第3話ミライを描け!

 そして翌日は、伊尾割君に話しかけた。男子だし葉鈴さんよりは少しだけ話しかけやすい。


「はじめまして。僕、石火って言うんだ。」

「はじめまして~。石火君ていうんだ、話しかけてくれて良かった~。新しいクラスでちょっと気まずかったからねえ。」

「まあ、大体同じ中学で固まってるからね」

「ここ行ったの地元で僕だけだったからなあ。」

「あ、そうなんだ。僕は一応隣のクラスに一人いるんだけどさ、そんなに仲良くなくて。」

「へぇー......」

「......ところで、何かスポーツやってる?」

「んー、やってないなあ。僕運動音痴だからなあ。でも、どうして急に?」

「いや、すごい手が器用そうだったから。バレーとかバスケとかかなって」


ちょっと間があってドキッとした。いや、話題降りやすくてむしろいいんだけど。


「あー、いじってた?癖になってるんだよねえ。スポーツはやってないけど、絵はよく描くからかなあ。」

「へー、そうなんだ。じゃあやっぱり美術部入るの?」

「うーん、微妙だなあ。部活に入ると、ほら、好きなもの描けなくなっちゃうし。」

「確かにね。あ、じゃあそろそろ僕は帰ろうかな。急に話しかけてくれてごめん。またね。」

「うん、またねえ。」


 部活ねえ。石火君に言われて再認識しちゃったけど、どうしようかなあ。美術部だとどうしても課題とか出てきそうだからなあ。同じことを好きな友達は欲しいんだけど……。うーん、でも僕の絵、そんなに上手くないからなあ。馬鹿にされるのも嫌だなあ。


 「母さーん、部活の事なんだけど、どうしようかなあ。」

「あー、部活ねえ。私は別に好きなことやったら良いと思うけど。でも、絵を描くにしても成績が落ちないようにしてよ。結局そこが大事なんだから。」

「はーい。」


 当たり前と言えば当たり前だけど、母さんと話すと成績のことになっちゃうんだよなあ。……まあ、いっか。とりあえず今描いてるのを完成させてから考えよう。学力調査みたいのもあるって聞いたけど、何とかなる気がする。今日中にはできると思うから、その後色々決めてこうかなあ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る