第2話



 微睡。

 すぐには目が開かない。時計の針は3時前を指していた。住宅が多いのもあってかこの時間は比較的静かで、現に隣からの寝息がちゃんと聞こえている。体に残る疲労感を取り払うために、そっとベッドから出た。



 規則正しい生活リズムを示す場合、今のこの時間は「睡眠中」として振り分けられる。仕事の繁忙期に睡眠そっちのけで自由時間を優先していたら案の定体調を崩したし、1日早く寝るだけで頭痛が治った。やっぱり睡眠は偉大なんだなと実感した。それでもメンタル的な意味で、この時間こそ起きていたいと思うのは変わらない。


 遠くに見える繁華街はこの瞬間も機能している。寝ぼけ眼。視界がぼやけて、個々の光が重なり合う。曖昧になる境目が、乱反射する眩しさが、とても美しい。



「……寒」


 夜はまだ肌寒い。日中も日によって気温の変動が激しいから、何を着ればいいか毎日悩んでいる。

 部屋に戻ろうと振り向くと、立ち尽くす人影。


「ゔわっ」

「声デカ」

「どう考えても反則じゃん……。起きたなら声かけてよ」

「いや、邪魔しちゃ悪いかと思って」

「そんなことないけど。あ、煙草いいの?」


 言い終わるより前に引かれた手。躓きそうになって、思わず体を委ねる形になった。


「……今は、いい」


 午前3時。ドアが閉まる音が、とても大きく響いた気がした。





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