04.11:解放

 映画が終わり、開かれた扉の先は竜炎学園のグラウンドへと通じていた。

 体中に包帯を巻いた鎧の少女とクロは向かい合い、何やら話し込んでいる。

 校長はいないみたいだ。


「ではまた、そのうちお会いしましょう」

「焼壁さん、お世話になりました」


 焼壁さんはにっこりと微笑むと、扉を閉じる。

 そして、扉はその場から消えてしまう。

 振り向くと、クロが駆け寄ってきていた。


「尾長。怪我はない? 穢されたりしなかった?」

「うん、大丈夫」

「良かった。はい、とりあえず携帯渡しとくわ」


 クロは私の携帯をズボンのポケットから取り出すと、手渡してくる。

 今日は四月十一日。

 ……明日は月曜日で学校がある、全然休めた気分しなくて何だか焦燥感を感じる。

 クロは胸をなで下ろす。

 そこまで心配してもらうような関係ではないのに。


「今ね、国家戦力最年少のアゲハと話してるの。尾長も話しときなさい」

「私はいいよ」


 遠くにいるアゲハが、こちらを向いて手を振った。

 お辞儀すると、アゲハはお辞儀を返した。

 

「……にしても何その服。似合ってるけどさ、何だか……ねえ」

「目が覚めたら着てて。それより遊園地はどうだった?」

「特に問題なかったから気にしないで。明日は学校だし、尾長は帰って準備しなさい」


 私が頷くと、クロはアゲハの元へと戻っていった。

 ……ここにいても仕方ないし、家に戻るか。

 おばあにこれ以上は心配かけたくないし。




 私は帰路に着き、家の玄関を開ける。

 すると、おばあが玄関先に杖を持って待ち構えていた。


「きいろ、おかえり。アンタ、遅かったなぁ〜」

「ただいま」


 私が誘拐されてた間のことをクロは何も話してくれなかったけど、明日学校でレアール辺りに聞けばいいか。


「何ねその服。気に入っとった服はどうしたんね」

「失くしちゃった」

「あらら。材料を買ってきたら、また作ってやるさね」

「大丈夫。取り戻すから」


 ……服の行方も探さないとなあ。

 

 ——翌朝。

 登校中に再びクロから挨拶される。

 挨拶を返すと、クロは歩きながら欠伸した。

 私はその横についていく。


「眠そうだね」

「ええ、色々と準備していてね」


 クロは自身の髪を指先で弄りながら答える。

 クロの家へ泊まった時に言っていた、アレだろうか。


「尾長。明日はワタクシの誕生日なの」

「おお! おめでとう」

「そこで明日は学校を休みにしてパーティー開くわよ」

「その準備をしてたの?」

「ええ、シバも強制参加よ。ハクトは呼びたくないけど、そうね。アナタなら呼ぶ? ワタクシの立場も考えつつ答えて頂戴」


 クロは少し眠たそうに呟きながらも、難しい内容の質問をする。

 クラスで一緒になったんだから、全員呼ぶべきだと思う。

 でも私がクロの立場なら……うーん。

 偶然にも、誘拐するのに都合がいいタイミングを作って友達を誘拐されたのはショックだけど、無事取り戻せたし。

 自分だって好き勝手してるんだから、これくらいは許してもいいような。

 でも、ハクトがこわい。

 受け取った飲み物を安易に口にした私が悪いけど、好きなフリをしてあんな風に騙すなんて。


「答えが出たら今日中に聞かせてね」

「……立場って、クロがハクトのことをどう思ってるかだよね?」

「え? 立場は立場よ」

「国家戦力とかそっちのこと?」

「ちょっと違うわね。まあ自分で考えなさい」


 授業にでも集中して気を逸らしたい気分なのに、なかなか酷な言い方をなさる。

 ……でもちゃんと考えないと。

 これは私の目標にも関わることなんだ。

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