12 ダンジョン上層の攻略① 事前の情報収集
「よぉし、キュアポーションも作ったし、早速ダンジョンにいくか!」
ブレイブはやる気に満ち溢れ、その表情は明るい。
〔待て。その前に冒険者ギルドへ寄るぞ。この前第四階層を荒らした奴らの情報がなにか掴めるかもしれない〕
「おっと、確かにそうだな。行ってみるか」
ブレイブはシズルの言葉に頷くと、ケイナにも伝える。
「流石ですね。行きましょう!」
ケイナは何やら感心した様子で即答する。二人は冒険者ギルドに向かって歩き始めた。
先程買い物から戻ってきてから、どうもケイナの雰囲気が変わったような気がする。
なにかスッキリした様子で、前よりも生き生きとしている。
とはいえ、それは良い変化だし、別段気にする必要はないだろうとブレイブは思う。
彼がケイナを買い物に行かせたのは、ダンジョン攻略前にシズルと二人でじっくり話しをする必要があったからだ。
シズルからダンジョン上層の特徴や攻略の仕方などを聞いた。そして、話の最後にケイナのことが話題に上った。
シズルが言うには、彼女は
そんなケイナの育成計画をシズルから長々と説明されたのだが、EKOではどうのこうのと小難しいことをペラペラ言うので、正直よく分からなかった。
ちなみにEKOとは、ブレイブのいる世界と似た世界らしく、転生前シズルはその世界でかなり強力な存在だったようだ。
長い説明の中でかろうじて分かったのは、本来狐人族は攻撃役向きだが、今はパーティーに防御役がいないので、どちらもできるように育てるつもりということだった。
ブレイブはからかうつもりでシズルに、「こんなに丁寧な計画を考えるなんて随分惚れ込んでるな」と言ってみた。
だがそれに返ってきた答えは、「激レアな最強種族を手に入れたんだ。完璧に育てようとするのは廃ゲーマーとして当然のたしなみだぞ」だった。
期待していた答えと違いつまらなかったが、シズルらしいと感じるブレイブだった。
彼がそんなことを思い出しながら歩いていると、冒険者ギルドに到着した。
「そうだ、ケイナも冒険者登録をしておくといいぞ。ダンジョンで取れた魔石やドロップ品なんかを引き取ってもらえるからな」
「分かりました!」
ケイナが冒険者ギルドのカウンターで冒険者登録をしている間、ブレイブは依頼書が貼り出された壁に近づく。
その中に気になる依頼書があった。
【行方不明になった冒険者パーティーの捜索依頼 ~依頼元:冒険者ギルド~】
ダンジョンで冒険者が行方不明になることはよくある話だ。
しかし、冒険者ギルドが行方不明者の捜索を依頼するなどという話は聞いたことがない。
〔何か起きているみたいだな。誰か詳しい人間に聞いてみたいが──〕
「任せろ」
ブレイブは、ギルドの中にある食堂兼酒場に向かう。
そしていきなり、テーブルで酒を飲み交わす強面の男達の隣に腰かけた。
〔お、おい、死にたいのかお前!?〕
男達は招かれざる客にギロリと目を向ける。
「なんだ、このガキ?」
「店員さん、この兄さん達にエールを頼む!」
「あいよ!」
「……おう坊主、なかなか分かってんじゃねえか! わっはっはっ!」
男達は酒が来ると分かると、気を良くして笑い出す。
「なんか聞きたいことでもあるのかい?」
「ああ。冒険者パーティーが行方不明になったらしいが、兄さん達はなにか知ってるか?」
「そのことか。最近ダンジョンの中でおかしなことが起こってやがる。素材が採れるエリアが荒らされたり、ディビアントが出たりな」
店員がエールを三杯運んできた。ブレイブは店員に金を支払う。
「でな、その原因の調査に出かけた冒険者パーティーが行方不明になってんだ。上層と中層にそれぞれ向かったらしいんだが、どっちからも戻ってこねぇ」
「まさか、キュアリーフの採集エリアを荒らした犯人が……?」
「そこらへんは今Cランクの冒険者パーティーが調査に行ってるから安心しな! 坊主はこれから上層に行くってところか? ならそっちに集中するこった」
「そっか、ありがとう!」
ブレイブは男達に礼を言うと、テーブルを立った。
「シズル、情報はこんなもんで十分か?」
〔あ、ああ。完璧だ〕
ブレイブがシズルと話をしていると、ケイナが登録を終えて戻ってきた。
Fランクの冒険者証を手にしている。尻尾を振っているので、きっと嬉しいのだろう。
冒険者ランクはFから始まり、E・D・C・B・A・Sの順に上がっていく。
ランクが高いほど高い報酬の依頼を受けることができる。
「お待たせしました! 何か依頼は受けないんですか?」
ケイナがブレイブに質問する。
「今回はダンジョン上層の攻略が目標だから受けないぞ。情報収集も終わったし、早速ダンジョンに向かおう」
「はい!」
二人は冒険者ギルドを出ると、ダンジョンへと歩き出した。
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