4

銀色に鋭く光る爪をガチャガチャ言わせながら、魔物は近付いてくる。

私はハンマーの柄を、両手でぐっと握って、構える。

そして、次の瞬間には…

思いっ切り地を蹴り急接近して、横にひと振り!


ガキン、と鈍い音。

まるで金属同士がぶつかるかのような音───

私のハンマーは魔物の爪に受け止められていた。


「なっ…」


カラスの魔物は白い目剥いて私をキッと睨む。

そしてすかさず、空いている方の爪を振りかざした。

させるか、私はハンマーを捌いて振り下ろされる爪を受け止める。


ガキン、また冷たい音。私は一旦跳び退る。

さて、どうすべきかな?


…しかし、頭を回転させる暇もない。奴は私に攻撃を仕掛ける。

私はそれを防ぐ。

防いで、防いで…


ついに、冷たい爪が、私の腕を掠った。

ジュッ、と鋭利な痛み、血が迸る。凄まじい切れ味だ。


そしてその一撃で体勢を崩した私の脇腹が───


ざっくり、切り裂かれた。




爆裂するかのごとく、血が飛び散る。

少女は、倒れ込んだ。そのまま全く動かない。

どくんどくん、止まらない血が水たまりになってゆく。


魔物はゆっくり、近付いてくる。

彼女は死んだのであろうか?

ゆっくり、ゆっくり近付いてくる。


溢れる血の勢いが、どんどん弱くなっていく。

…そうして、完全に止まった。


魔物はどうやらこの場で少女を喰ってしまうつもりらしい。

爪を、ガチャガチャ言わせ。

少女を今、切り裂かんとする。

ああ、もう、どうしようも…




…どうしようもなく、愚か。


私は瞬時に飛び起き、勢いそのままに跳躍する。

そして先程からちゃんと握っていたハンマーで、

無防備な魔物の頭部に一撃した。




グチャッ、ともバキッ、とも違う…なんとも形容し難い音がした。

頭蓋骨が粉々になる音らしい。

カラスの魔物は、そのままばたりと倒れて動かない。

脳天からは血が滲み始めている。


「油断しちゃったね…おバカさん!」


彼女は、何事も無かったかのように、立っている。

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