第11話
二人が固まったので、俺が結茜さんの方に視線を向けると耳元に近寄り小声で話し掛けてきた。
「(御影くんが質問したら急に固まったね)」
「(二人には禁忌の質問だったのかな?)」
「(その考えは違うと思うよ)」
「(うん…俺も自分で言っておきながら、絶対に違うと思っていたから)」
急に固まった理由は大体想像はつくけどね。
人の目を気にしない空き教室で密会とくれば、付き合っているの一択だ。俺たちみたいな特殊な密会もあるけど、この二人は前者だろう。
(とりあえず、二人が固まったままだと話が進まないし、時を動かしてあげるか)」
「二人を現実に戻したいから、結茜さんは鬼頭さんを揺らしてあげて。俺は佐伯くんをやるから」
「任せて!」
結茜さんは敬礼すると、鬼頭さんの方へと向かった。俺も佐伯くんの方に行き、結茜さんと視線を合わせて、同時に二人を揺らした。
「うわぁ〜 頭が揺れる〜」
「ちょっと…揺らす、のやめて…ほしいんだけど」
揺らしてから数秒経たないうちに二人が反応したので、結茜さんに視線を向けて揺らすのをやめた。
「委員長〜! 何で揺らしたの?! かなり勢いも強かったし、首が取れるかと思ったよ〜!!」
「鬼頭さんが固まっていたので揺らしました。勢いが強かったのは……気のせいです」
「ねぇ、間があったよね?! 確実に私に対して恨みが入っていたよね?!」
「ありませんよ」
あれは恨みがあるな。その恨みは自分の正体がバレたことだと思うけど、ほぼ表情でバレていたから自業自得なんだよな。だから鬼頭さんはとばっちりを受けたことになるんだよな。
二人の様子を見ていると肩を叩かれた。
視線を向けると、佐伯くんが満面の笑みを向けながら聞いてきた。
「御影くんも同じ理由なのかな?」
「同じ理由ですね」
「す…素直に答えるんだね」
「言い訳ができる状況ではないなら、素直に答えるのが一番の解決だと思っているからな」
「独特の考え方を持っているね」
「まあね」
他にもやり方はあるかもだけど、佐伯くんは優しい性格だから素直に答えるのが一番だ。
それから「これからよろしく」ということで、佐伯くんと握手をしていたら、結茜さんに呼ばれた。
「おーい、御影くん!! こっちに座ろ!!」
「七音もはーやーく!!」
後ろを向けば、いつの間にか四つの机を合体させて、話し合いができる形に二人が座っていた。
(いつ席をくっつけたんだよ)
佐伯くんは「はいはい」と言いながら鬼頭さんの横に座り、俺も結茜さんの横に座った。
「それでは二人の関係を教えてくださいな」
全員が椅子に座ると、結茜さんは微笑しながら二人に向けて聞いてきた。
二度目なので今回は固まらなかったが、二人はお互いに視線を向けながら、「どうしようか」と相談していた。
(相談するも何も、目の前の光景が答えになっているんだよな)
それから数分が経ち、二人は俺たちの方に視線を戻して口を開いた。
「俺と」
「私は」
「「クラスメイトに隠れて付き合っています」」
だよね。ここに来てから、そんな雰囲気を何度も出していたよね。てか、名前を呼び捨て呼んでいる時点で気付くよね。
「やっぱり付き合っているよね〜!」
「……えっ。委員長気付いていたの?!」
「ここに来てから色々と判断材料がありすぎて、鈍感な人でも気付くよ。 ね、御影くん?」
もちろん二人の関係には気付いていたから、結茜さんの言葉に頷いた。ただ一つだけ訂正を入れるなら、俺は鈍感ではない!
鬼頭さんは大きくため息をついた。
「マジか…秘密の関係もこれで終わりなのか」
「静香。俺たちの秘密の関係はまだ守られるかもしれないぞ」
「どうゆうこと?」
すると、佐伯くんが俺たちの方に指を指した。
「俺たちの関係と同等の秘密が、この二人にも絶対にあるからだよ」
「つまり、私たちが二人の秘密をバラされたくなかったら、私たちの秘密も守れ的な?」
「言い方はあれだけど…まあ、そんな感じだな」
確かに俺たちは二人の秘密を握ったけど、逆に俺たちの秘密も二人に握られているんだよなぁ…。
「という訳だから、二人の関係を教えなさい!」
急に自信を取り戻した鬼頭さんが言ってきた。
(ほんと面倒くさい人たちだな)
だけど二人の関係を教えてくれたら、俺たちの関係を教えると言ったので約束は守らないといけない。俺は一つ深呼吸をしてから口を開いた。
「俺と結茜さんは少し前に色々あって親しくなり、それから仲良くさせてもらっている」
嘘入っていない。ただ、恋愛感情の話や七蒼さんとも仲良くしていることは伏せた。これ以上詳しいことは結茜さんの口から言った方がいい気がしたからだ。
「それで私のことを色々と知られたから、放課後に私と話せる時間を作ってあげたの!」
あれ…?多少話を変えてくるとは思ったけど、これは少し変わりすぎでは…?
「そうなんだ!!いや〜あの羽衣姉妹の幻の妹と秘密の密会なんて羨ましいな〜!!」
「密会だなんて。ただの友達同士ですよ?」
「空き教室に来ている時点で、怪しい関係に見えるからね〜?」
「それを言うなら、鬼頭さんだって」
女子トークに盛り上がりが見せてきたので、俺は佐伯くんの方に視線を向けた。
「まさか鬼頭さんと佐伯くんが付き合っているなんて驚いたよ」
「確かに驚くのも無理はないよね。俺と静香では真逆の位置にいるしね」
「どっちから告白したの?」
「それは…恥ずかしいから秘密で」
初々しいな…。ラブコメ漫画の友人だったら、「そこは教えろよ」とか言うんだろうけど、俺はこれ以上は聞かない。だって、自分も恥ずかしいことを聞かれたくないからね。
「分かった。俺からは何も聞かないよ」
「そうしてくれると助かるよ」
それから時間が経ち、17時半のチャイムが聞こえてきたので、俺たちは解散することになった。
その時に佐伯くんと鬼頭さんの連絡先を交換して、友達リストに名前が増えて少し嬉しくなった。
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