04.09:座学(魔法基礎)

 教室へ戻り、魔導着を後ろの棚に入れて席に着く。

 次は教科書を使った魔法の授業だ。

 クロに怒ってばかりではいられない、夢を叶えるために力を付けなくては。

 

「尾長ちゃん。……」


 突然、耳元で声がする。

 見ると、小さい子がいた。

 茶髪でクセのある髪型だ。

 その子はキョトンとして、金色の瞳を私に向ける。


「レアールちゃんだっけ、どうしたの?」

「……何でもないよ」


 う…うん? レアールちゃんはユラユラと自分の席へと向かう。

 このクラス、よく分かんない子が多い。


「みんな席に着け。魔法の授業を始める」


 漆原が教室に入ってきて、壇上に立つ。

 今回、クロは壇上の方に上がらないらしい。

 チャイムが鳴る。

 鳴り終えると、漆原が黒板に板書をする。


「さっきの実技で尾長に言ったことを板書しておく。落ち着いて想像するのが魔法の基礎だ。それじゃ今からグループをこちらで決める。自己紹介を終えたら魔法を使った感想を話し合い、紙に書いて提出してもらう」

「めんどくさいわね。そうする目的は何」

「魔法の使い方をしっかり覚えてもらうためだ。何ならお前も授業の準備やるか?」


 淡々と質問する漆原に、クロはつまらなさそうな声色で「そんな時間ないわよ」と答える。


「それじゃ、竜炎、蜜木、センハク、ソリオ、バツの五人。ハル、火売、ピアーズ、モクスイ、アスムの五人。ラド、ハクト、尾長、レアール、名垂の五人。レオ、トニック、ブラッド、甘の四人でグループを作れ」


 席と机を動かして並べ、集まってグループを作る。

 私の向かいには短髪で黒髪のラドくん、その右隣に長髪で赤髪のハクトくんが座った。

 ラドくんは……随分大人っぽい顔付きだけど髪は若々しい。

 ハクトくんは私から目を逸らしてる。

 ラドの左隣には金髪の名垂くんが座ってる。

 でもこんな金髪の子いたっけ……他己紹介はブラッドたちで最後だったはずなのに、見なかった気がするような。

 そして三人とも、私より少し背が高い。


「尾長さま、われの名前分かる?」

「ラドくん」

「やっぱ覚えてくれてるんだな。コイツは誰か分かる?」


 ラドは嬉しそうに笑いながら私から見て右隣のこの肩を叩く。

 他己紹介見て覚えただけなのに、ちょっと馴れ馴れしい気がする。


「ハクトくん」


 ハクトは私から目を背けたまま、徐々に顔を赤くした。

 ……もしかして好かれているのだろうか。


「よかったなハクト。こっちはナダレな」

「名垂くんって他己紹介してた?」

「いや……グループ分けで余ったんだけど、勝手に進められて結局やってない。その後のも隠れて終わるの待ってた」


 なぜか少しホッとする。

 それじゃあ、レクリエーションで死んじゃったのは二人なんだ。


 ……名垂の顔をよく見ると、目元に隈ができてる。

 クロの存在がストレスでそうなったのだろうか。


「名垂くん。クロが悪さするの、止められなくてごめんね。寝不足になっちゃうよね」

「気にしなくていいよ。昨日は隠れてる間に転移門が閉じてさ、何とか帰ってきたんだ。やっぱ疲れてるように見えるか、アハハ……。それでそっちの可愛い小学生は? 名前なんだっけ」


 私の右隣に三人の視線が向く。

 そちらに注目すると、レアールは少しもじもじしながら上目遣いする。


「レアールだよ。……中学生」

「レアールちゃん。われ思うんだけど、猫耳付けたら似合うんじゃないか?」


 ラドはそう言いながらハクトに揶揄うような笑みをむけていると、ハクトから脇腹を肘で小突かれた。

 ラドは苦しそうに机へ顔を伏せる。

 二人以外はどういうことか分かってない感じだ。

 私の耳を外せたらすぐに試せるけど、二人を見るに、この内容の話を続ける雰囲気でもなさそう。


「そういうのやめなよ。……それじゃ、始めようか。僕から時計回りね。魔法使った感想は、魔法で武器を作れるっていうのが新鮮だった……かな。それじゃ、話し合いの内容は僕がまとめるよ」


 ——それからはみんなで順番に感想を言い、話し合いというよりはお喋りをした。

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