第4話 片思い?

ガタン ガタン

行きの時より、少しゆっくりしたリズムで列車が揺れる。その揺れに合わせながら、僕と采和は体を揺らした。

「凪沙。初めての学校はどうだった?」

夕日に照らされた列車内で、采和は僕に優しく聞いた。

初めての場所に疲れたのか、急激な眠気に我慢しながら僕は答える。

「たくさんの驚きもあったけど、楽しかった。みんな個性的で、優しくて…居心地が良かったよ」

「そう…よかった」

采和は僕に笑顔を見せると、顔を伏せた。そして、バッグを握った手を、更に強く握った。

僕は必死に眠気と戦い、眠ろうとするのを堪える。だが、そんな努力も虚しく、意識が遠のいていき、辺りがぼんやりとしてきた。

「…ごめん、采和……ちょっと寝る…」

「分かった。駅についたら起こすよ。おやすみ」

「ありがとう」

僕はそのまま、眠りについた。


「…はぁー」

夕日に照らされる列車内を見て、俺はため息をついた。疲れているわけじゃないし、緊張しているわけでもないのに。

横には、少し口を開けながら寝ている凪沙がいる。バッグは膝の上においていて、落ちないようにしっかり支えている。

…今日の俺は、なんだかおかしかった。いつも友達と話してもなんとも思わないのに、なぜか凪沙と話すと胸が熱くなった。逆に凪沙が他の人と楽しそうに話していると、少しムスッとする。普段はこんなことないし、感じたこともない。そして、なぜか自然と視線が凪咲の方を向く。凪咲は俺と目が合うと、ニコリと笑う。その時、なぜかドキッと心臓が跳ねる。

………なんか、きいたことあるぞ。相手と目が合うとドキッとする、嫉妬をする、視線が相手の方にいく。これは相手のことが好き、という証拠だと。

…え?ってことは、俺…凪咲のことが、好き?

いやいやいやいや!まさか出会った初日で相手のことを好きになるなんて、そんなこと……!

「スゥー……スゥー………」

列車の揺れた振動で、凪沙の顔が俺の方を向く。その瞬間、また俺はドキッとしてしまった。

んー…だめだ!なぜか凪沙のことを今見ると、「かっこいい」ではなく「可愛い」と感じてしまう!なぜだ!なんでなんだー!

「………っ」

あああ体がムズムズする!落ち着かない!この心の衝動は何なんだ?誰か教えてくれ!

「おやおやおや?これはこれは、凪沙君と采和君じゃないか!まさか、同じ列車だったとはねぇ」

「るっ、類真!」

こいつは…同じクラスの桐ヶ谷類真きりがやるま!まさか、同じ列車だったとは…!!正直苦手なんだよこいつ。

「凪沙君は寝ているのかい?普段のイケメン顔とは違って、とても可愛らしい寝顔だね。君もそう思わないか?」

こいつはなんか変な感じがする。一言でいうと変人。いつも独特な話し方で会話をしている。

「思うけど…。…なぁ、類真。急に言うのも変だと思うんだけどさ」

「ん?なんだい?」

俺が凪沙のことが好きということ、こいつなら普通に受け止めてくれそう。一人だけでもいいから、恋愛相談相手はいたほうがいいからね。

「俺、もしかしたら凪沙のこと…好きかもしれない」

しばらく沈黙が続く。類真は少し驚いた顔をしたあと、にっこり笑った。

「奇遇だね、采和君。実は僕も、凪沙君のことが好きなんだ」

「………え?」

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