04.14:再戦準備
校長室に入ると、アゲハがいた。
アゲハは机を前に座り、その上に置く携帯をじっと眺めている。
「おはようございます」
「おはよう。そこに座っていてくださシ」
目線の先には、机を挟むように置かれた灰色の魔族革ソファがある。
私はそれに座り、腰を沈めた。
「アナタとは始めて話すネ。クロからは大親友と聞いているけど……ホントはどうだか」
「ここの校長になられたんですか?」
「違うシ。それより用件を手短に話しますネ。誘拐の件は、クロが校長を懲役四年にして刑務所へ送ったシ。そして決闘に勝利したクロは、アタシをどうしても殺したいらしくて再選を申し込んできたネ」
アゲハは慣れない手つきで、携帯を指先でゆっくりと突きながら話す。
「正直、決闘に負けるとは思っていなかったシ。このまま殺される理由もハッキリ分からないまま、決闘したくないネ。……何か理由知らないシ?」
「気に入らない人の命はどうでもいいって感じだけど、命を奪いたいとなると理由は分からないです」
「そう、詳しく聞いてくれると嬉しいネ。それとこれ」
アゲハは机に置いていた携帯を手に取って立ち上がり、ソファの前まで来て私に携帯を手渡す。
画面にはPDF形式の取扱説明書が見える。
「何ですかこれ?」
「魔導ドローンの取り扱い説明書だシ。審判にはクロがアンタを任命したから、操作覚えといてネ」
「それより、あの時クロと何を話してたんですか?」
そこにクロがアゲハを殺したいと言う理由があるように思える。
今度こそクロを止めなくては、本当に友達作りどころではない。
「んー……。国家戦力を辞めろと言われたから辞めないと答えたシ。あと妙な質問もされたネ。魔族についてどう思ってるかって。当然、森から出てくるなり町を襲う害獣だと答えたシ。あんなの、森に守られてるだけの存在だネ」
確かに妙な質問だ。
魔族についてどう思ってるかなんて、ほとんどの人はそういう感覚だろう。
かわいそう、と思う人がたまにいるくらいだ。
「ま、分かったらメールで知らせてくれるシ? 今度はアタシが勝つに決まってるけどネ」
「勝算はあるんですか?」
「アンチマジックの効果時間延長をできる魔封じの剣。それをアナタの祖母の武器庫から借りてるシ。魔法の使えないアイツに負けるわけがないネ。これアイツに話してもいいシ」
自信満々だが、大丈夫なのだろうか。
本当にクロを倒してしまいそうな、ピリピリとする気迫を感じはするもののクロはアンチマジックの対策を考えてそうだし。
「じゃあ頼むネ。その携帯は貸すシ」
「はい」
取扱説明書には色々なことが書かれている。
……5/293。
ふと右上のページ数を見るとそう表示されていた。
何でこんなに多いんだ。
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