ツノオオカミとの出会い
第10話 ツノオオカミをなんとかするか
森の奥にいたツノオオカミは全く動かなくなっていて、動けない何かの理由がある可能性がある。
監視カメラの拡大画像だけなので詳細は不明だ。
サクラと相談した結果、魔獣と言えど子持ちを殺すのは何となく心が痛むと言う事で、ツノオオカミを治療してみて、それでも襲ってくるようなら討伐する案に切り替えた。
幸いな事にこのツノオオカミがいると他の魔獣が近づいてこない。
金の腰巻きが来なくなったのは誤算だが、無事に子供が生まれたら森に帰ってもらうつもりだ。
とりあえず上位ゴブリンからのドロップ品で小瓶に入った液体の効果を試してみる事にした。
これはサクラがたぶんポーションと呼ばれる薬なのではないかと言い出したからだ。
ゲーム言う所の回復薬?。
緑色と紫色の二色があり流石に飲むのは怖いので何で試すのかは、庭にある病気や枯れかけた草花で試す事にした。
植物に効果があるのか不明だけど、これで駄目なら駄目元でツノオオカミに投入してやればよい。
2種類試すために病気の草花を探し、それぞれに謎の液体を振りかける。
緑色の方をかけるとみるみるうちに病気部分が治癒していき、虫に食われた欠損部分まで修復されたのだ!
紫色の方は振りかけても最初は変化が無く、やがて白かった花の色が紫色に染まり始めそれ以上の変化は起こらなかった。
ただ、花自体から何かを感じるようになってしまい、これは確実に回復薬では無いと結論付ける。
緑色の液体をどうやってツノオオカミに使うのか考える。
飲ませるとしても口元に持っていったら頭からガブリではシャレにならない。
「数がいっぱいあるからとりあえずさっきの植物のように振りかけてみては?」とサクラが言っていたのでアマゾンで水鉄砲を購入し、ガブリとやられない距離から緑色の液体を吹きかけると、みるみるうちにツノオオカミの傷口が塞がっていくじゃないか!
飲まなくても良い、振りかけるだけで効果がある事が証明され、この緑色の液体は治癒ポーションと名前を付けた。
しかし治癒ポーションで傷口が治癒しても基本的な体力までは回復しないようだ。
ツノオオカミの傷は治ったが暴れて逃げるまでの体力が無く、家の前でぐったりとしている。
「お兄ちゃん、このままじゃ可哀想だからなんとかして!」
と無茶を言う妹の要望に応えるべく、アマゾンで大きいテントを購入。
良くイベント会場や災害現場にあるような、四方が幌で囲まれた大きな物だ。
お急ぎ便で取り寄せると半日もせずに到着し、ツノオオカミの横にテントを設営。
もちろん襲われた時用にツノオオカミにはサクラに銃口を向けて貰っている状態だ。
弱っているとは言え、さすがに野生の魔獣の側で作業するのは肝が冷えた。
テント内に干し草を敷き詰め、犬の餌を置き、棒で突っついて罠を解除。
後はツノオオカミがテントに移動するかどうか。
丸一日は全く動かなかったが、覚悟を決めたかのようにツノオオカミはテントの中に入っていく。テント内の様子を確認出来る監視カメラの映像を見ると、置いてある餌を食べ、水も飲んでいた。
治癒ポーションの効果で体が修復され、食べ物を口にできるようになった訳だがかなり弱っている状態には変わりない。
翌日からはテントの前に餌と水を置いておく。
昼間は姿を見せないが、夜になると活動をはじめ、餌と水が無くなっている。
こんなことが数日続き、ある日を境に水も餌もそのままの状態になってしまった。
監視カメラの映像を見ていたサクラが大声で叫んだ。
「お兄ちゃん!大変だよ!生まれたみたいだよ!」
カメラ映像を見ると2匹の子オオカミの様子が確認出来るのだが、母ツノオオカミの様子がおかしい。
全く動いていない。
俺はテントの中の様子を恐る恐る確認すると、あれだけ警戒の強かったツノオオカミが全く動かなくなっていた。
棒で突っついて見たが動かない。
そう、母ツノオオカミは出産が終ったところで絶命してしまったのだった。
「死んでいる」
俺はそう呟くと、母ツノオオカミの側で鳴いている生まれたばかりの子供ツノオオカミを抱き上げ、家の敷地に入れてやった。
まだ目も開いていない小さなツノオオカミは元気にミャーミャーと鳴いている。
そのまま敷地外に居たら、この子ツノオオカミ達は魔獣の餌になってしまうと思い、何も考えずに敷地内に魔獣を入れてしまったが、サクラもこの件に関しては同じ事をしたと思うと言い、2匹の世話をする事にしたのだ。
子供ツノオオカミの世話はサクラに任せるとアマゾンで購入した犬用ミルクを哺乳瓶に入れて子供ツノオオカミに与え始めた。
世話が一通り済んだ所で、俺には次の仕事がある。
サクラに警戒を頼み、森の中に入っていく。
もう一匹のツノオオカミがどうなっているのか確認するためだ。
彼の元に到着すると彼は既に息絶えた状態で森の中で横になっていた。
体には大きな傷口がありそれが致命傷になったのだろう。
何時亡くなったのかまでは分からないが、このまま放置するのも可哀想なので、スコップを使い周囲の泥をかけて埋めてやる。
母ツノオオカミの方は、父ツノオオカミの所までは運べないので、道沿いに大きな穴を掘り埋めてやった。体長の倍ほど掘らないと野生動物に掘り返される事があると聞いた事があるので大きめの穴を掘った。
そしてテントを片付けると1日が終ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます