第6話 片想い

 俺は課長に誘われ、シューティングバー“山猫“を訪れていた。ちなみにシューティングバーっていうのはダーツバーのダーツがエアガンになったようなものだ。


「まずは仕事のお疲れの乾杯だ」

「そうですね!」



 ――――チーン♪



 とりあえず生! ということでバーゆえにジョッキじゃなくグラスに入った生ビールを二人で頼み、グラス同士を合わせると高く心地よい音が俺たちを包んでくれた。


 ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ!


 課長は仕事のストレスを抱えているのか、グラスのビールを乾杯でつけた口のまま一気に開けてしまう。俺も美玖と蓮の浮気のこともあり、それに倣っていつもより速いペースで飲み干した。


「「生、もういっぱい!」」


 二人いっしょにバーテンダーにグラスを差し出すとお互いに笑ってしまった。


「こういうのって失礼かもしんないですけど、俺なんだか課長のこと戦友みたいに思えてきてなりません」

「奇遇だな、私もそうだよ! 私は結月を失いたくないんだ」


「俺もそうです。ずっと俺の上司でいてください」

「上司……かぁ……」


 さっきまでハイテンションだった課長のトーンがだだ下がり、カウンターテーブルにダーッと突っ伏してしまう。俺はなにかマズいことでも言ってしまったのかと慌てて、彼女を誉めることに徹した。


「やっぱり課長はすごいですよ。みんなをまとめ上げて、厳しいノルマも達成できてるんですから」


「私なんて大したことない。それもこれも結月のおかげだ。やっぱりツラいんだよ……みんなに言いたくもないこと……ううっ、言わないとうちの課が回らないから……」


 課長は酔いが回ってきたのか、感情が高ぶり誉めたはずがまぶたに滴が見えてしまう。


「私がみんなに強く言い過ぎてしまって、しまったと思ったときには、もうみんな私の言うことなど聞いてくれなかったのに結月がみんなを説得してくれたことがあっただろう? 私はあのとき、どれほど結月に感謝したことか……」


 課長は俺にすがるように肩と腕をつかんでいた。気丈で人前でまったく弱さなど見せない課長が涙目で俺を見ると特徴的な泣きぼくろと相まって、マジで色っぽかった。


「あのとき、まだ私たちの仲はただの上司、部下で結月に『頼んでもいないのに』と悪態をついてしまった……本当に申し訳ない。そして、ありがとう。結月がいなければいまの私はいないよ」


「気にしないでください。その分、よくしてもらってますから!」

「そういうところなんだよな……私が結月を好きになってしまったのは……」


 課長らしくなく口をもごもこさせて、よく聞き取れない。俺もペースが速かったために、あろうことか課長の手に俺の手を重ねてしまっていた。


「俺は課長が憎まれ役をやってくれてることよくわかってますから!」


 手を握ったのがイヤだったのか課長は顔をぷいと背けて、頬を膨らます。


「でも結月は私の気持ちなんて、まったく理解してくれなくて、また私は悲しくなってしまった。結月はどうして私を泣かせてばかりいるんだ……」

「えっ!?」


 それってどういう意味なんだ? 


 俺も初めて見る課長の拗ねた顔。普段キリッとした彼女が頬を膨らました姿がギャップと相まって、どちゃクソかわいい……かわいさと俺がまだ一度も聞いたことのない本音を漏らしたことで俺が戸惑ってしまっていた。


「実はな、みんなから問いつめられたとき、会社を辞めようって思ったんだ。だが残った。なんでかわかるか?」

「いやわかんないです……」


「結月が私のそばにいてくれたから、残ったんだ。ありがとう、結月。誰がなんと言おうと結月は最高だ。腹は立つが姫野も同じ……うちの課の者は加賀山以外みんな、そう思ってるよ」

「あはは、またご冗談を!」


「はっきり言って、私の身も、心も、すべてを結月にあげたいくらいだ……なんなら今日、私の家に泊まって……いやいや、それだと浮気に……」


 ヴー♪ ヴー♪ ヴー♪


「あ、課長すみません」


 俺が課長の話をお世辞だとばかり思い切り返していると、バイブにしてたスマホが唸っていたので課長がなにを言っていたのか聞き取れなかった。


 不粋なクライアント顧客か? なんて思い確認するとセンサーがなにかの入室を確認したらしかった。こっそり蓮のビジネスバッグに仕込んでおいた紛失防止タグは俺の家を示していた。


 間違いない!


 俺の睨んだ通り、美玖は蓮を俺の家に呼び寄せまた浮気という罪を重ねようとしてくれていた。


 実にいいねえ! クズっぷりが。


 もちろん、俺にすべて筒抜けになっているとも知らずに。


 俺は躊躇ちゅうちょすることなく、リモート設定にしていたカメラの電源をスマホを使い入れた。まさにIoTさまさまだ!


「課長、すみません。ちょっと席外します」

「あうう……」


 俺は物惜しそうな課長の表情に惹かれてしまったが、それよりも二人に対する復讐心からトイレへと向かう。


 個室にこもると俺はスマホのボリュームをあげた。


 ――――れぇぇーーん、ピー自主規制音よぉぉぉぉー!


 ――――美玖ぅぅ、オレが先輩のことなんか、なんも考えらんねえくれえ忘れさせてしてやるよぉ、はっはっはーっ!


 やっぱ蓮は馬鹿だ!


 おまえらは俺が全世界に恥ずかしい交尾を晒してるバカップルとして、みんなから忘れらんねえようにしてやるよぉ!!!


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絵師さま、DMMとかFANZAのエロ漫画の原作にネタ使ってくれませんかね?www コミカライズに備えて寝取られシーン、書いておこ。


冗談はこの辺にして本編は成り上がりとざまぁを中心に頑張りますので、フォロー、★をいただけますとありがたいです。

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