第10話 人面樹と冒険者達 後編

「御父様、ボロボロです。護りながら帰るの? ポーションで治療早くして欲しい」

セリーナが冒険者達を見て呟くと、冒険者達が苦笑いしている

「お嬢ちゃんすまない…ポーションも全部使ってしまっている」

冒険者が苦笑いしている

「しっかり準備をしておけ…後衛も育ててないからこうなるんだ」

「え! 面目ない…ヒーラーが居ないのは仕方無いだろう…中々居ないのだから…ポーションを沢山使って大赤字だ…」

冒険者に苦笑いしている

「ヒーラーが居ないのでなくて、育てられないだけだろ? セリーナ、練習するか?」

アーレルがセリーナを見ている

「え! 出来るの?」

セリーナが驚いている

「やり方は教えるから、お前、ちょっと動くなよ」

アーレルが冒険者の怪我している場所に手を向けて、詠唱をしていると、淡い光が輝き始め切り口が徐々に消えていく


「セリーナも試してみなさい」

アーレルがセリーナを見て言うと、アーレルが説明している

セリーナが詠唱をしながら手を怪我している付近に向けていると、淡い光が輝き始めて傷口が塞がっていく

(はーーーー!! 回復魔法使えるのか!! こんな子供が…その前にこの人何者だ!!)

「御父様、出来ました」

セリーナが嬉しそうに笑っている

「魔力も少ないから、帰るぞ」

アーレルが笑顔で言うと、冒険者達がアーレルとセリーナを見ている

「回復魔法使えるなら、お礼するから頼む!!治療してくれ」

冒険者が慌てて言う

「1人当たりどのぐらい出す?」

「小銀貨3枚でどうだ!! ポーションと同じ価格だ!!」

「重傷者は何倍ぐらいかな?」

アーレルが数人を見ながら呟く

「頼む!! 蓄えは有るから…」

冒険者達が次々と交渉して、アーレルが治療していく


「疲れた…」

アーレルが全員の治療を終わらせる

「御父様、大丈夫ですか?」

セリーナが少し心配そうに見ている

「ヒーラーだから、魔力量が足りないな…早く帰って休もう…フィーネ、疲れてないか?」

アーレルが微笑みながらフィーネを見ている

「はい! 御父様」

フィーネが笑顔で言うと、歩いていこうとする

「待ってくれ、先行する」

冒険者達が言うと、2組の冒険者が歩いていく

「背中は任せてくれ…まさか回復魔法を使えるなんて…思ってなかった」

冒険者が笑顔で言うと、アーレル達も歩いていく


迷宮を出ると、アーレル達は宿屋に向かおうとする

「どこに行く? 冒険者ギルドで報告するだろ?」

冒険者達がアーレルを見ている

「必要ないだろう、依頼を受けていたのは、お前達だから、それに有名になりたくないからな」

「は? 討伐した本人を連れていかないと、後が面倒だ」

「どうでも良いだろ? お前達で倒した事にしてくれ」

アーレルが笑顔で言うと、冒険者達が兎に角冒険者ギルドまで引っ張っていき、冒険者がカウンターの職員に説明している


職員が呼びにくる

「奥にどうぞ」

「娘達を置いていけないから、適当に済ませてくれ」

「え! 報告はしてください」

職員が必死に説得を始めていると、ギルドマスターが笑いながら歩いてくる

「アーレル、娘達の安全は冒険者達が約束してくれる。 今サンドイッチを作らせているから、食べながら待っていてくれるか?」

ギルドマスターが笑いながらセリーナとフィーネを見ていると、他の職員がカウンター近くの壁際に椅子を並べて待っている

「え! 御父様…」

セリーナが不安そうにアーレルを見ている

「行かないとダメか?」

「行くぞ」

ギルドマスターが笑顔で言うと、セリーナとフィーネが椅子に座るのを見てから、奥の部屋に向かう。冒険者達はセリーナとフィーネから少し離れた所で2人に誰も近付かない様に見ている


冒険者達が次々と報告する

「アーレル殿が居なかったら、全滅だな… 強いと聞いていたが…流石ビレット達のお父さんか」

ギルドマスターが苦笑いしている

「ただのヒーラーだ!」

「ヒーラーが人面樹を1人で討伐するか? 2回目だから間違いないが…証人多数だからな」

「未熟者にこんな依頼をする冒険者ギルドが悪い! 回復担当ぐらい育てておけ」

「回復担当を…大きな町ならな…アーレル殿、今回の功績を持って、Cランクに昇格だ」

ギルドマスターが笑顔で言う

「断る!! セリーナとフィーネが1人前になるまで、Dランクのままでいさせろ!! 指名依頼を受けたくない!! 子供を危険にさらせない!!」

アーレルが慌てて怒鳴ると、冒険者達が呆然と見ている

(昇格を断った!! 子供のために? この人もしかしてとんでもないぐらい強いのか? )

「は? …そう言う事か…だからDランクか…」

ギルドマスターが苦笑いしている

「子供達と同じランクでも構わない」

「今回の報酬だけは受け取ってくれ」

ギルドマスターが考えてからアーレルを見ている

「報酬? 依頼は受けてないぞ!! 受け取る義務も無い」

「は? 受けてない…受けてないのか?」

ギルドマスターが職員と冒険者達を見ていると、職員と冒険者が説明している

「横取りしたのだから、この魔石も山分けか?」

アーレルが魔石を出して言うと、冒険者達が慌てて相談している


「ギルドマスター、その魔石の権利は放棄する。分け前を受け取る権利は自分達に無い…アーレル殿に助けられたのだから」

冒険者達が相談結果を伝えている

「人面樹の調査は、ここまでで依頼達成とする。討伐までされたのだから、依頼を受けていたパーティーに報酬は支払おう…アーレル殿はその魔石の買取り価格で良いか?」

ギルドマスターが微笑みながらアーレルを見ている

「ランクアップしないのなら、子供達の装備を買う費用にしよう」

アーレルが考えながら言うと、冒険者達も頷いている


カウンターに戻ると、セリーナとフィーネが美味しそうにサンドイッチを食べている

「あ! 御父様」

セリーナがアーレルを見て叫び

「御父様、美味しいです」

フィーネが嬉しそうに言う

「それは良かった、ゆっくり食べなさい」

セリーナとフィーネを見て言うと、側で食べ終わるのを待っている

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