夏の弦月(げんげつ)

降羽 優

夏の弦月(げんげつ)

花火までまだ少しある境内で 君と見上げた夏の星空

氷菓子 並び見上げたその先に真夏を告げる打ち上げ花火

待ち合わせ橋のたもとでお囃子に夏の弦月川面を揺らす

花火咲く こんな思いの私にも響いて咲くよ 泣けるくらいに


宿題をたんまり抱え祖父の家 紐解きもせず夏は過ぎゆく

手に持った花火のけむり避けるよに はしゃいで楽し 浜辺 八月

日焼けしたキミの笑顔と目が合った 内緒の浜辺 砂の熱さよ

引く波と同じ数だけ寄せる波 数は同じも思いは違う


君は花 我は旅人 出会へども 雲間にのぞ泡沫うたかたの月 

浴衣着て キミと二人で見る花火 離れぬように 離さぬように

打ち上げの花火の音の切れ切れに キミに伝える 大事な思い

人混みに 恋人つなぎ指と指 じゃれあいながら 確かめている

人の波押され屋台の石畳 つなぐ指先ふたり染め上げ

逃げまわる金魚のような君だから 鉢の中では息もしずらい

賑やかな花火の音も鳴り止んで 終わる夏夜に寂しさ残す

花火の火 ゆれて静かに消えてゆく 淡い光に何を思うぞ


蛍舞う 一夜一夜を噛みしめて 今宵最期の舞いと思えば

ほたる火の闇夜に描く息づかい あと数日の淡きともし火

境内に残りし灯りやがて消え 雲の切れ間に弓はりの月

静寂に染まりし夜の境内で上弦の月夏に幕引く


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夏の弦月(げんげつ) 降羽 優 @furuha

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