第7話 最強魔王様は帰宅ラッシュも見逃さない
この世界の矮小なる人は、我がいた矮小なる人よりもさらに矮小であり、脆弱の中の脆弱である。
我の世界にいた矮小なる人であるならば、我が起こす吐息の嵐くらいは何とか耐えられたであろう。
だがこの世界の矮小なる人では耐えるなどできずに、そのまま吹っ飛び、脆弱な肉体は壁のシミの様に潰れてあっけなく死んでしまうだろう。
それほどまでに、この世界の人とは脆弱の中の脆弱なる存在であった。
だからだろう。
だから
「人がゴミのようだとはよく言ったものだ」
だからこんなにも繁殖力が強いのだろうと感心した。
毎度思うが、電車と言う乗り物には、呆れるほどに人の出入りが多い。
いったい今までどこにいたのかと思うほどの人の多さだ。
空から眺めているだけでも人がごった返しているのがよくわかる。
「人の繁殖能力にはだけは、目を見張る所があるな。魔族随一の繁殖力を持つゴブリンと同等とは・・・いや、確か学術書に人とはゴブリンの突然変異であると書かれておったな。なればこの繁殖の高さも頷けるか」
うんうん、と最強魔王様は一人新聞片手に納得したと言わんばかりに頷く。
人は猿から進化したのであって、断じてゴブリンと言う謎生物から進化したわけではないが、それを指摘する者はこの場にはいなかった。
「しかし近年では少子化が進んでいるともここに書いておるな。流石に繁殖力の強い人であっても、増えすぎた人口に本能的に危機感を覚えているのだろう。故に雄が雄を愛し、雌が雌を愛する現象が起こっていると言う訳か。ふむふむ、繁殖力の低い魔族では見られぬ現象であ「キャーーーーーッ!!」るな。ぬ? ああ、自殺者か。電車への飛び込みは家族に莫大な負債を負わせる故に止めた方が良いぞ」
軽く小指をクイッと動かすし時を止め、今まさに電車に引かれそうになっていた男性を助け出す。
ついでに助けた男の精神をリフレッシュ&強化する。
流石に助けたのにまたすぐに自殺をされては困るからな。
後は自殺した男の記憶と、その男を見た者達に記憶操作を施し、監視カメラ等のデータも全てぶっ壊しておく。
ああ、勿論急ブレーキをかけて電車を止めてしまった車掌などに責任が行かぬように、急ブレーキをかけた記憶も記録も全て改ざん済みである。
「まったく、電車での自殺は止めて欲しいものだ。面倒で叶わん」
そう不満を漏らしながら、最強魔王様は新聞片手にプカプカと優雅に空に浮かびながら、会社で酷使されて疲れはてた自殺者予備軍達を見張るのだった。
最近ではサラリーマンも異世界転生して活躍することが多いからな。
勇者になれる年代はとても幅広いのだよ。
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