第2話 どとうのなみだ

「結月、おはよう!!」


「茉希。おはよ」


「なになに。げんきないなぁ!!」


「茉希がありすぎ」








あれから、3ねん。とは、あれっきりだ。結月の、はつこい。でも、がっきまつでもない、そつぎょうしきでもない、なににりゆうをつけて、はなしをつづけてよかったのか、結月には、わからなかった。


かれは、岳というなのしょうがっこうのときの、クラスメイト。ただし、4ねんせいまで。それも、しゅうぎょうしきと、そつぎょうしきの、あいだに、てんこうしていった。


そのひはあめで、岳は、かさをもたなかったみたいで、クラスメイトのしせんをきにしつつ、じゅぎょうのとちゅうで岳をおいかけて、しょうこうぐちにいった。


「まって」


岳のあしはとまらない。


「かさ」


岳はせをむけたまま。


「…また…あえるかな!?」


「…」


岳は、すこし、のろのろあるきになって、ちょっとふりむいて、ひょうじょうひとつかえないで、また、せをむけて、あめにぬれて、ズボンのポッケにてをつっこんで、ごりょうしんが、岳のかわりに、あたまをさげてくれて、岳は、くるまにのりこんだ。そして、すこしも、こっちをみないで、いってしまった。


はつこいは、きっと、……しつれん、だったんだ。


と、結月は、おもうほかなかった。






そして、ときはながれ、ちゅうがくせいになった、結月は、とってもきれいなおんなのこになっていた。しょうがっこうのころから、おてんばだったわけではないし、おとなしくて、岳をみおくったあとの結月をみて、みんな(だんし)は、じぶんたちのしつれんもしった。


岳は、しょうがくせいで、165㎝あって、バスケがとくいだった。すんごく、わらうやつだった。すんごく、あかるいやつだった。すんごい、にんきものだった。


なのに、しょう4のあるひ、おやのきゅうなてんきんとかで、てんこうがきまった。そのひから、岳は、わらわなくなった。なんで?どうした?なんかゆえよ?


って、みんないった。みんなきいた。みんなきになった。みんなしんぱいした。みんなかなしかった。みんな……結月は、わらってる、岳が、すきだったのに…。



あとできいた。てんきんは、うそで、ほんとうはりこんだった。それで、ちちかたにひきとられることになって、ちちおやのたんしんふにんしてた、とかいへ岳もいくことになったって。ちちおやが、たんしんふにんしてたあいだに、ははおやが、ふりんしたって、岳がてんこうしたあと、クラスのこ、なんにんかから、きいた。




、あたまをさげたのは、ははおやのほうだった。うしろめたかったのかな?って、ちゅうがくのにゅうがくしきに、結月は、おもいだしてた。




「さぁ、1ねんせい、ならんで」


せんせいのごうれいで、7クラスあるしんにゅうせいのれつが、たいいくかんになだれこんでゆく。



そのしせんのさきに、結月は、結月には、すぐわかった。


(岳!?)


たぶん、あのれつは、4くみ。せがたかい。たぶん、180こえてる。あのくろいストレートのショートのかみ。まちがいない。あれは、岳。結月のこころがふるえる。わすれたはずの、すきなひと。すきひと。でも、なんで?なみだがでる。こんなの、どうかくせばいいの?そつぎょうしきじゃあるまいし。ないてるじぶんが、はずかしいけど、どうしてもとまらない。




すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。




こころのなか、そのことばでいっぱい。




「阿比留さん?きぶんでもわるいの?」


こそっと、たぶん、わたしのクラスのたんにんにんるとおもわれる、じょせいきょうしが、わたしのせきのとなりにこしをおろし、かたにてをおいた。


(だいじょうぶです)


が、いえなかった。むごんで、いきをころして、くちびるかみしめて、あたらしいせいふくのスカートをにぎりしめて、ポタポタと、てのこうになみだながしながら、ブンブンかおをふるだけ。


「だいじょうぶじゃないわ。ほけんしついきましょう」


「………」


こくん。


そっとうなずいて、しずかにたちあがったら、しぜんと、しせんが、あのひとにいってしまった。


しせんが、あってしまった。


岳が、こっちをむいて、めをまるくしてる。


それ、なんのかお?


って、ききたかった。


わたしのこと、おぼえてる?


って、ききたかった。


なんで、あのとき、かさ、うけとってくれなかったの?


ってききたかった。


なんで、あのとき、なにもいわずに、いっちゃったの?


ってききたかった。





でも、どれも、きけなかった。あたりまえ。にゅうがくしきに、ごうきゅうしてるやつみたら、だれだって、めをまるくする。きいたところで、きくけんりない。




わたしは、あのひ、あの、あめのひ、ふられたんだから。


しつれん…したんだから…。





しばらく、ベッドのなかで、おおなきした。ながくのびたかみが、なみだでかおにひっつく。ながいまつげが、こんなときは、じゃま。ティッシュほしかったけど、はなみずいっぱいでてるの、せんせいにきづかれたくなくて、ずーずーすすって、がまんした。


…きたないかな?


でも、そんなこと、かんがえてるよゆうなかった。あたまは、岳のこと。岳のことでいっぱい。なんで、ここにいるの?わたしのこときづいた?ただ、にゅうがくしきにないてるだけの、へんなやつってだけのかおだった?


うれしいの、とっても、うれしいの、すんごく、すんごく、うれしいの、わたしだけ?岳は、なんともおもってない?てか、きづいてない?きづいてても、うれしくもなんともない?



岳は…、岳は…、岳は…。




わたし、そのひ、1にちじゅう、それだけだった。私、6くみだったから、どうせホームルームにもどっても岳はいないし、いたらいたらで、こんなかおみせたくないし、なんていえばいいのか…。



「あれって、しつれん…、だよね?」



って、きくの?っておもったら、こわくて、ベッドから、でられなかった。



さいかいなんて、しなきゃ、よかった…。

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