ぐちょべちょラ/惨酷の定義

霧原零時

第1話 そこに誰かいる!?

――――俺は目を覚ました。

消えかけた生命のともしびの中で、俺は意識をかすかに取り戻した。

全身の神経が麻痺まひしている。

暗い。目が開かない。思考力が低下して、頭が割れるように痛い。


ムシャ……

俺はしばらく気を失っていたようだ。

どれくらいだろう?一日なのか、一週間なのか。

……それとも一時間、分からない。なにも思い出せない。


記憶がない。なにもない。

俺は、なに者なんだ?

ここは、いったいどこなんだ?


ムシャ……

俺はできる限り気持ちを落ちつかせてみた。

身体中から発せられる激痛に、また気が遠くなりかけている。

持ちこたえなければ。

――――ここでまた気を失えば、二度と意識を取り戻せないような気がする。


ムシャ……

さっきからかすかに音が聞こえる。

……紙くずを手で握りつぶすような音。

……落ち葉を踏みつぶすような音。


分からない。鼓膜を薄いベールで幾重にも包まれているような感じがする。

良く聞こえない。聴覚が働かない。


ムシャ……

俺は、現状を把握するために、残り少ない脳細胞を、その一点にそそぎ込んだ。

自分が、今どういう状況に置かれているのか?

目が開かないだけに、全身の神経と、五感で機能しているものが頼りであった。


ムシャ……

全神経を集中したおかげで、脳に僅かな情報が送られてきた。


……おかしい!?


今得られた情報を分析してみると、ちょっと合点がいかない。

俺は気を失っていたはずだ。と、なると今の自分の体勢をどう説明すればよいのだ。


情報が間違っているのか。……いや、そんなはずはない!

両足の筋肉から伝達された情報からだと、俺は今立っていることになる。

気を失って倒れていたのではなく、俺は自分の両足を地につけて立っているのだ。

しかし、それは考えられない。立ったまま気を失うことなどありえない。

いや、気を失ったまま立っていたのか?


……そんなことはもうどうでも良い。


ムシャ……

分かった。そうか、俺は柱かなにかに縛られているのだ。

立った形で固定されているのだ。

縛られて、殴られて、気を失っていたのか。拷問をされたのか……?


ムシャ……

現状把握に当てた脳細胞から、第2報が飛び込んできた。

その情報から、俺は縛られてはいないことが判明した。

両肩に掛かる圧迫感より、俺はことが分かった。


……え!?ここに、俺以外の誰かがいるのか?

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