第10話 最強魔王様は独占する


 勇者召喚。

 もしくは異世界転移及び、異世界転生に結び付く条件は何か。

 それは色々だ。


 ありきたりな交通事故。

 世界に絶望した自殺。

 怨みや怒りや快楽による他殺。

 何の前触れもなく突然死。

 たまにアホな神々がポカにやらかし、強制的に転移させられる神隠死、ではなく神隠しなどなどだ。


 最後の方はふざけんな神! と言う感じであり、そのうちケツでも蹴り飛ばしに行くつもりだ。

 まぁそれはそれとしてだ。

 この日本と言う国では異世界に転移・転生させられる条件が無数にあると言うことである。

 そして今回はその無数にあるうちの一つを我は・・・いや、我々は潰していこうと思う。

 そう、それは


「今回のディクター2の優勝者は“”魔界王マイオマイオさんチームの優勝です!」

「今回のPUVGの優勝者はま~おうは宇宙一さんチームの優勝です!」

「今回のウフォウフォナイトの優勝者は最近のトレンドは卵かけご飯だまおさんチームの優勝です!」


 多くの人間共が熱中しているゲームと言うモノだ。


 最近では世界一や日本一の称号を持つプロゲーマーとやらが、ゲーム上に作ったアバターの力や、集めたアイテムを引き継いで転移&転生するらしい。

 そんなアホなと思うだろうが、そんなアホな事をしているバカ神がいるので、そうはさせないために、実力のあるプロゲーマー達を袋叩きにし、再起不能まで心を折って回っている。


 勿論魔王一人行うには面倒すぎるし、手が足りぬ。

 故に分身体の魔王を一万体ほど用意しそいつ等にやらせているのだ。


「ネットのゲームと言うのは、ホントに星の数ほどにあるのだな」


 調べるだけでも頭が痛くなる。


「まったく、こんな作り物のどこがおもしろいのか。人を殺したいのであればゲームなどではなく、すぐ隣にいる同種を殺せばよかろうに。その方が生暖かい血や臓物の感触を感じられて楽しかろうに」


 赤い絵の具など見せられたところで何が面白いのかわからぬ。

 グチャグチャに潰れた人体スケッチを見せられて何がお面白いのかわからぬ。


 こういうのは見るのではなく、己の手で掴み、感じることが面白いのであろう。

 血の匂いも感じられぬこれのどこが楽しいのか皆目見当がつかん。


「この世界の人とは、あまりに矮小なる存在であり度胸もない者達ばかりだ。故にこのゲームと言う仮想世界で粋がることしかできぬのだ」


「なるほど、矮小であるが故に、夢の世界でだけでも強者に成りたいと言うことか」


 流石我の分身体。

 素早く答えに辿り着くとは。


「そういうことだ。しかし幻想に憧れる者達は侮れぬ。あ奴等は無駄に妄想力だけは高いからな」


「うむ、それは確かに。世の価値観に共感できず、人とのコミュニケーションも碌に取れず、己の価値観で動く者達であるからな」


「だが、そんな奇抜な者こそ我の邪魔になるかもしれぬ。故に排除する。このゲームとか言う世界で生きていけぬようにな・・・それで、アレの準備はおわっておるのか?」


「愚問であるな。とうの昔に終わっておるわ。そんなモノ」


「クックックッ、そうか。ならば今日で多くのプロゲーマーは死に絶えるであろう。絶滅させるのも時間の問題であるな」


「クックックッ、我等最強魔王に出来ぬことなどありはしない」


 最強魔王たちはクックックッと邪悪な笑みを浮かべ、この日本にプロゲーマーと言う存在がいなくなることを喜んだ。





 そして、その日のうちに多くの日本人プロゲーマーは引退することとなった。

 心を折られたプロゲーマー達。

 今まで何百人勧と費やし、課金何千万使おうとも、何をしようが勝てず、ランキング外に蹴落とされたプロゲーマー達は・・・


「しゃ、しゃ、しゃいよう(採用)した!? あ、あの、フィンテンドーに!? なんで!?」


「ほ、ホニーに採用したぞ。え? どうして!?」


 なんか身に覚えのない採用通知書が彼等の元に送られてきた故、プロゲーマーの道を止める者が続出するのだった。

 心が弱っている所に、甘い蜜とも取れる大企業や有名企業からの採用通知や、是非とも家で働きませんか? と誘われればそちらに心が傾くのは当然と言えよう。


 こうして多くのプロゲーマーが社会に出ていくこととなった。

 まぁ、プロゲーマーの地位は最強魔王様の分身体達が1位~100位まで独占しているので、世界的にもプロゲーマーの人口が減ることになるのだが、そんな些末な事を気にする魔王様では無かった。


 ああ、一応補足説明しておくと、元プロゲーマー達に採用通知を送るために各会社の人事の脳みそを弄ったのは勿論、採用された元プロゲーマー達の脳みそも弄って、基本的な仕事はできるようにしておいた。

 おかげで彼等は、会社が求める人並みの仕事はこなせる社会の歯車になることができ、何処にでもある家庭を持ち、暮らすことができるのだった。


 それが彼等にとって幸せかどうかは・・・・わからない。



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