第17話 意識合わせ

 さて、いきなり弟子が出来てしまったので、ダンジョンに入る前に意識合わせである。入り口横で屯する俺達に管理人が迷惑そうな顔をしているが、命に関わることなので気にせずやります。


「まずこの石像、角野さんの効果についておさらいだ。チームで戦う上で非常に重要なのでしっかり覚えておいてくれ」


「ウゥ!」

「はい!」


「角野さんを握って念じれば、ステータスの値をスワップ出来る。その効果は10秒。クールタイムは10分。つまり、一度の戦闘で一度きりだ」


「ウゥ……」

「なるほど……」


 グミとマリナが神妙な顔で頷く。


「基本的に俺がスワップするのは攻撃力とHPだ。スワップ中は攻撃力が大幅に上がり、HPは12になる。つまり紙装甲だ」


「ウゥアゥアゥ……」

「リスキーですね……」


「あぁ。コボルトの攻撃一発でも危ない。なので当面の目標はレベルアップとコンビネーションプレーの構築だ。ただ、ゆっくりしているつもりはない。一週間で五階のボスまで行くぞ!」


「ウゥ!」

「はい!」


「そして最後に。HPは視聴者の数次第だ。【死ぬ死ぬマンチャンネル】が見られれば見られるほど俺は強くなる。逆に視聴者がいなくなれば、死が待っている。それぞれ、どのような工夫をすれば同時接続数が増えるか、考えて欲しい」


 グミの今日の格好はミニスカCAとボクサーパンツだ。何故かボクサーパンツを気に入ってしまい、どんな衣装にも合わすようになった。一部のフェチには受けているらしいが……。


「師匠。お任せください! その辺は意識してます!」


 マリナはドローン型カメラの前に立つ。下働きを意識したのか、ミニスカメイドの格好をしている。


「グミ先輩がボクサーパンツで売るなら……私はノーパンで売ります!」


 そう言ってカメラの前でパンツをずり下ろし、脱いでみせた。マリナ、やるな……!!


「……ちょっとコメント欄の反応を見てみようか」



『死ぬ死ぬマン、許せねぇ! 両手に花じゃねーか!!』

『ノーパン配信、アバンギャルド過ぎる』

『うっかり転んだら駄目だよ!』

『ちょっと新宿ダンジョン行ってくる』

『俺も行くわ』

『死ぬ死ぬマン! 低空ドローンカメラ導入しろ!』



 念の為にTwittorで「マリナ」を検索すると、早くもパンツを脱ぐシーンが暴露系インフルエンサーによって拡散されていた。ツイートの内容は「死ぬ死ぬマン、新メンバーにノーパンを強要!?」だ。リプ欄の大半が「死ぬ死ぬマン、死ね!」となっている。許せねぇ。


「どうですか、反応は!?」


 真っ直ぐな眼差し。ノーパンだけど。


「概ね……好感触だ。このまま行こう」


 好感度より! 視聴者の数だからね!!


「はい、師匠!」


 新生【死ぬ死ぬマンチャンネル】、スタートだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る