間から俺に手渡し言ってきた。
「では頼もしくて格好よい彼氏さんに装填してもらいましょうか?」
「「か、彼氏ぃぃぃ!?」」
俺と課長が互いに顔を見合わすとお姉さんはにっこり笑って答えた。
「ええ、お二人ともとってもお似合いのカップルですよ」
俺なんかが課長の彼氏だなんて……。
内心、俺はうれしかったが課長は迷惑だろうと思っていた。
しかし……。
「そ、そ、そ、やっぱりそう見えるのか!? いやそんな私みたいな年増と結月が恋人同士に見えるなんて……いっぱいおごってやりたいところだが、仕事中だよな……ほ、ほらチップだ、チップ」
顔を赤くしながら、てんぱった様子で受付のお姉さんに3万円というレンジ貸切料金以上のお金を渡そうとして困らせてしまっていた。
俺はBBローダーからマガジンに弾を給弾、ガスを注入して課長に渡した。その間にも課長は
「結月はホント気が利くよなぁ~。ライバルが多いのも当然だ」
ライバル?
ああ、蓮のことか……。いまやライバルどころか俺の彼女を寝取った仇ともいえるが。
パンッ! パンッ! パンッ!
トリガーを引くとスライドが後退し、弾が発射される。課長は姿勢は綺麗なのに酔っているのか、ターゲットの中心になかなか当たらず撃ちあぐねている様子だった。
「結月……すまない、撃ち方を教えてもらってもいいか?」
「かまいませんけど、課長もそれなりにご存じでは?」
「基本はいくら習ってもその
課長は頬と目元が緩んで、よだれがこぼれ落ちそうになったのを慌ててすする。
「では失礼させてもらいます」
「いいぞ、いつでもこい」
課長のご要望に応え、射撃姿勢をとる課長の後ろから彼女の拳銃を持つ手に、俺の手を添えていた。
スタンスや姿勢は違うがちょうどゴルフのスイングで若い女の子にいやらしいおっさんがフォームを教えているような位置どりになってしまう。
俺はキモがられないためにあまり肌というか服が課長と接触しないように努めたのだが……。
「なにをしている。もっとぴったり重ねないと照準がズレてしまう。それに腰が引けていると余計に卑猥だぞ」
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規制解除及び【R18】シーンの閲覧には
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すると課長は甘い吐息が漏らして、軽く背を反らしてしまっていた。
「す、すみませんっ」
「いやなんでもない、結月の人肌が温かっただけだ。このまま続けてくれ」
パンッ! パンッ! パンッ!
「見ろ! 結月のおかげでセンターサークルに3つも入ったぞ」
「課長がうまいからですよ」
「いいや、結月の教え方がうまいんだ」
俺の手を取りぶんぶんと振りながら、子どものようにはしゃいでよろこぶ課長はとにかくかわいかった。
途中、邪魔が入ったもののマスターの粋な計らいで二人で飲んで、撃って楽しんだ俺たちだったが、課長はストレスと普段の疲れもあり、俺の背中でスースーと寝息を立てて眠っている。
俺は課長を送り届けたあと危うくアバンチュールになりかけた。課長が俺のものをニャンニャンよろしくチュールしようとしてきてたから……。
とにかく彼女を説得して、帰宅の途についたのだが興奮状態で火照った身体を冷ますように風に当たったのだが、酔いが醒めても胸の高ぶりはまったく冷めることがない。
スマホを紛失防止タグ及びカメラを見る限り、蓮はまだ俺の部屋にいるらしい。
俺が家にもう5分もすれば到着するとも知らずに二人で俺のベッドに全裸のまま入ってピロートークの真っ最中だ。
いつも美玖に帰るときはLINEしてるから、安心しきっているのだろう。
俺はインターホンを鳴らす。
気分は“3分間待ってやる“の大佐そのものだ。
マンションの床は慌てるとドタドタと響く。スマホから部屋の様子を窺うと、美玖と蓮は俺の急襲に驚いて全裸のまま飛び起きていた。
二人が話してる様子から、蓮はどうやらベランダへ隠れるようだ。
「お……おかえり麟太郎、ず、ずいぶんと早かったのね……」
美玖は慌てたのか全裸の上にシャツだけ羽織り、インターホンの応対に出た。声が
「美玖ぅぅーーーっ、ごめーん、鍵をなくしちゃった……開けてもらえるかな?」
もちろん鍵なんて紛失してないが。
ガチャリとゆっくりとドアを開けた美玖は表情をこわばらせ、恐る恐る俺に言った。
「ふ、不審者がいるの!」
なるほどそういう言い逃れ方もあるのかと、俺は感心していた。もちろん玄関のたたきには蓮の靴はない。
蓮の入れ知恵か、美玖の
俺は蓮という分かりきった不審者を追いつめるため、護身用のアイテムを手に取りバッテリーをつないだりして準備を整えた。
「ねえ……麟太郎……私怖いよぉ」
「大丈夫だよ、俺がついてるから」
俺の後ろにわざとらしく怖がって隠れる美玖。
三文芝居につき合うとか、俺もヴィランだななんて思いながら、暗がりで完全に見えるわけではないがベランダへのガラス扉を開け、壁伝いに見回すと溜まった雨水を流すパイプを掴んでマンション3階から全裸で降りようとする
蓮の衣服などの持ち物はすでに美玖が投げたのか1階の芝生へと落ちている。
俺は
食らえ、蓮!
俺の美玖を寝取った怒りの弾丸だ!
ブババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ!!!
見ろぉぉ、蓮がゴミのようだぁぁぁ!!!
いやゴミだな、ゴミそのもの。
金を産むゴミ。
全裸の
これ以上撃つと誤射の恐れがあるので追撃は止めたのだが、俺は明日どんな顔して蓮の奴が出勤してくるのか、楽しみで仕方ない。
ゴミを追い払うと、もう一人の
蓮にささやかながら仕返しできたことにほくそ笑んでいると、美玖は俺から視線を反らしながら、「あ、ありがとう……」となんとも罰が悪そうにお礼を告げていた。
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酔った課長のえちえち攻勢は後日にでも。間違いなく、課長はリコリコのコスをするでしょうw 百合(?)の間のおっぱいに挟まる展開をご希望な読者さまはフォロー、ご評価いただけますと作者の筆が進みますので、よろしくです。
※当たり前ですが、サバゲ場など双方の同意と安全配慮、適切な場所で以外でエアガンをぶっ放してはいけませんよ! 創作範疇だとご理解ください。
※※雑修正でごめんなさい。事情はお察しくださいということで……。
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