第2話 先輩、ちょっと供給過多です。
部活の時間
「とりあえず練習場所行ってこい。今日乗り切らねぇと話にならないからな。」
「おう。終わったら話でも聞いてくれよ?」
「あいよ。じゃーな。」
(とは言ったものの、これ乗り切るの無理ゲーじゃね?.......終わったな。)
湊に背中を押されて練習場所へと向かう悠真。扉の前まで来た時、どうにも開ける気になれなかった。あんな夢を見ておいてまともに話せる訳がない。実際、さっき話しかけられた時に声が裏返るほどの驚き様だった。今日は理由を付けて休もうかと思ったその時。
「おー悠真。どした?扉の前で尻込みして。」
「あ、朝日さん...」
目の前に居たのは、悠真が吹奏楽部に入るキッカケとなった男。羽柴朝日が立っていた。
「なんかあったのか?元気ないけど...」
「あ、いや...何でもないっす。」
「じゃあ行くぞー。」
朝日は扉を開けて中へと入っていく。今を逃せばもう入れないと感じた悠真も一緒に中へと入っていった。
「あ、悠真。大丈夫だった?」
「ええ、まあ....大丈夫です。」
「ん。しんどかったら言いなよ?」
「はい。ありがとうございます。」
(とりあえず話は出来た....これなら大丈夫....かな?)
ギリギリ会話できた自分を褒めて欲しい。と悠真は思いながら練習に入った。
————————————————————
練習中
「朝日さん......助けて下さい...」
「ん?今日どうしたんだよ悠真。扉の前で尻込みしてるし。今みたいに助けを目止めてくるし。何かあったのか?」
「あー....絶対言わないでくださいよ?」
朝日は悠真が1番信頼し、尊敬している2人の先輩の内1人だった。
ドラムを叩かせれば天下一品。ノリが良く、普段はふざけているが一度スイッチが入れば最後までやり遂げる。さらに、万人を惹きつけるカリスマ性。それを持ち合わせる朝日に憧れて、悠真は吹奏楽部に入った。
そんな朝日に隠し事は出来ず、幸いな事にの口が固かった為たまに相談に乗ってもらったりしていた。
そして悠真は、朝日に事の顛末を全て話した。
「なるほどなー。まあ気まずいだろうな。そんな夢見て同じ部屋とか、俺ならもう逃げてる。」
「ですよね!?どうやって耐えればいいんですかこれ!!」
「こればっかりは何も言えないな。お前のコミュ力にかかってる。」
「こんな状況ならそこらの陰キャとコミュ力変わんないっすよ....」
「どうにか自分で方法を見つけてみろ。まあキツかったらもう一回俺の所に来たらいい。」
「ありがとうございます...」
この時間が早く過ぎ去れ。と悠真は強く願っていた。
時間が経ち、もう少しで解散という時...
(とりあえずこのまま行けば乗り切れそうだな...)
「ねー悠真?」
「あ、板倉先輩...どうかしました?」
「聞こうと思って悩んでたんだけどさー....嫌なら答えないでもいいんだけどね?何で悲鳴あげたのかなーって.....すごいビックリしたんだよ?」
「すいませんでした....アレはですね....」
「どこか悪いの?そうならすぐ言ってね。心配だから。」
覗き込むように彼女は顔を近づける。
しかし悠真は、羞恥で顔を赤くしていなかった。
(改めて見ると、綺麗な瞳だな....それに、何だろう...このいい匂い。落ち着く....)
あんな夢を見た影響か。はたまた純粋なる本心か。悠真は彼女に見入っていたのだった。
「悠真?悠真?聞いてるの?大丈夫?」
「あ......大丈夫です。心配かけてすいません。」
「いーよ。可愛い後輩だしね。」
(んなっ...!って違う違う。そんな訳ないだろう!!何勘違いしてんだ俺は!)
「......何で悠真顔赤いの?」
「いや、何でもないです。」
「まさか、可愛い後輩って言われては嬉しかった?」
「あはは、辞めて下さい....って、もう解散の時間ですよ。早く下に行かないと。」
「え、本当だ。急げ急げー!」
「そんなに急ぐと転けますよー。」
————————————————————
解散後
「やっと部活終わったー....!」
「悠真、バイバイ。また明日ねー。」
「はい。また明日。」
悠真はやっと終わった部活に胸を撫で下ろした。それと同時に、今日を乗り切った達成感も感じていた。
「悠真、何とか終わったな。」
「あぁ湊.......やっと終わったー!!」
「お疲れさん。話、聞いてやるよ。」
「ありがと。あのさー、朝日さんに全部言っちゃった。」
悠真はさっき朝日に事の顛末を打ち明けた事を話した。
「まあ、事情を知ってる人が増えるのは良かったんじゃねーか?」
「そだな。後、これはマジで聞いて欲しいんだけど...」
「何かあったのか?」
「そうなんだよ。俺が部活始まる前に板倉先輩が話しかけてきて俺悲鳴あげてたの覚えてるか?」
「ああ。ありゃ面白かったな。」
「笑うなよ...んで、それの理由を聞きに来たんだけどさ。その時に....」
「.......その時に?」
「.....すげぇ顔近づけてきたんだよ。それで改めて見たら綺麗な瞳だ、とか、落ち着く良い匂いがするって思ったんだよ。」
「.....悠真、それをお前はどう思った?」
「どうって何だよ?」
「なんて言うか...可愛いとか、綺麗とか、或いは嫌だと思ったか。まあお前の反応を見るに前者だろうけどな。」
「まあそうだな...可愛いとまでは行かなかったけど綺麗だとは思った。」
悠真はさっき思った事を全て吐露した。
少し考えた後、湊が口を開く。
「これを言うのはまだ早計だな....まあ明日も頑張るんだぞ。」
「ああ。今日は付き合わせて悪かった。じゃ、また明日。」
「また明日。......あ、そう言えば。」
「どうした?」
「悠真。もう少しで3年も卒業だな。」
「そうだなー。俺達先輩達みたいになれるかな?」
「大丈夫だろ。俺達は先輩達じゃなくて、自分の道を目指せば良いんだからな。」
「........お前本当に高校生か?人生何周したんだよお前。」
湊の頭脳には毎度毎度驚かされるばかりである。同期でも誇れる存在だと悠真は思っていた。
「お前もそこまで変わらないだろ。何この世の理を悟ったみたいな顔してんだよ。」
「どんな顔だよwじゃーな。」
「ん。また明日なー。」
(内容濃すぎる1日だったな....)
悠真は湊と別れて帰路へついた。歩きながら、1日の出来事を振り返っていた。果たしてこの話に終わりは来るのか?その結論は誰も知らない。
To be continued
人物紹介
・高校2年
・身長172cm体重58kg
・誕生日1月18日
・好きな食べ物 色々
・嫌いな食べ物 ない
・趣味 友達と出歩く
補足
・バンド組んでる
・めっちゃドラム上手い
・実は繊細
その未来は、誰も知らなかった N @itsuki0729
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