第15話 検証

「こらグミ、カレーをバスタオルにこぼさないの!」


「ウゥ……」


 トマベチ鑑定事務所近くのカレー店。グミがどうしても食べたいと言うので、お店に許可をとって配信中だ。


 チャンネル開設二週間経たずして、グルメ配信を行えるとは思わなかった。普通は断られる。全ては登録者数のなせる技だ。


 ここ数日の騒動で【死ぬ死ぬマンチャンネル】は登録者数が一万人を超えた。なので、お店で配信する許可がおりやすくなったのだ。



『カレー食ってねーで、角野さんの効果検証しろ!』

『そうだ! 角野さん出せ!!』

『死ぬ死ぬマンのステータスってどんなの?』

『そうだね。まずステータスみたい』

『グミちゃん、カレー美味しそうに食べるね』

『いつの間にスプーン使えるようになったの!?』

『グミちゃん、スパイスの案件もらえそう』



 そうだな。まずは俺のステータスを視聴者に伝えるか。リュックから手帳を取り出し、脳内ステータスを書き写す。


「今のステータスはこんな感じです!」


 【 名 前 】 八幡タケシ

 【 年 齢 】 18

 【 レベル 】 2

 【 魔 力 】 12

 【 攻撃力 】 12

 【 防御力 】 12

 【 俊敏性 】 18

 【 魅 力 】 2

 【 スキル 】 配信命

※【 H P 】 1022/1022



『めっちゃ平凡で草』

『俺より弱えぇ』

『苗字晒すなよ馬鹿wwww』

『フルネーム開陳してるじゃん!!』

『HPってこんな感じで見えてるのか』

『角野さんを使えば、魔力以下のステータスの値をスワップ出来るってこと?』



「そうですねー。トマベチさんの鑑定を信じるなら、ステータスの値を入れ替えられるってことらしいです」



『攻撃力が1022になったらトップクラスじゃない?』

『まぁ、ランカーは武器も凄いから単純比較出来ないけど』

『これ、視聴者数が増えたらやばいじゃん!?』

『こいつはピーキーだぜ!!』



「この後、新宿ダンジョンで検証するので!! 皆さん、拡散よろしくお願いします!!」


 俺と視聴者のやり取りが終わった頃には、グミのバスタオルは黄色く染まっていた。一度家に戻ってバスタオルを交換したのは、言うまでもないことだ。



#



 新宿ダンジョン一階。モンスターの出現頻度が高く、検証にはもってこいの環境だ。


 俺は右手に金属バット、左手に角野さんを持って進んでいる。


「ウゥ……?」


 グミがモンスターの気配に気付いた。きっと先の十字路からコボルトが現れる筈。よし、検証タイムだ。


 左手の角野さんに意識を向けながら、脳内にステータスを表示する。


 【 名 前 】 八幡タケシ

 【 年 齢 】 18

 【 レベル 】 2

 【 魔 力 】 12

 【 攻撃力 】 12

 【 防御力 】 12

 【 俊敏性 】 18

 【 魅 力 】 2

 【 スキル 】 配信命

※【 H P 】 4320/4323



 よし。やはり【攻撃力】と【HP】のスワップから試してみよう。二つの数字を脳内でタップし、角野さんを強く握ると──。


 【 名 前 】 八幡タケシ

 【 年 齢 】 18

 【 レベル 】 2

 【 魔 力 】 12

 【 攻撃力 】 4320

 【 防御力 】 12

 【 俊敏性 】 18

 【 魅 力 】 2

 【 スキル 】 配信命

※【 H P 】 12/12


 ──よしっ! 入れ替わった!!


「ウォンウォン!」


 ステータス操作に集中していたら、もうすぐ目の前にコボルトが迫っていた。慌てて金属バットをしならせる。


「喰らえっ」


 ドバンッ!!


「えっ……」

「ウゥ……」


 水風船が爆発したようにコボルトの体が弾け、液体が周囲に飛び散った。


「これは想像より遥かにやばいな」

「ウウウ」


 返り血でグミのタオルは赤黒く染まっている。また交換しないといけない。一日に二回は流石に母親に怒られそうだ。

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