第41話
「はぁ…色々と疲れた」
「まだ一週間が始まったばかりだよ」
学校に着き、自席にてため息をしながら突っ伏していると佐伯くんが苦笑しながらやってきた。
確かに一週間は始まったばかりだけど、休日に色々ありすぎて既に寝ていたい気分だった。
「これで寝て起きたら金曜日になっていたりしないかな? その間の授業ノートも謎の法則により、全てまとめられていて」
「う〜ん… それはこの世界では難しいかもね」
おっと…佐伯くんを困らせてしまったようだ。
それにしてもくだらない話をちゃんと聞いてくれる佐伯くん…ほんといい人だ。
すると、背後から女性の声が聞こえてきた。
「七音を困らせないでよねー」
後ろを振り向くと、鬼頭さんが「おはよう!」と言いながら手を振って立っていた。
「静香、おはよう」
「鬼頭さん、おはよう」
俺たちの挨拶を聞くと、鬼頭さんは足早に座席に鞄を置いて戻ってきた。
「そ・れ・で、御影くんが疲れている原因は何なのかな〜? 私はとても気になって、夜しか寝れないよ
「夜に寝ることが出来ているんだから、何も問題ないだろ」
「静香に対して、いいツッコミだよ御影くん」
「笑い事ではないからな」
このやり取りだけで疲れが倍増した気がする。
それに教室でも二人で普通に話すようになった。隠れて付き合っていたのはどうした?
「簡単に言えば、休日に出掛けた時の疲れが取れなかったんだよ」
「休日の疲れね〜 ほんと休日の疲れは仕方がないけど、誰とどこに出掛けたのかな?」
「よく話を膨らませようとするな… 俺が一人で出掛けた可能性とか考えないの?」
「全く考えないね。 だって、御影くんは誰かしらと出掛けているはずだし!」
「佐伯くん、このドヤ顔をしている人を何とかしてほしいんだけど」
何を言っても無駄だと思い、目の前に座っている佐伯くんに助けを求めた。
すると、佐伯くんは苦笑しながら口を開いた。
「ははは…それは難しいかな。 最近の静香は御影くんに興味津々で何言ってもダメだし」
「それは彼氏としていいの?!」
「まあ好意による興味ではないから、大目には見ているかな」
本当に彼氏なんだよね?彼氏なら好意じゃなくても、別の男に興味を持たれるのは嫌なものだよね?
ジト目で佐伯くんを見ていると、鬼頭さんがドンドンと机を叩いてきた。
「そこのお二人さん。 私の話を無視しないでほしいのですけど!!」
「無視はしていないから落ち着いてね静香」
「俺も無視はしていないよ」
「なら、早く質問の答えを言いなさい〜!」
「妹と都心に出掛けたんだよ」
これ以上、ぐいぐい来られるのも面倒くさいので、質問に答えた。一応答えたが、結茜さんたちと遭遇したことは伏せることにした。
「なーんだ。 妹ちゃんとお出掛けだったのか〜」
「鬼頭さんは誰だと想像していたんだよ…」
「委員長と」
「ですよねぇ…」
思った通り伏せることは正解だった。
ここで結茜さんたちもと言っていたら、さらに鬼頭さんの興味が湧いて質問攻めになる所だった。
「私のことを呼びました?」
突然、背後から女性の声が聞こえてきた。
その声に聞き覚えがあるなと思い後ろを振り向くと、結茜さんが首を傾げながら立っていた。
「委員長!おはっー!」
「鬼頭さんおはよう」
「「おはよう」」
「雪翔くん、佐伯くんもおはよう」
結茜さんは挨拶をすると鞄を置いてから、また俺たちの元へ戻ってきた。
(普通に挨拶したけど、これは結茜さんが以前言っていた突撃になるのでは?)
いや、突撃とまではいかないけど、普通に俺たちの会話に参加してきたな。……有言実行だな。
「あのグループに委員長が参加?!」
「謎メンツになりつつあるな」
「カースト最下位の御影に何があったんだ!?」
結茜さんが参加するのは予想出来たけど、何で俺まで巻き添いをくらうの?あとカースト最下位を強調するのはやめてほしい…。
周囲の話し声を無視するかのように、結茜さんは普通に俺の隣に座ってきた。
「それで何の話をしていたの? 私の名前を呼ぶ声が聞こえたんだけど」
「実は御影くんが休日に妹ちゃんと出掛けて、その疲れが溜まっているんだって。その中で最初にお出掛けをしたのは妹ちゃんじゃなくて、委員長だと思っていたんだよねって感じで話をしていたの」
「ふ〜ん… いくら休日にはしゃぎすぎたからといって、学業を疎かにするのはダメだよ?」
「……はい。肝に銘じときます」
委員長モードの結茜さんに怒られるの新鮮だな。
話す時は大体不良美少女モードだったから、これも結茜さんの努力の結果なのかもな。
すると結茜さんが顔を近づけ、俺の耳元に囁いてきた。
「(休日は水着選びありがとうね! 雪翔くんが選んでくれた水着ともう一着水着を買ったから、お披露目できる機会があったら楽しみにしていてね!)」
「( !? それは一体どうゆうこと?!)」
「(ふふふ… 秘密)」
「ちょっと、私たちの前でイチャイチャしながら、秘密の話をしないでほしいな〜」
「普通に話をしていただけだし、イチャイチャをしているのは鬼頭さんたちでしょ?」
「……あまり大声で言わないでほしいんだけど」
今更恥ずかしがった所で、この光景の時点で色々とばれていると思うけど…。何だったんたら、クラスメイトたちは最初から二人の関係を知っていたんではと思った。
(結茜さんの時は騒がれていたけど、この二人が一緒にいても不審がられていないのが証拠だ)
佐伯くんの方に視線を向けると、頭を掻きながら苦笑していた。
「とりあえず私と雪翔くんの話は内緒だから、鬼頭さんは我慢してね」
「うぅ…とても気になるけど、委員長命令なら仕方がないか」
「ちょっと、これは命令ではないのだけど?」
「命令だよ〜」
結茜さんと鬼頭さんのやり取りを見ていると、何だか微笑ましくなるな。どうやら佐伯くんも同じ気持ちらしく、温かい目で二人を見ていた。
そして担任の先生がやって来て、生徒たちが席に座ったのを確認すると口を開いた。
「本日の予定なんだが、放課後に少しだけ話し合いを行うことになった」
そう言うと、生徒たちから不満の声が漏れた。
「早く帰りたい気持ちは分かるが、決めないといけないことをあってだな…」
「その決め事とは何ですか?」
「生徒会役員選挙だ」
「それは他のクラスから立候補者が出たから、私たちは決めなくてよかったのでは?」
クラスメイトの言う通り、役員選挙の立候補者は他クラスから数名出た。その結果、一年生の立候補枠が満員となり、俺たちのクラスは誰も立候補しなくて済んだはずだったのだが———
「それが色々あって他クラスの立候補者が辞退したんだ。それで何故か私のクラスに回ってきた」
ほんと面倒くさいことを…、と担任はボソッと呟いていたが俺たちは沈黙を貫いた。
「という訳で、面倒くさいけど決めるから他薦推薦どっちでもいいから決めといてな」
そして朝のホームルームが終わり、担任は教室を出て行った。その後、俺たちは授業が始まり、あっという間に放課後になった。
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