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銀色に鋭く光る爪をガチャガチャ言わせながら、魔物は近付いてくる。
私はハンマーの柄を、両手でぐっと握って、構える。
そして、次の瞬間には…
思いっ切り地を蹴り急接近して、横にひと振り!
ガキン、と鈍い音。
まるで金属同士がぶつかるかのような音───
私のハンマーは魔物の爪に受け止められていた。
「なっ…」
カラスの魔物は白い目剥いて私をキッと睨む。
そしてすかさず、空いている方の爪を振りかざした。
させるか、私はハンマーを捌いて振り下ろされる爪を受け止める。
ガキン、また冷たい音。私は一旦跳び退る。
さて、どうすべきかな?
…しかし、頭を回転させる暇もない。奴は私に攻撃を仕掛ける。
私はそれを防ぐ。
防いで、防いで…
ついに、冷たい爪が、私の腕を掠った。
ジュッ、と鋭利な痛み、血が迸る。凄まじい切れ味だ。
そしてその一撃で体勢を崩した私の脇腹が───
ざっくり、切り裂かれた。
爆裂するかのごとく、血が飛び散る。
少女は、倒れ込んだ。そのまま全く動かない。
どくんどくん、止まらない血が水たまりになってゆく。
魔物はゆっくり、近付いてくる。
彼女は死んだのであろうか?
ゆっくり、ゆっくり近付いてくる。
溢れる血の勢いが、どんどん弱くなっていく。
…そうして、完全に止まった。
魔物はどうやらこの場で少女を喰ってしまうつもりらしい。
爪を、ガチャガチャ言わせ。
少女を今、切り裂かんとする。
ああ、もう、どうしようも…
…どうしようもなく、愚か。
私は瞬時に飛び起き、勢いそのままに跳躍する。
そして先程からちゃんと握っていたハンマーで、
無防備な魔物の頭部に一撃した。
グチャッ、ともバキッ、とも違う…なんとも形容し難い音がした。
頭蓋骨が粉々になる音らしい。
カラスの魔物は、そのままばたりと倒れて動かない。
脳天からは血が滲み始めている。
「油断しちゃったね…おバカさん!」
彼女は、何事も無かったかのように、立っている。
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