女子中学生ラブホテル探訪記

ドン・ブレイザー

第1話 

 話に聞いていた通り、フロントは無人だった。代わりにあるのは、タブレット端末と電話。ここはラブホテルの無人フロント前。


「ここのフロントってこんな風になってんだね」


「感心してないで、早く受け付け済ませて」


『部屋をタッチして選んでください』


 フロント前に立つとタブレット端末から録音の女性の声が聞こえた。タブレットの液晶には部屋の内装が写っている。


「うわ、喋った。へえ、この液晶をタッチして部屋を選ぶんだって。あれだね、ハイテク」


「ねえ、本当に大丈夫? 学校とかに通報されたりしない?」


 翔子ちゃんが不安げにコソコソと私に耳打ちしてきたので、自信を持って大きな声で答える。


「大丈夫だよ。先輩が使ったときも何もなかったっていうし」


「ならいいけど」


 そう言いながら、翔子ちゃんはまだそわそわしている。私たちの他に誰もいないのに周りをキョロキョロ。


「部屋どれにする? 結構色々あるよ」


「一番安いところ。あとはアスカに任せる」


「はーい、じゃあここ、213号室で」


『お客様のお部屋は二階になります。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ』


 機械の声に案内されて私たちは階段を上がる。


「私初めてだからなんかドキドキする。翔子ちゃんもこういう所初めてだっけ?」


「当たり前でしょ! 行ったことないわよこんなとこ……」


 翔子ちゃんの顔は真っ赤だった。


「こんな、ラブホテルなんて……」


 現在午後8時、中学生二人でラブホテル。


 なぜこんなことになったのか。話は3時間ほど前にさかのぼる。

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