5
…不思議なことに、何時の間にか、彼女には傷一つなくなっている。
脇腹に与えられたはずの致命傷も、跡形もなく。
服が血に塗れているにも関らず、傷一つ、ない。
私は、一撃受け倒れたあの瞬間、「自己再生」を行った。
細胞の分裂速度を幾万倍にも加速させ、傷口を一瞬にして塞ぐ。
私が、最も得意とする魔法だ。
…とはいっても、これしか使えないけど。
この世界において、魔法が使えること自体はそれほど珍しくない。
とはいえ、魔法使い達にも、
魔法の得意分野、不得意分野、というものがある。
彼女の場合、使える魔法は自己再生魔法だけ。
まあしかし、結構役に立つ魔法のようだ。
少女はまた歩き出した。
何しろ、先は長いのである。
「…ふうん、それでこの村はこんなにひっそりしてるんですね」
場所は戻って、例の村。
…珍しいったらありゃしない、
今日二人目の訪問者が村人と話している。
「ま、そういうこった…お嬢ちゃんも気を付けなよ」
「ありがとうございます」
お嬢ちゃんと呼ばれた、金髪、碧い目の…若い女。
彼女の名は、アリス。
「それからちょっと…お聞きしたいんですが」
「んん、なんだい?」
「この村に、ハンマーを背負えるくらい力持ちの…小さな女の子はいますか?」
村人は少し考え、言った。
「居ないと思うな、俺の覚えてる限りじゃ」
「そうですか…それじゃあどうも、失礼しました」
「おうよ」
彼女は、いわばあてのない旅人である。
家もない。理由は…そのうち知れるだろう。
…ところでこの女、一体どうしたというのだろう。
村中まわって、同じことを訊き続けている。
が、結局、村人は誰もそんな女の子を知ってはいなかった。
彼女は諦め、今度は森へと向かうようだ。
そうか、いないのかぁ~…
すぐそばの森だったから、絶対この村の子だと思ったんだけどな…
私はさっき、面白いものを見た。
簡単に言えば、小さな女の子がハンマー担いで森へ入っていくところ。
私より頭3つぶんは小さいんじゃないかな、それくらいの女の子が。
面白いというか、怪しいというか…心配というか。
でも、そうじゃないなら一体誰なんだろう。
…ちょっと気になってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます