また
「夢さんが言うには、これを何かに溶かして飲むんだよな……」
僕はお風呂からでて、夢さんからもらった玉?薬?を飲もうとしていた。紅茶か何かに溶かすって言ってたし、紅茶に溶かしておこう。1階に降りて紅茶を入れてこなければいけない。
「あら、康介、まだ寝てなかったのかね?お風呂の後は冷えるから早く寝るんだよ」
「分かったよおばあちゃん。ちょっとのどが渇いちゃって」
「そうかい、ならばあちゃんがお茶でも入れてあげようか?」
「いや、自分で入れるから大丈夫だよ。ありがとう」
「ならばあちゃんはお風呂に入って寝るからね。おやすみ」
「うん、おやすみ」
危なかった。おばあちゃんは優しいからのどが渇いたと言ったらお茶を入れてくれるんだった。上手いこと躱せたかな。とにかく、早いとこ紅茶を入れて飲んじゃおう。
「それで、この玉を入れて、と」
完成した。紅茶に入れたらスッと溶けていった。紅茶の色が変わることもなかった。もし言われなくても入っていることに気づかなさそうだな。飲んでみると紅茶の風味は変わっていないが、味は少し甘い気がした。僕の気のせいかなと思うくらいだったから気づかない人はいるだろう。
紅茶を飲むと夢さんのところの紅茶が飲みたくなってしまう。それくらい美味しいのだ。何というか風味が爽やかで癖になる味なんだよなぁ。うちの紅茶はスーパーで売っているやつだから全然違うのは仕方ないんだけどな。
「さて、寝ようかな」
階段を上がり自分の部屋についた。いつもと同じことなのに何だかすがすがしいようなほうっとした気持ちになる。紅茶を飲んだからなのか、玉のおかげなのか分からない。今日もふかふかのベッドに横になる。今日は早く眠れそうだ。おやすみなさい。
――――――――――――――――――――――
昔の、子どもの頃の夢をみた。お母さんはまだ生きていて、お父さんが家にいたからお休みの日なのかもしれない。おばあちゃんとおじいちゃんは畑に出かけた。今日はトマトの苗を植えるんだって言ってた。トマト大好き!早くできるといいなぁ。
「康介、今日はお出かけをしようか!前に行ってたピクニックをしましょう。お母さんお弁当作り頑張っちゃった!」
「うん!お母さんのお弁当大好き!」
「康介は本当にお弁当が大好きだな」
あぁ、涼しい春の日はよくピクニックに行ったなぁ。ピクニック楽しみだ。お母さんのお弁当、今日は何が入ってるのかな。
「今日は卵焼きにアスパラベーコンの巻き巻き、トマト、カップグラタン、おにぎりよ。デザートにフルーツの盛り合わせもあるからね」
「やったー!全部大好き!」
「よかったな、康介」
どれから食べようかな。まずは卵焼きから食べちゃおう!
「お母さんが取ってあげるからね。まずは卵焼きでしょう?はい、どうぞ」
「ありがと!」
美味しい。卵はふわふわで中には海苔が入ってる。こっちはチーズだ。トロっとしててしょっぱめの卵に合うなぁ。アスパラベーコンもアスパラはシャキシャキでベーコンの塩気とマッチしてる。一緒に食べてもいいし、別々で食べてもそれぞれの味が分かって美味しい。このアスパラおじいちゃんとおばあちゃんが育ててたやつなのかな。
カップグラタンはチーズがカリッとしててこれまた別の味わいがある。あ、下に目玉焼きが隠れてる!白身を黄身につけて、と、うーん!黄身が濃くてこれも最高!
おにぎりは小さくてかわいい!
「康介用におにぎり食べやすくしたからね。たくさんあるからいっぱい食べるのよ」
「はーい!」
うん、美味しい!これは普通のおにぎりだ。こっちは鮭フレークが入ってる!いつも何種類か用意してくれてたなぁ。大変だろうにありがとうお母さん。
心地よい風を受けながらおにぎりを食べていると、蝶々が通った。青くて綺麗だなぁ。あ、デザートも食べないと!
「お母さん!デジャート!」
「はいはい、逃げないからゆっくり食べるのよ」
あれ、上手く口が動かないな。まさか、言葉まで小さいころに戻ってしまうなんて。ちょっと恥ずかしいよ夢さん。
いちごは甘酸っぱくて何個でも食べられそうだった。僕の大好きなさくらんぼも種さえなければ、もっと早く食べられるのに。あ、でも早く食べすぎるとお母さんに怒られちゃう。ゆっくり食べないと。
「「ごちそうさまでした」」
ふぅ~おいしかった。こんなに食べたのはいつぶりだろう。お母さんありがとう。お父さんとも久しぶりにご飯を一緒に食べられて楽しかった。
「じゃあ、そろそろ肌寒くなってくるし、帰りましょうか」
「え、もうかえるの?」
「またみんなで来ればいいだろう」
「そうだね!」
「康介は偉いねぇ」
「うん、ぼくえらい!」
戦隊ヒーローのレジャーシートを片付けて、僕たちは公園を出た。またみんなで来れるんだ、楽しみだなぁ。お母さん、お父さんと手をつないでまた来たいな。
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