第2話
微睡。
すぐには目が開かない。時計の針は3時前を指していた。住宅が多いのもあってかこの時間は比較的静かで、現に隣からの寝息がちゃんと聞こえている。体に残る疲労感を取り払うために、そっとベッドから出た。
規則正しい生活リズムを示す場合、今のこの時間は「睡眠中」として振り分けられる。仕事の繁忙期に睡眠そっちのけで自由時間を優先していたら案の定体調を崩したし、1日早く寝るだけで頭痛が治った。やっぱり睡眠は偉大なんだなと実感した。それでもメンタル的な意味で、この時間こそ起きていたいと思うのは変わらない。
遠くに見える繁華街はこの瞬間も機能している。寝ぼけ眼。視界がぼやけて、個々の光が重なり合う。曖昧になる境目が、乱反射する眩しさが、とても美しい。
「……寒」
夜はまだ肌寒い。日中も日によって気温の変動が激しいから、何を着ればいいか毎日悩んでいる。
部屋に戻ろうと振り向くと、立ち尽くす人影。
「ゔわっ」
「声デカ」
「どう考えても反則じゃん……。起きたなら声かけてよ」
「いや、邪魔しちゃ悪いかと思って」
「そんなことないけど。あ、煙草いいの?」
言い終わるより前に引かれた手。躓きそうになって、思わず体を委ねる形になった。
「……今は、いい」
午前3時。ドアが閉まる音が、とても大きく響いた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます