国家戦力同士の決闘

04.09:食堂にて

 魔法の授業が終わり、昼休みになる。

 私たちは教室棟から出て、敷地の少し奥にある学食へと入る。

 テキトーな席の奥から私、ブラッド、レアールと順に席へ着く。

 厨房では上の方にレールがあって、そこをロボットアームが行き来し料理を作ってるみたいだ。

 学食の献立は日替わりみたいで、みんな大皿に盛られたカレーライスを食べてる。

 それにしても広い。

 この学校は二クラス三学年で、総勢百二十人くらいのはずだけど席は倍ぐらいある。

 さらに二階もある。

 先生とかも利用するのだろうか。

 レアールが席を立ち、赤い福神漬けを私のカレーに放り込んでいく。


「レアール、これ食べられないの?」


 レアールは頷き、ブラッドの隣に戻る。

 ブラッドは福神漬けをスプーンで掬い、じっと見つめる。


「ブラッドも苦手だったり?」

「え? いや、そうですが。……アレルギーでもないのに好き嫌いは、よくありませんので」


 私はブラッドのカレーから福神漬けを奪う。

 ブラッドは冷ややかな目を私に送る。


「尾長さん。……ありがたいのですが行儀悪いですよ」

「ごめんなさい」


「あっ尾長様。ここ空いてる?」


 ラドとハクトと名垂と、トニックだっけ。

 ラドに近い短髪で、針金のような目をした男子だ。

 みんなお盆にカレーライスの皿を乗せて持っている。


「いいよ」

「おお、尾長様は福神漬け好きなの? われらのも差し上げよう」


 続々と福神漬けがカレーに放り込まれる。

 ……私のだけ福神漬けカレーというような見た目になった。

 みんな福神漬け嫌いなのだろうか。


「……なんかイジメみたいになったな。ごめんな」

「いいよ。それよりみんな、サモンウェポンってどこで覚えたの?」

「ああ、みんなブラッドちゃんを真似たんじゃないかな? あれカッコよかったし、使うとブラッドちゃんとは違う形の武器出て面白かったしな」


 ブラッドは何だか少し誇らしそうにラドを見ながらカレーを食べてる。

 魔法を使う際の想像が、ブラッドのしたことに引っ張られてしまったということだろう。


「レアールちゃんも凄かったよな、ウェポンブレイクなんて。われも想像したけどできなかったぞ」


 ニヤニヤしながら話すトニックに向かって、レアールは両手の平を開いて見せる。


「あと百個、使える魔法ある」

「スゴいな。われはまだサモンウェポンとちょっと涼しい風が出るアイスウィンドしか使えないぞ」

「うん。精進なさい」


 割とノリノリで話すレアールにラドとトニックの顔が緩む。

 デレデレしてるなあ……。

 レアールは男子からモテモテだ。


「なあ、明日の土曜休みじゃんか。クラスの何人かで遊びに行かないか?」

「すみません、ワタシは習い事がありますので」

「……今回はパス」


 二人ともトニックの誘いに引いている。

 私は家でおばあとゆっくり過ごしたいけど、仲良くなるチャンスは逃したくない。


「遊びに行きたい。どこ行くの?」

「山のほうにある遊園地だよ。竜炎パーク。ハルと獣人たち三人に、火売も来るってさ」


 ボクは病院だから行けないけどね、と名垂は目を逸らして続ける。


「クロを誘ってもいい? シバも」

「え……クロさんか〜」


 ラドは思い悩む様子で返事を渋る。

 やっぱり、クロはちょっと嫌われてるのかな。


「いいよ。あの人、何だかんだクラスのこと考えてるみたいだし」

「じゃあ誘うね」


 ブラッドがラドをジッと見つめ、口の中のものを飲み込む。


「次に誘う時は最低でも一週間前にお願いします。そうでないと習い事を休めないので」

「そうだなー、分かった」


 話が終わると、四人は黙ってカレーを食べ進めてく。

 ハクト、何だか汗をかいてるみたいだ。


「ハクトくんは辛いの苦手?」


 言いながらハクトに水の入ったプラスチックのコップを差し出すと、ハクトはこちらを見て顔を真っ赤にする。


「べ、ベツにいぃ〜? これって甘口だろうしさあ? もっと辛くても僕平気だなあ〜」

「でもすごく辛そうだよ」


 ハクトはカレーを一気に食べるとコップを手に取り、水を飲み干す。


「まあありがたく飲んでおくことにしたよ。ありがとねえ」


 ハクトはフラフラと立ち上がった。

 ラドとトニックがハクトを抱える。


「ごちそうさま。それじゃ、土曜日の朝十時にグラウンドに集合で頼む。半まで待つから、二人も予定が合うようになったら来てくれ」

「お誘いありがとうね」


 四人は空のお皿を持ってテーブルから去る。


「尾長さん。ハクトさんの様子見ました?」

「調子悪そうだったね」

「いえ、そうではなく。……まあいいです」


 真面目に話すブラッドの隣で、レアールは腕を組み静かに頷いている。

 むう、なんなのか分からないけど隠すほどのことなのだろうか。

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