生先藤安
「紅茶が1つと、コーヒーが2つ。はい、ここに置くよ」
「「ありがとうございます!」」
「あぁ、ありがとうございます」
「うむ、元気でよろしい。では、その強い思いというものを聞かせてもらおうか」
夢さんは花柄の一人掛けソファーに足を組んで座った。スラリとしたまっすぐな足を組むと一つの絵画のようだった。
安藤先生は咳払いをした後、話し出した。
「そうですね、私の娘についての話なのですがね。長くなるから心して聞いてください」
「ここに来る人たちは長い話ばかりだからな。大丈夫だよ」
「なら安心です。君たちも長すぎて眠らないように」
「うげ」
「はい」
「佐藤くん、うげとはなんだね、うげとは」
「なんでもないでーす」
「まあ良しとしよう」
なんか学校の授業を受けてる気分になってきたぞ。こうなるなら早く帰ればよかったかな。安藤先生の話ちょっと長いんだよな。
「ゴホン、えーとそうそう娘の話でしたね。今、私の娘が病院に入院しているのですが、理由が分からないのです」
「それは、病気が見つからないということですか?」
僕は気になって聞いてみた。すると、先生は頷きながら返答した。
「うん、そうなんだ。どこの病院に行っても分からないと言われてしまってね。今は市立病院に検査入院中なんだ」
「ふむ、病気の症状を聞いても?」
「大丈夫ですよ。1週間前に眠ったきり起きないのです。1週間ですよ。その間に色々な病院を回りましたが理由は分からずじまいでした」
「だから部活を休んでたわけね」
「そうなんだよ、すまないな。明日からは部活を再開するから安心してくれ」
「え!でも娘ちゃんまだ寝てるんだよね?大丈夫じゃなくないっすか?」
翔は驚きながら先生にそう言った。確かに娘さんがその状態で部活に参加するのは難しいだろう。授業でさえ厳しそうなのに。僕だったらおばあちゃんたちがそんな状態で授業なんか受けてられないよ。
「よく分かった。私に一度娘さんの状態を見せてくれないか。どうやら君ではなく娘さんに理由がありそうだ」
「え、理由がわかるんですか!?ぜひ見ていただきたい」
「まだ分からないが、何となくは分かるよ。そうと決まったらすぐ行こう。案内してくれたまえ」
え!もう行くの!?夢さんは行動が早いな。まだ話を聞いてから10分ほどしか経っていないのに。だけど、娘さんが心配だし早いに越したことはないのだろう。安藤先生も行く気満々だし、僕たちもついて行った方がいい感じかな。
「君たちも来るだろう?準備するといい」
あぁ、やっぱり行くんだ。まあ帰ってもやる事ないしついて行こう。隣りの翔を見ると、こちらも行く気満々と言ったような様子だった。なんで少しワクワクしてるんだ。
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