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───威力を見ればわかるように、
彼女のハンマーはずっしり重い鉄製である。
では何故そんなものを軽々振り回せるか?
理由は簡単。
このハンマーは彼女にとってだけ、鳥の羽根のように軽いからだ。
とは言っても納得して貰えぬだろう。
しかし仕様が無い、事実なのである。
彼女が持つ時だけハンマーは驚くほど軽くなる、
そう説明するしか無いのだ。
因みに私はこの奇妙な現象が起る理由を知っている。
だからといってあんた方に教えることもないが。
少女は森を道なりに進む。
しかし突然、立ち止まった。あるものを目にしたから。
それは人間の屍である。
と言っても、ただの屍では無い。
…端的に言えば、それはそれは酷い有様の屍。
太めの木の枝に突き刺され、
血でぐちゃぐちゃになった体をだらりと垂れている。
刺されてからそれほど時間は経っていないようだ。
まだぽたり、ぽたり、と鮮血が滴っているから。
彼女は気付いた。
時間が経っていない。つまり、近くにいる。
…いや、気付くまでもなかった。
ガサガサ、彼女の後ろで音がしたのだ。
振り向くと、そこには。
───そこに居たのは、化物だった。
とはいえ、先程私が相手にしたものとは格が違うらしい。
その化物は、カラスにとても似ている。
しかし羽がない。
生えているのは鋭い爪のついた前足と、屈強な後足。
とはいえ、これだけでは普通の化物だ。
格が違う、と言ったのにはちゃんと理由がある。
それは大きさ。
私の背丈の4倍はあろうかという、その大きさだ。
化物は彼女を眺める。品定めであろうか。
まあ、その結果導き出される答えは分かり切っている。
先程も言った通り肉の柔らかそうな少女なのだから。
そういえばあんた方の中に…
はやにえを作るのはカラスじゃなくモズだろ、と思う奴がいるやも知れぬ。
でも言っちゃいけない。この魔物、それを言われると怒り出す。
…そうして、カラスの魔物が下した判断はもちろん、こうである。
美味そうだ、喰ってやろう───。
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