第5話 最強魔王様のお昼ご飯


 生き物と言うのはどんな生物でも腹は減ると言うモノ。

 他者から糧を得なければ生きていけないのは世の常である。


 故に最強魔王様も他者の命を食らう。

 それが自然の摂理であり、いくら最強魔王様であってもそのルールだけは抗えないのである。


「うむ、馳走になったぞ!」


「ふ、ふぇい! ま、まいどどうも!・・・・・あっ、こちら賞金になります」


「うむ」


 丁度腹が減っておったので適当な店に入った我は、そこで飯を食わせて金までくれる料理を注文した。

 この世界の飯は我の知らぬ飯ばかりであり、また味付けも多彩であるから我を飽きさせずに楽しませてくれる。

 矮小な人間共であるが、こういう面白き発明をするところは認めておるのだよ。


「あ、あの、写真を撮らせて頂きたいのですが・・・」


「ぬ? しゃしん?」


「ええ、成功者の方には皆さんに写真を頂いているのです」


「ふむ、なるほどな・・・」


 写真と絵姿のようなモノであり、本来ならば高貴な我の姿を残すなど許さぬところではあるが、


「・・・よい、許す。好きにするがよい!」


 このような面白き馳走を発明した者の願いだ。

 そのくらい叶える度量は持ち合わせておる。

 なんて言ったって我は最強魔王であるからな!


「それとこちらにサインを」


「ふむ・・・・・・・・・・まぁよかろう」


 そしてサインとは、この最強たる魔王のサインを欲するとは、中々に業突く張りである。

 だが許そう!

 なぜならタダで飯を食わせ、金まで寄越す偽善者が相手であるからな。

 そんな偽善者が経営者ではやっていけないのだろう。

 我の、この最強たる我の威光に縋らねばやっていけないのであろうから、特別に許してやろうぞ。


 千年後にまた食いに来た時に潰れていては叶わぬからな!


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