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…不思議なことに、何時の間にか、彼女には傷一つなくなっている。

脇腹に与えられたはずの致命傷も、跡形もなく。

服が血に塗れているにも関らず、傷一つ、ない。




私は、一撃受け倒れたあの瞬間、「自己再生」を行った。

細胞の分裂速度を幾万倍にも加速させ、傷口を一瞬にして塞ぐ。

私が、最も得意とする魔法だ。

…とはいっても、これしか使えないけど。




この世界において、魔法が使えること自体はそれほど珍しくない。

とはいえ、魔法使い達にも、

魔法の得意分野、不得意分野、というものがある。


彼女の場合、使える魔法は自己再生魔法だけ。

まあしかし、結構役に立つ魔法のようだ。


少女はまた歩き出した。

何しろ、先は長いのである。






「…ふうん、それでこの村はこんなにひっそりしてるんですね」


場所は戻って、例の村。

…珍しいったらありゃしない、

今日二人目の訪問者が村人と話している。


「ま、そういうこった…お嬢ちゃんも気を付けなよ」

「ありがとうございます」


お嬢ちゃんと呼ばれた、金髪、碧い目の…若い女。

彼女の名は、アリス。


「それからちょっと…お聞きしたいんですが」

「んん、なんだい?」

「この村に、ハンマーを背負えるくらい力持ちの…小さな女の子はいますか?」


村人は少し考え、言った。

「居ないと思うな、俺の覚えてる限りじゃ」

「そうですか…それじゃあどうも、失礼しました」

「おうよ」


彼女は、いわばあてのない旅人である。

家もない。理由は…そのうち知れるだろう。


…ところでこの女、一体どうしたというのだろう。

村中まわって、同じことを訊き続けている。

が、結局、村人は誰もそんな女の子を知ってはいなかった。

彼女は諦め、今度は森へと向かうようだ。




そうか、いないのかぁ~…

すぐそばの森だったから、絶対この村の子だと思ったんだけどな…


私はさっき、面白いものを見た。

簡単に言えば、小さな女の子がハンマー担いで森へ入っていくところ。

私より頭3つぶんは小さいんじゃないかな、それくらいの女の子が。

面白いというか、怪しいというか…心配というか。


でも、そうじゃないなら一体誰なんだろう。

…ちょっと気になってきた。

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