第56.01話 この前盗賊の話をしたけどさ
今日は冒険者組合に来て冒険者として仕事する日と決めていた。
冒険者登録して冒険者になったものの全く冒険者活動はせず、冒険者の方々にはバウ狩りでお世話になったくらいだった。
セレナさんの説明によると、冒険者ランクはSランクA~Gランクあり、ランクにより受けられるクエストが決まる。
クエストランクも超難易度のSランク・一般冒険者向けのA~Gランクがある。
俺達パーティは俺とサクラとイリスの三人で下から二番目の全員Fランクだ。
ラスターとウインクは従魔なので冒険者ではない。
まるっきり初心者はGランクスタートだが、俺達は冒険者カードを紛失した事になっているので現在レベルを考慮されFランクスタートとなっている。
おそらくGランクFランクは大差ない名目上の物と予想される。
早朝冒険者組合に来るとメチャクチャ混んでいるとテッサさんに聞いていたので、少し時間を外してやって来たからピーク時間は過ぎてフロア内も空いていた。
現在、三人でクエストボードを閲覧中。
「Fランクで受けられるのはE~Gランクの依頼までか」
イリスとの異世界語勉強会で字が全く読めない訳では無くなって来たのでだいたいは内容が理解できるようになっている。
数字はすぐに理解でき、日本と同じ十進法だったので助かった。
二十進法や五進法だったら一波乱あったと思う。
事前にセレナさんから聞いていたクエスト受注のルールを考えながらどのクエストを受けようか相談。
「こっちに盗賊討伐のクエストがあるのじゃ」
この前盗賊の話をしたけど、いきなり盗賊討伐は無理だろう。
クエスト内容を見てもDランク以上となっている。
「いきなり盗賊討伐は無理じゃないか、もっと楽なやつからやろう」
「そうかお主達なら余裕だと思うのじゃが」
「俺達じゃランクが低くて受けられないし、対人戦はもうちょっと経ってからがいいよ」
「そうなのか、つまらないのぉ」
実際殺し合いの対人戦はやりたくない、武道大会みたいなのがあれば見たい気もするけど基本、人との戦いは避けたい。
イリスはヤル気なので意外に血の気が多いのか? と心配になるな。
さて、気分を切り替え全体的な依頼の種類を見ると。
Gランクは街の中仕事が多い。
街の清掃作業、捜し物や荷物運びのような一般の人でも出来るような仕事。
死の危険は無いがその分報酬も安い。
報酬高めの仕事はキツイ・汚い系。
冒険者っぽい仕事としては素材収集があり、薬草ならここで採取しなさいみたいにエリアが予め決められている。
新人ですよろしくお願いします。みたいな街の人に顔を覚えて貰うような仕事のように感じる。
FランクはGランクに比べて活動エリアが広くなる。
街の周辺や街道沿いで弱い魔獣の討伐の仕事が追加される。
街から離れるので命の危険が少しだけ上がるが、報酬はGランクより若干良い程度だ。
F・Gランクは基本的には同じ、Gランクでも腕に覚えがあればFランクも受けられるので実力に応じて選択すれば良い。
Eランクになるとドゥームグローブではない森に入って魔獣討伐、街道を移動する商人や旅人に同行して護衛する仕事が出てくる。
Eランクって盗賊系の討伐の依頼は受けられないから護衛していて盗賊に遭遇したらどうなるのかと思ったが、値段が安いのに人数が多めに設定されていた。
数でカバーする訳か。
Gランクの冒険者は見るからに新人って人が多いが、Eランクになると仕事慣れして来ているし、装備品もそれなりに使い込まれて来るので見た目で判断するのが難しいから数を揃えれば盗賊から襲われにくくなるのかなと。
新人の中にもしかしたら熟練Dランクも混ざっているかもよ? みたいな偽装。
十分に抑止力にはなるのかなと思うが、本当に遭遇したら実力が足りていないので逆に殺される危険もある危険なEランク向けクエストだと思うから、俺はそんなのは受けない。
クエストボードを見ながら悩んでいるとサクラから声がかかる。
「お兄ちゃん、私たちはこの街周辺の事を良く知らないから薬草採取をしながら周辺を見てみようよ」
と提案があり、イリスに内容を見て貰って薬草採取系のクエスト用紙を掲示板から剥がす。
セレナさんのところに行ってクエスト用紙を提示するとセレナさんから最初の説明があった。
クエストの内容説明と失敗したときの違約金とかの話。
薬草がある地域の地図に薬草のイメージ図と特徴の書かれた紙を見せてもらえたので、一応スマホで撮影しておく。
「シオン様、それは何なのでしょう?」
セレナさんは俺がスマホでやっている行為を不思議そうに見ている。
「イリスの魔道具だよ」
「魔道具ですか、初めて見る道具です、何をされているのでしょうか」
「魔力を使って記憶するって言うのかな、結構詳細まで覚えられるようになるんだよ」
「魔法使いの方は便利な物をお持ちなのですね」
悪意はないがいきなりイリスの魔道具扱いにして適当に誤魔化す。
下手に突っ込まれないように画面は見せないし、細かく何をしているのかも説明しない。
そんな事もあったが、現在街の外で薬草採取中だ。
ラスターとウインクには周囲の警戒をお願いしているけど少し離れた場所に移動し二匹で遊んでいるような感じ。
街の近くなのでそんなに危険も無いと思う。
目の前にある野原を見ても「薬草ってどれだよ!」と、まぁ当たり前のように解らない。
スマホで撮影した薬草の絵を参考に探していく。
俺とサクラで探しているがイリスは参加しない。
「妾がやってしまっては意味がないじゃろ」
って事でイリスはすぐに見つけられるそうだ。
探す事30分、草花に詳しいサクラが最初に発見する。
家の花も母さんと一緒に世話していたので、俺よりは詳しい。
「イリスこれでいいのかな?」
「大丈夫じゃ、見た目似ている草があるのじゃが、そっちは毒じゃ特徴をよく覚えて気を付けるのじゃぞ」
「わかったぁ、ありがとイリス」
ニラとスイセンか? って感じ。
サクラが俺の手元に薬草を持ってくると、俺はスマホでその薬草を撮影する。
採取効率アップのための現代技術を投入だ。
スマホの画像解析アプリでそれっぽい草を撮影しながら良否の判定を開始。
「スマホはそんな事も出来るのかの」
「大体わかるって感じだよ、確実に見つけられる物じゃないよ」
このアプリは父さんの知り合いで農業大学の先生をしている人が作った雑草害虫判別AIアプリ。
将来的にはドローンやロボットアームと連携させて勝手に畑の雑草を抜いたり、害虫を除去したりして無農薬野菜が作れるようにする現在研究中のAIアプリだ。
農業用ルンバみたいな。
使い始めると俺が思っていたよりもアプリが高性能で野原にカメラを向けると、画面上に草がマークされ、さっき撮影した写真画像との一致度がパーセント表示されているので数値の高い所に行ってそれが薬草なのかを確認し採取作業をしている。
イリスは俺達が摘み取った薬草をキャリーカートの上で選別しまとめて縛る係だ。
スマホのおかげで薬草採取もスムーズに進みキャリーカート一杯になった頃。
俺達に対し男が怒るような感じで叫んでいたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます