第47話
翌日の放課後。
いつもの空き教室に集合したのだが———
「どうして机の上にお菓子が置いてあるの?!」
目の前にある机の上にはチョコレートやビスケット、さらにはジュースまで並んでいた。
「それは生徒会役員選挙の落選お祝いパーティーを開催する為に決まっているじゃん!!」
「落選でパーティーするなんて聞いたことないよ」
普通のパーティーは当選をしたらやるものだけど、落選してパーティーを開くとは…。しかもノリノリでやっているのがシュールな光景だ。
「最初から落選をする気で動いていたんだから、その通りに実現出来たんだから当然でしょ!」
「やっぱりさ、ここまで落選に前向きになっているのも変な感じだよな」
「何があっても当選はしたくなかったからね———そんなことよりパーティーを始めよ!!」
結茜さんは椅子に座ると、近くにあったクッキーを手に取り、美味しそうに食べていた。
ほんと美味しそうに食べるな。
とりあえずパーティーを開催する理由は分かったけど、次に気になるのはお菓子と飲み物だ。
そもそも投票結果が分かったのは今朝のことなのに、その前から持って来ていたことになる…よな?
そんな疑問が顔に出ていたのか、結茜さんがニヤニヤしながら教えてくれた。
「簡単な話だよ。 急いで近くのコンビニまで走ってお菓子と飲み物を買ってきたんだよ」
「な…なるほど」
いつもは自由に集まっているのに、今日に限っては時間を指定してきた。何かしらあるとは思っていたけど、お菓子を買っていたとは…。
「折角、雪翔くんが好きそうなお菓子も買ってきたのに、そんな苦笑いしなくてもいいじゃん〜」
「それについては有り難いけど、やっぱりパーティーを開くことに違和感が…ね」
「もう細かいことは気にせずに、とりあえずお菓子を食べようよ〜!」
「その心は?」
「急いで買ってきたから、少し小腹が空いた」
「分かった」
俺は結茜さんの対面に座り、一緒にお菓子を食べることにした。そして俺は机の上からチョコブラウニーのお菓子を一つ手に取った。
「やっぱり雪翔くんはチョコ系が好きだよね! 以前もチョコ系とのお菓子を選んでいたし」
「確かにチョコ系のお菓子は大好きだよ。 例え、肌が荒れていたとしても食べてしまうくらいにね」
「その例えはどうかと思うけど、とりあえず喜んでくれて良かったよ」
他にも沢山あるから食べてね!、と微笑しながら言葉を続けた。
「ありがとう」
俺は返事をし、次にクッキーに手を伸ばそうとした時、
ガラガラガラ———
と教室の扉が開いた。
「貴方たち空き教室で何をしているの?」
「生徒会長と———」
「副会長?!」
扉から現れたのは生徒会長と副会長だった。
「君たちは確か役員選挙に立候補していた…」
「中之庄結茜さんと御影雪翔くんだったかな?」
「そうですが———」
俺は頷きながら、結茜さんの方に視線を向けた。
現在の結茜さんの姿は委員長モードを解き、不良美少女モードになっていた。
「それにしても中之庄さんは選挙の時とイメージが違うようだけど、どーゆうことかな?」
海野先輩は優しい微笑みを向けてきた。
「その…何と言いますか」
「別に責めている訳ではないよ? ただイメージが違うから、その理由を聞いているだけだから」
「う…嘘でしょ?!」
言い淀んでいる結茜さんを助ける為に何がいい言い訳がないか探していると、突然高瀬先輩が口元を手で隠しながら驚いた。
「あゆみ。 大事な話をしているんだから、急に大きな声を出さないでくれ」
「そんなこと言われても…だって、目の前に羽衣結茜ちゃんがいるんだもん」
……うん? いま、羽衣結茜って言ったか?
「羽衣…結茜? あー、あゆみがこの間読んでいた雑誌に載っていたモデルの人か」
「そう!! 私の癒しである羽衣姉妹の一人で“幻の妹“の二つ名を持つ羽衣結茜ちゃん!! まさかこの学校に通っていたなんて…最高かよ」
間違いなく高瀬先輩は羽衣結茜って名前を言っている。さらに言えば、幻の妹についても知っているから、かなりの羽衣姉妹のファンであることは間違いない。
さて…これを聞いて結茜さんはというと———
目を大きく見開いて、口をぱくぱくしていた。
「結茜さん…大丈夫?」
「う…うん。 ただ情報過多で頭が回らなくて」
「ま、まあ生徒会長にいきなり羽衣姉妹のことを言われたら驚くよね」
「そうなんだけど———こんなバレかたはしたくなかったな…」
「そ…そうなんだ」
どんなバレかたをしたかったのか気になるけど、それを聞くと話が長くなりそうなのでやめた。
すると高瀬先輩が急に結茜さんに詰め寄ってきた。
「は…羽衣結茜さん。 私の名前は高瀬あゆみと言います。羽衣姉妹の大ファンです。 サインをお願いしてもいいですか?」
「ちょっ… 私は一年生なんですし、生徒会長がそんな頭を低くしないでくださいよ。 あとファンなのは嬉しいのですが、サインは…ちょっと」
「そ…そうですか。(サイン欲しかった…)」
生徒会長がボソッと言う台詞じゃないですよ…。
それに結茜さんもかなり困っているし。
「はいはい。 とりあえず離れような、あゆみ」
「羽衣結茜ちゃんから離さないで〜」
「はぁ…仕方がないな」
海野先輩は大きくため息をつくと、俺たちの方に視線を向けてきた。……これは嫌な予感がする。
「二人とも悪いんだけど、そのパーティーに私たちも参加していいかな?」
そうなりますよね。海野先輩がため息をついた時から何となくそんな気がしましたよ。
一旦、俺は結茜さんに視線を向けると、結茜さんは苦笑しながら小さく頷いた。
「分かりました。 では、一旦席に座りましょうか」
「ありがとう」
「やったー!! 羽衣結茜ちゃんと話せる〜♪」
「あはは…」
さてと…何も起こらなければいいけど。
そう思いながら、俺たちは席に座った。
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