第54話 カレーを売ろう

 はじめに

 作者は料理の事をあまり知りません、ネットで調べた情報を元に書いている部分がありますので、変な場所は”この作者は知らないな”と適当に流して下さい

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 カレーデビューから数日、週一と決めていたカレーの日だけど、イリスの強い要望でカレーが続いていた。

 さすがに三食カレーでは嫌なので夕飯限定でテッサさんのアレンジが加えられてこっちの世界風の味付けに少しずつ変化も始めている。


 そんな中、ある日の事テッサさんから提案があった。


「シオン様、あのカレーを売ってみたいのですが宜しいでしょうか?」

 バーモンドカレーなら大量に在庫があるので売るのは構わないけど、テッサさんの仕事が増えて大変なのではないかと心配もある。


「売るって、商売になると仕込みとか作る量が沢山になるから大変じゃないのか?」


「実はシオン様達が外に出られている時やドゥームグローブのご実家に帰られているときは特にやることもないのです」


 テッサさんはプロのメイドなのでもうちょっと働いていた方が良いのだと言う。


 ナンとロティを使ったカレーだったけどここ数日続いていた事もあり、どうせ商売で売るならメニューを増やして欲しいと思い、俺のお願いみたいなのを提案してみた。


「ナンやロティで今回食べたけど、カレーは麵にからめて食べる事もあるよ」

「なんと麺類にも合うのですか! それは試してみたいですね」


 こうしてテッサさんのカレー商品開発がスタートする。

 再びカレーが続く事になるが、イリスは大喜びで三食全てカレーを食べ続けていた。

 俺達兄妹はさすがに飽きたので別の料理を頼んだけど。


 試作商品用のナンとロティを作ったが、イリスの意見でナンの方が冷えてもモチモチ感が残る事と料理としてバリエーションが増やせそうだと提案があり、俺とサクラもそれに同意するとナンが採用される。

 

 麺に関しては、うどんとパスタ系を選択。

 サンプルとして持ち込んだスーパーのゆでうどんをテッサさんに見せると、白く太い麺が珍しいのかテッサさんはうどんを観察中だ。


「これがカレーに良く合う、うどんと言われる麺ですか」

「本格的に作ろうとすると単純な分だけ難しいらしいけど、ある程度の物なら安く簡単に作れるみたいだよ」


 テッサさんはゆでうどんを千切って試食してみるも、この世界にある標準的なパスタとは違う味なので少し戸惑っている感じ。


「カレーもナン用の物をうどん用にそのまま使うとカレーのとろみが強いし、味が濃いからだし汁を使って薄くするんだ」


「水で薄めるだけでは駄目なんですね」

「それでも美味しいと思うけどね、それだと薄めただけのカレーになるからナン用との違いみたいなのがあった方が売れると思うよ」


「そうですか、少し味付けに工夫をしてみたいと思います」


 和風だしで味付けするとソバ屋風になるが、この辺はテッサさんの腕の見せ所だ。


 テッサさんはタブレットの動画を見ながらうどん打を始める。

 塩水と小麦粉だけ、小麦粉の種類は判らないけど、テッサさんチョイスの小麦粉が使われていてナンやロティが一発で成功したのは彼女の経験によるものだと思う。


「シオン様、この生地を足で踏むとありますが」

「足で踏む事で麺が硬くなって独特の食感が生まれるんだよ、テッサさんの腕の見せ所だよ」

「そうでございますが、では私が足踏みをしますがよろしいでしょうか」


 昔のワイン造りなんかは女性が素足で足踏みして作るとかあるらしいので、まぁ良いんじゃないかと。


 テッサさんの素足でも、うどんだと少し抵抗があるかな、ここにはシートもあるからシートの上からやってもらう。


 この世界の人が作るようになったら直足だと思うけど。

 美人のテッサさんが作る足踏みうどんなんて、ある意味マニアックかもしれない。


 妄想で脱線したがうどん生地はテッサさんの細く綺麗な素足でグニュグニュと踏まれて行き、これを回数別に何種類か作り試作評価用となる。


 試作品を作っている時は、テッサさんとイリスが試食を繰り返していたので、俺やサクラは直接試食には参加していない。


 最初の何回かは参加したが、とにかく量が多い。うどんを作る関係でどうしても一人前ではうどん打が出来ないので、試作品が大量に出来上がる感じとなった。


 それらを食べるのはほとんどイリスの仕事。


「イリスはあんなに食べているのに全然太ったりしないのかな?」

「あいつは試作用のカレーうどんも評価で食べているし、残ったうどんで連日大盛りカレーうどんだからな、太るとかの前に飽きないのか不思議だよ」


 今のイリスの格好はサクラの私服姿にエプロン、本人も何気に気に入っているのか最初は短くて恥ずかしいとか言っていたけど、慣れればそんなもの。


 短めのTシャツで結構ボディラインが出ている服装なのだけど、あれだけ食っていて全く体型に変化がない。


 サクラはイリスがあれだけ食べて全く体型が変わらない事をうらやましくも思っているみたいだけど、あいつは死んでいた約二~三百年分の栄養を一気に補充しているのかもしれないと、それで納得。


 ・・・・


 こんな日が続き、テッサさんの完成品試食会が開かれた。


「今回、カレーうどんとカレーパスタを作ってみましたが、うどんと呼ばれる麺の方が安く作れてカレーと良く合う感じがします」


 小さなお椀にカレーうどんとカレーパスタが入っている。

 パスタの方はスープパスタみたいな感じになっており、俺の想像した物とは異なっていて太めのパスタが使われている。

 うどんは、カレーうどんとして作られた物ではなくてナンカレーの派生バージョンとしてうどん汁なので具が大きめだ。


「それでは試食お願いします」


 テッサさんの声がかかると試食を始め、最初にテッサさんから言われたようにパスタとカレーの組み合わせは何となく抵抗があった。

 とてもおいしいのだけど、パスタに合わせる都合上カレースープがかなり改変されていて、別物のようにも思えたからだ。


「俺もこの二品ならうどんかなぁ、サクラはどうだ?」

「このパスタスープは凄い手間がかかってないかな? もう別物だよねこれ」


「妾もパスタスープの作り方を見ていたのじゃがテッサが妥協しないのでの、これはこれでうまいのじゃが、ナンカレーをベースに少しの手間で作り替えが出来るならうカレーうどんの方が良いと思のじゃ」


 テッサさんの予定では俺とサクラがパスタに高評価をすればカレーパスタスープ版の採用も考えていたみたい。


「テッサさんイリスも言っていたけど、このカレーパスタスープもおいしい、でも露店で売り出すには手間をかけずに大量に安く売れる方が良いと思うんだよ、だから今回はアレンジの簡単なカレーうどんでやってみないかな?」


 イリスも同意見でイリスは大量に売るのであればうどんの方が良いと評価した。

 うどんの場合は茹でたあとに、冷水に通す事で数時間は再度湯に通せば食べる事が出来る。

 パスタは硬くなってしまうのでゆでたてを提供しなければならないので手早く客に提供するならうどんが有利とか言っていた。


 意外にイリスも真面目に商品開発をしていたようだ。


「では今回の麺はうどんを採用したいと思います」



 こうしてテッサさんの露店メニューは ナンカレー・カレーうどんの二種類で始める事が決定する。


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