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さらに言えば私は、あの子が入っていった…
森そのもの、についてもかなり気になっている。
村に住んでいた博物学者さんから聞いたんだけど…
この森、「魔女の森」といって、その名の通り魔女が支配する森。
その魔女について、彼は私にとても興味深いことを教えてくれた。
───それは、一篇の詩。
…そう、あんた方もご存知の、魔女の詩だ。
魔女がもともと人間、それも偉大な魔法使いだった───
そこに彼女は、強く興味を持ったようである。
そして、彼女は再び森の入り口までやって来たようだ。
最初に会った村人が教えてくれた。
今、何故か魔女の力が日に日に弱まっている。
それ故か森の魔物たちが凶暴になっているよ、と。
しかし、私はもう決めている。
どのみち、私には将来なんて無いの。
───二人目の物好きが、魔物ひそめく森へと足を踏み入れる。
森に入って、しばらく歩いていた。
しかし私は今、背筋凍って立ちすくんでいる。
眼前に、この世のモノとは思えないような地獄絵図が広がっているから。
とてつもなく大きく、カラスのような黒い鳥が、
血みどろになって死んでいる。
そして、それに群がる大量の…まるで大蛇のように、巨大なムカデ。
一心不乱に死体を貪るムカデたち。全部で4体である。
そのうちの一体が、立ち竦んでいる人間の存在に気付いたようだ。
音もなく蛇行しつつ、その無数の脚で第二の獲物を狩りにやって来る。
「…っ」
うぇ、気持ち悪い…
そう思いつつ、私は持っているハンドバッグから本を一冊取り出した。
大ムカデとの距離は、既に3mちょっと。
「…Welcome to wonderland,失速しなさい」
刹那、大ムカデの動きが止まった。
いや、止まってはいない。どうやら遅くなったようだ。
彼女はそして、手に持っている本を頭上に浮かせた。
かと思えば、みるみるうちに本が巨大化してゆくではないか。
そのまま、ムカデの真上へと本を移動させる。
そして───
「…死んで」
グシャッ、と音。
硬い殻に覆われた生き物が潰れた時の、何とも不快な音である。
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