第50.1話 【閑話】父と母・異世界の魔法の薬を使う

「お父さん、シオンとサクラから異世界の魔法の薬が届いているわ」

「あっちは時代的には中世位だったよな、魔法と言ってもヤモリの心臓や蛇の目玉とかの訳の解らない薬草汁みたいなおまじない的な物だろう?」

「でもあの子が送ってきた物よ、現代日本の医療を知っているのに送ってきた物だから本当に魔法の薬かもしれないわ」

「でもなぁ今回は結構重傷だしなぁ、何だかわからない物は危なくて使えないぞ」


 頭と片腕を包帯でグルグル巻きにしているシオン父。

 腕の打撲骨折+頭を10針ほど縫う大怪我をしていた。


 シオン母も流石に傷口に使うつもりは無いが、子供達が親のことを心配して送ってきた物。

 彼女自身も異世界の物に興味があり、物は試しと自分で試す事にしたのだ。


 そして翌日の朝。


 シオン母は百均のスプレーボトルにSランクフルポーションを移し替える。

 ガラス瓶の中では無色透明だったが、外に出すと光を放つ不思議な液体に変化していた。


「あら綺麗、でも”空気に触れると光ってすぐに蒸発するので瓶を開けたらすぐに使う”、えー! すぐ使わないとなくなっちゃうの!?」


 リビングで騒いでいたシオン母に気が付きシオン父は寝室から出てくる。


「母さん、朝から何を騒いでいるんだ」


「シオンが送ってくれた魔法の薬を試してみようと思ったら、これ開けたらすぐに使わないと駄目みたいなのよ」


 シオン父はシオン母の手元を見ると光を放つスプレーボトルに目が行く。


「昨日の夜シオンの送ってきた魔法の薬か、なんか効果がありそうに光っているな」

「ちょうどお父さんも来たから、ちょっと私の手で試してみるわ」


 指先の目立たない所に軽くスプレーすると、スプレーされた範囲が光輝き長年の水仕事で荒れた手が綺麗な状態へ戻っていくのだが、スプレー範囲が狭くて効果がイマイチ体験出来なかったようだ。


「母さんさっき指が光ったが、だっ大丈夫なのか? 痛いとかしみると熱いとか無いのか?」

「なんか綺麗になってるみたいだけど範囲が少ないからわかりにくいわ、もっと大胆にプシューとやってみるわ」

「おい、やめとけ、それはなんかヤバイぞ」


 慎重なシオン父に対して、深く考えないシオン母。

 サクラの基本的に何も考えない性格は母からの遺伝なのだろう。


 シオン父が止めに入ろうとしたが、昨日の怪我で動作が遅い。

 その間に大胆にプシューとやってしまうシオン母。


 手が光り輝き、手の荒れた部分がどんどん治癒されていくと、傷や荒れ一つ無い綺麗な手となっていた。


「えっ? 一瞬よ一瞬、高級ハンドクリームなんか比べものにならないわ、凄く若返ったみたいに綺麗よ」


 その様子をジッと見ていたシオン父は一定の効果がある事を認め覚悟を決める。


「母さんが試したのなら、俺も試さないとだな」

「父さんの場合は傷が大きいから無理には奨めないわ」

「いや、せっかく母さんが体を張って試してくれた事だ、俺も使ってみる」


 シオン父は包帯を外し、傷口を露出させる。

 昨日の今日なので生々しく腫れているが、まずは外傷の少ない腕の骨折箇所から試す。


 スプレーすると外傷部分が光輝き、皮膚の外傷・痣・骨折部分がみるみると治癒されていく。


「おいおい本当に魔法かよ、全治6ヶ月って言われていた骨折が一瞬で治ったぞ」

 シオン父は自分の腕を叩いたりして完治している事を実感すると、ポーションの残量が僅かな事を見て、覚悟を決めたかのように続けてそのまま頭や顔の傷口にスプレーする。


 これも一瞬で完治してしまったのだった。


 そしてSランクフルポーションは時間の経過と共に全て蒸発して消えてしまう。


「魔法の薬と言うが凄い薬だな」

「お父さん、顔の傷とか無くなったけど、シワも無くなってちょっとだけ若返ってないかしら?」

「気のせいだろう?」


 Sランクフルポーションに若返り効果は無いが、そのお話はまた後日。

 今回無事にシオン父はSランクフルポーションを使い怪我を治す事ができたのだった。


 ・・・・


「ところで病院で、これをどう説明するんだ、今日も通院だぞ」

「誤魔化しましょう」


 ”どうやってだよ”


 と内心思うシオン父であった。

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