3

───威力を見ればわかるように、

彼女のハンマーはずっしり重い鉄製である。

では何故そんなものを軽々振り回せるか?

理由は簡単。

このハンマーは彼女にとってだけ、鳥の羽根のように軽いからだ。


とは言っても納得して貰えぬだろう。

しかし仕様が無い、事実なのである。

彼女が持つ時だけハンマーは驚くほど軽くなる、

そう説明するしか無いのだ。


因みに私はこの奇妙な現象が起る理由を知っている。

だからといってあんた方に教えることもないが。




少女は森を道なりに進む。

しかし突然、立ち止まった。あるものを目にしたから。


それは人間の屍である。

と言っても、ただの屍では無い。

…端的に言えば、それはそれは酷い有様の屍。

太めの木の枝に突き刺され、

血でぐちゃぐちゃになった体をだらりと垂れている。

刺されてからそれほど時間は経っていないようだ。

まだぽたり、ぽたり、と鮮血が滴っているから。


彼女は気付いた。

時間が経っていない。つまり、近くにいる。

…いや、気付くまでもなかった。

ガサガサ、彼女の後ろで音がしたのだ。

振り向くと、そこには。




───そこに居たのは、化物だった。

とはいえ、先程私が相手にしたものとは格が違うらしい。

その化物は、カラスにとても似ている。

しかし羽がない。

生えているのは鋭い爪のついた前足と、屈強な後足。


とはいえ、これだけでは普通の化物だ。

格が違う、と言ったのにはちゃんと理由がある。

それは大きさ。

私の背丈の4倍はあろうかという、その大きさだ。




化物は彼女を眺める。品定めであろうか。

まあ、その結果導き出される答えは分かり切っている。

先程も言った通り肉の柔らかそうな少女なのだから。


そういえばあんた方の中に…

はやにえを作るのはカラスじゃなくモズだろ、と思う奴がいるやも知れぬ。

でも言っちゃいけない。この魔物、それを言われると怒り出す。


…そうして、カラスの魔物が下した判断はもちろん、こうである。


美味そうだ、喰ってやろう───。

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