まだめゆ

「まあ、皆そう考えるがな」


「1つ賢くなりました」


「おう、俺も」


  翔と目を見合せて頷いた。今日もぼんやりとしか夢を覚えてなかったから熟睡出来たということなのだろうか。というか、翔は夢を見ないと言っているからいつもぐっすりなんだろうな。羨ましい限りだ。

 僕も運動をしたら疲れてぐっすり眠れるだろうか。その前に筋肉痛になって終わりそうだけど。


「翔少年が見たい夢も見たくない夢もないと言うなら、やはり康介少年の夢に原因があると言うことになるのだが……何か覚えはありそうかな?」


「いや、本当にないですね……。あれ以外だと突っかかっているものはないというか……」


「見たいと思うものは無いんだね?」


「はい」


 沈黙が重たいな。うーん、夢さんも何も思い浮かばないんだろう。翔は言わずもがなだし。僕だって本当に何も思い浮かばないんだ。


「うーん、なかなか居ないからなんとも言えないな。強いて言うなら見たい夢が違ったか、見たくない夢があったかなんだよ。しかし、ここには強い思いを持っている人間が辿り着くから、君のように思い浮かばないことは無いんだ。」


「そうなんですね」


「むずかしーんだなあ」


僕と翔は思い思いの返答をした。すると、翔が夢さんに聞いた。


「そういえば、どうやって見たい夢を見るんですか?」


「あぁ、寝る前にというものを溶かして飲むんだよ。夢玉には見たい夢を込めてあるんだ。」


 夢さんは翔の質問に答えた。そして、僕を見てこう言った。


「昨日、少年に渡したものが夢玉というものだよ。青色に輝いていただろう?あの色も人によって異なるんだ」


「そうだったんですね」


「その夢玉ってやつ俺も見たい!」


「お客が来れば夢玉を作り出せるんだけどねぇ。今は君たちしかいないし、康介少年はもう夢玉を作ってしまったしな」


「あはは……」


 するとドアについたベルの音が鳴った。


「お、噂をすればなんとやらだ」


「すみません、迷ってしまったようだ」


「いらっしゃい、ここはゆめみや。見たい夢を見せて見たくない夢を取り除くことができる。君の望みは何かな?」


 夢さんって僕たちだけじゃなく皆にあの話し方なんだ。まぁ年齢不詳感あるし、あれで似合うからいいのかな。


「え!アンドゥー先生じゃん!」


「え!本当だ!」


「お?知り合いかな?」


「佐藤に一野じゃないか、どうしたんだこんなところに。というかゆめみや?と言ったかな。すまない、私は早く帰らなければ行けなくてね」


「あぁ、そうだったのかい。でも、ここは何か強い思いを持っている人が辿り着くんだ。君にも何か思うことがあるんじゃないかい?」


「あるといえば、あるのですがね……」


「え、そうなの?アンドゥーちゃん。最近部活が無いのと関係ある?」


「僕も気になります」


「ふむ、私も気になるな。よろしければ温かいものでも飲みながら話を聞こう」

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