第5話ココロを撃ち込め!
「こんにちは、近布田君。僕、石火って言います。」
「えっ、あ、はじめまして。……呼び捨てでいいよ。」
「分かった。ねえ、ずっと指動かしてるけど、何かやってるの?」
「ゲームはめちゃくちゃやってるけど、別に特には。多分指動かしてるのはゲームのこと考えてる時だけど。」
「ゲームって、何やってるの?僕はたまにしかやらないけど。」
「ラズキリっていうFPS。やったことある?」
「流行ってるのは聞いたことあるけど、やったことないなあ。」
「ないか。まあ賛否両論はあるけど、俺は面白いと思うよ。……ところで石火君は、何で俺が指いじってることに気付いたの?」
「前の一番端の、葉鈴さんと陸戸さんも指先をずっと見てて、で、左見たら伊尾割君もおんなじような感じなんだ。で、まさかと思って右見たら、近布田君もだったって言うわけ。」
「なんだそれ。てかそんなことある?」
「それがあるんだよ。気になって話しかけてるんだけど。」
「ふーん。変な感じするな。」
「ね、面白いよね。また今度見てみて。」
「ちょっと気になるから見てみるわ。……この後部活?」
「いや、帰る。じゃあね」
「おう」
さて、帰ってゲームするか。
「ただいま」
「あ、おかえり。学校どうだった。」
「いや、別に普通だけど。あ、でも今日面白いやつに話しかけられた。」
「そう。まあ学校馴染めそうならよかった。あんたに話しかけるくらいだから余程面白いわね、その子。」
「うっせーなー。別にいいだろ。」
「まあ、問題起こさなければいいけどね、特には。仲良くしなさいよ。」
「はいはい」
まったく、自分の息子の友達を面白人間呼ばわりとは、なんちゅう母親だ。自分の部屋に行き、PCを立ち上げる椅子に深く腰掛け、ヘッドホンをつけると外界から俺を邪魔するものは何もなくなる。こうしてゲームをするときが一番幸せだ。
……一段落ついたところでPCを落とし、その瞬間悩みが脳を埋める。ゲームばっかりしていていいのか。大学、就職。ゲームが好きだが、設計の知識なんてものはほとんどない。そもそも悩んでばかりでいいのか。こんなことだから会話でも反応が遅れて友達が少ないのではないだろうか。
無理矢理悩みを押さえ込み、眠りにつく。
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