第3話 あのひのかさ
「ねぇ!結月!4くみのあれ!岳だよね!?」
(やっぱりくるよね…)
わたしは、すこし、こわかったから、茉希にあさ、あうのが、すこしゆうつだった。
「やっぱり?わたしも…そうはおもったんだけど…」
「…まだ、はつこいけいぞくちゅう?」
「…してないよ」
「なんでそくとうじゃないの?」
「そくとうだよ」
「えー、まがあった!」
「茉希!おこる!」
「はーい」
「!!」
しょうこうぐちについて、ふたりで6くみのげたばこいったら、そこに、岳がいた。
「…岳…」
「おう。ひさしぶり」
「…わたし、さききょうしついってる」
「え、茉希?」
「…」
「…」
茉希にさたれた、しょうこうぐち。でも、ふたりきりじゃないし。せいと、いっぱいくるし。つったったまま、ってわけにもいかなくて、たもくてきホールで、すこし、すわってはなそう、ってことになった。
「おは…よう…」
「はよ…」
いまさらなあいさつ。だって、じぶんからしょうこうぐちにつったてたくせに…。いちおう…まちぶせ…でしょ?あれって…。
って、いえない、わたしも、わたし。
「げんきだった?」
(え?いきなり?)
げんきだったわけないじゃん…。3ねんまえ、ひとをむしして、かさ、せっかくさしだしたのに、ぬれてかえって、そのずいぶんまえからわらわなくなって、どうしたのかって、ずっとおもってて、そしたら、おやのりこんだったとかきかされて、なんで、いってくれなかったの?っていいたいけど、結月にはかんけいない、とかいいそうだし、わたし、おとこのこなれしてなかったけど、岳とは、なんかきがあって、はなしてるだけで、たのしくて、ほんとうに、さいしょはだんじょのわくなんかなくて、すきとかきらいとかしょうらのこととか、ぜんぜんかんがえてなくて、でも、うっすら、つきあったり…するのかな?って…おもいはじめたころ、わらわなくなって…、てんこうして…。
…なんか…もんくばっかならべてる…。
(やなやつ…)
じぶんで、じぶんにげんこつ。
「なにしてんの?」
「え?や、なんでもないよ。ちょっと、かゆくて…」
「いや、いまの、グーだった…」
「…あたま…こってて…」
「…とうひマッサージ?」
「まぁ…」
「…そか…」
(わらわないんだ…。なんで?わらってくれたっていいじゃん…)
じぶんの、たいしたことないギャグで、わらわそうってほうがむりか…。と、おもった。
「ねぇ、岳…」
「…ん?」
「あのとき…なんで、かさ、もらってくれなかったの?」
「あのときって…どのとき?」
「………」
そういわれると、もう、なにもいえない。あのときのかさは、わたしからの、精一杯の、『ラブレター』だったんだから。
「いいや。なんでもない。…じゅぎょう、はじまる。きょうしつ、いかなきゃ」
「…おう…」
「なんの…」
「え?」
「なんの…ようじだったの?」
「ようじ?」
「しょうこうぐちで…まちぶせ?」
「…きのう…ないてたから…けっこう、はでに…」
(やっぱり…きづかれてた…か…)
「うん…まぁ…。でも、ちょっと、おなか…いたかっただけ。なんでもない。なーんでも…。岳とは…なーんにもかんけいないよ」
そういうと、わたしは、なみだがこぼれないうちに、たもくてきホールをさった。
「あー…それ、岳も、まだ結月のことすきだわ」
「それはないでしょ」
「なんで?」
「なんではこっちがいいたい」
「だって、まちぶせだよ?ないたのにだって、きづいてたんでしょ?それこうじつに、あいたかったんだって。はなしたかったんだって」
「なら、ぜんぶ、はたした。これいじょう、よってこないでしょ」
「…結月は、それでいいの?」
「………」
「うっわ!ちんもく!」
「うるさいなぁ…。結月ちゃんには結月ちゃんのじじょうがあるの!!」
(はやく、しぎょうのベルなってくんないかな?茉希がうるさい…)
じぶんがいちばんきになってて、じぶんがいちばんきたいしてて、じぶんがいちばんこれいじょうをのぞんでるのに、それをいいあてられて、なんか、くるしいし、岳のおもいどおりみたいで、くやしい。
わたし、はんこうきかな?岳に?なにそれ。あー…!また、岳のことかんがえちゃってる!!くやしい!!
あ、ベルだ…。
「なんで、いるの?」
「なんとなく?」
「んじゃ、わたしはきょうもここで♡」
「あ、ちょ!茉希!!」
きのうみたいに、また、岳がしょうこうぐちにいる。しかも、6くみの。
でも、かっこうよくなったな…ちゅうがくで180こえてるって…すごすぎない?うわさできいたけど、もうバスケぶからおよびがかかってるってはなし。ルックス、5じゅうまる。なんか、イケメンとよばずして、なんとよぶ?ってかんじ。
って、こっちばっか、岳のこと、いまだにすきみたいで、それ、なんかさきまわりされて、ごかい…っていうか…じしんかじょうなんんじゃないの?ってついおもっちゃう。
『わたし、すきなひといるんだ』
なんて、かっこうよく、ふってみせたいけど、すきなひと、めのまえなんだよね…。こういうの、ふりだよね。りふじん。こうへいじゃない。
あのひ、かささえ、もっていかなければ、わたしのきもち、ばれずにすんだかもしれないのに…。
あのひ、かささえ、もらってくれれば、もっといま、すなおになれてるかもしれないのに…。
あのひ、にゅうがくしきのときとおなじくらいないたの、あんた、しらないでしょ?っていいたいけど、いったら、また、うえからものいわれそうで、いえない。わたしばっか、すきみたいで、いいたくない。
だって、わたしばっか、すきなんだもん…。どうせ、そうなんでしょ?
すんごい、さわがれてること、しってるよ?
すんごい、モテてること、しってるよ?
すんごい、キャーキャーわれてること、しってるよ?
でも、だんしからも、べつにきらわれてないこともしってる。
“いいやつ”だって、しってる。
あのころから、“いいやつ”だって、しってるんだから。
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