第51話 口が滑るシオン

 はじめに

 少し時系列がズレています、今エピソード中で母が忙しい理由は50.1話が原因です。

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 翌日の早朝、防犯カメラのアラームが鳴り響く。

 イリスは熟睡中だが、俺とサクラはアラームに気が付いて監視モニタを確認すると、数匹のガーゴイルが攻撃していて家のエクステリア部でガチャンガチャンと攻撃の跳ね返る音がしている。


「昨日の今日で面倒だなぁ」

「昨日、あんな事になったのにまだ来るんだね」

「プライドとかもあるかもしれないぞ、同族を殺された復讐とか」

「うーん、でも全滅だよ、何も考えずに数匹で来るかなぁ……」


 ラスターとウインクが外で時々吠えているが、全く動じる様子はなく地味な攻撃が続いていた。


「ラスター、全滅させないで逃げるようならそれを追って、ガーゴイルの拠点をみつけられるかな?」


『ウォン!』肯定の意味を返す。


 ラスターとウインクを放つとガーゴイル二匹を秒殺。

 一旦わざと距離を取り、二匹は激しく吠えるとその様子をみていたガーゴイルは空高く距離を取り森の方へ飛んで行ってしまった。

 それに続くようにラスターとウインクの追跡が開始されたのだ。


 その間に寝ているイリスを起こす。

「まだ眠いのじゃ、寝られる時は寝かせて欲しいのじゃ」

「もう何百年も寝てただろ普通に朝だから起きてくれ、ガーゴイルが昨日の今日でまた来ているんだけどさ」


 イリスは眠そうな目を擦りながら寝袋から起き上がる。


「妾の眠りを妨げるとは万死に値するのじゃ」


 呪われたピラミッド映画のミイラみたいな事を言っているが寝袋に潜り再び寝ようとするイリスをたたき起こすも、なかなか起きないので朝飯だと言うとすぐに起きた。


 母さんは父さんの件があるので今日は自分達で何とかしてって事だ。

 メッセージで父さんが無事なのは知っているけど、どうしたんだろう。


 朝から病院に行くのか?


 朝ご飯はパックご飯とレトルト食品のどんぶり屋(中華丼・親子丼・牛丼のどれか)で済ませる事にした。

 サクラはパンが良かったみたいだけど、この家にストックされている食料は長期保管が可能な物しか置いてない。


「なんじゃそのツブツブの白い穀物みたいな物は?」

「米だよ、日本人の主食だぞ」

「シオン達はニホンジンなのか?」

「あっ!」


 思った時には口が滑っていた。


 イリスとは短期間ですっかり馴染んでしまったので何気なく森の家まで連れてきてしまったことや、フリッグの家にネットや現代道具を使えるようにして、イリス達がすっかり慣れてしまった事で気が緩んでいた。


 リリアンさん達は成り行きでこの家に連れてきてしまったが、俺達が日本から来た事は言っていない。

 彼女達も俺達の事をドゥームグローブに住む”冒険者”として認識しているし、彼女の奨めで冒険者登録も行っている。


 俺達が異世界人であることは秘密にしていた事だ。


 イリスはこの世界の現状は知らなくても歴史は知っている、下手に誤魔化して信頼関係がなくなるよりは、このタイミングで打ち明けてしまった方が良いだろうと思った。


「実はさ、俺達この世界の人間じゃないんだよ」

「何を今更言っておる、シオンとサクラはこの世界の常識が飛んでおるし家にある道具類も常識をはずれておる、少なくともこの地域の人間では無い事くらい最初からわかっておった」


「えっ? そうなの?」


「妾はこの敷地を見て、この世界の常識から外れた加護を受けていると感じたのじゃ」


 この家がボロだからそんな事を言っていた訳じゃなかったのか。


「えっ、それで?」

「お主らとこの敷地はこの世界の物では無いとな」


「どの辺で確信したの?」


「母君との会話で確信したのじゃ この世界にも投影魔法があるでの遠方の魔法士と会話する事が可能じゃ、じゃからあの”てれび”と呼ばれる物もさほど驚く物でも無かったのじゃが、問題は母君とシオン達の会話じゃ」


「イリスも聞いててわかっている感じに見えたけど」


「妾はシオンとサクラの会話で父君が怪我をしたと理解しただけでの、母君の言っていた事はまるで理解できなかったのじゃ」


 イリスの話では俺とサクラ個人にも何かしらの加護が働いていて言葉が話せて理解できているのだと言う、細かく考えると混乱しそうだ。



「お兄ちゃん、イリス、パックご飯とおかずが温まったよ」

「よし朝飯なのじゃ、難しい話は後じゃ後、お主達とは言葉が普通に通じるでの」


 昨日の今日で母さんも忙しいと思うから、この件については後日考えるとしよう。

 ただイリスが俺達の事を異世界人と認識しても驚かず、全く態度を変えない事に疑問を感じた。



「米がうまいのじゃ、南にある国に似たような穀物があるがの、もっと黄色くてパサパサしておってもっと味もサッパリしておるのじゃ」


 へぇ、米っぽい物があるんだなインディカ米みたいなやつかな。

 インディカ米ならカレーとかうまそうだな。



 食後しばらくすると、家の門の外でウインクの『ウォン』と声が聞こえてくる。

「ウインク、無事にガーゴイルの奴等を見つける事ができたのか」

『ウォン!』頷き、肯定を意味する。


 今回からアイテムストレージが使えるので、火炎放射機+追加燃料タンク、金属バットとフル装備。

 サクラも今までノーマルマガジンを使っていたが、ロングマガジン装備となった。



 ラスターと合流してガーゴイル討伐だ。

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