第23話:リアルタイム執筆を開始しました⑮

「はぁ〜。あと少しで乗り遅れるところだったねぇ」

「ごめん。僕が変なことに時間をかけちゃってさ」

「迷惑を掛けるのはお互い様だよ」


 快速エアポートに乗車した僕たちは、千歳駅へと向かっているのだ。

 北海道と聞けば、札幌や函館、小樽などが観光所に挙がるかもしれない。

 だが、僕には、千歳だった。

 星座橋㮈月が育った場所。それだけで、僕が行くには十分の地である。


「神様は不公平だよね」


 僕の隣に座る星座橋㮈月は、突然そんなことを言い出した。

 同意を求めるような口調ではない。ただ思いついたから口にした。

 そんな口ぶりに、僕はどうするべきか迷ってしまう。

 だが、黙り込む僕の代わりに、彼女は続けて。


「生きたい人間には死を与え、死にたい人間には生を与えるんだからさ。残酷な神様だ」


 明日も生きたいと願いながら、今日死んでしまう人もいれば。

 明日も死にたいと願いながら、今日も生きている人もいる。

 もしも、そんな人たちの寿命を取り替えっこできるとしたら。

 それは、大変素晴らしいことなのではないかと思ってしまう。


「人間って何のために生きてると思う?」


 星座橋捺月は哲学的な質問がお好きなようだ。

 大変興味深い質問対象だが、相談者が悪い。

 平凡な男子高校生。

 それも、死にたがりな出来が悪い学生に聞いたとしても、ロクな解答が返ってくるはずがないのだ。


「正解なんてこの質問にはないんだよ。だから、気楽に答えなよ」


 正解がない質問。

 僕はこの手の問題が嫌いだ。

 小学生の頃から、この手の道徳や思考力を問う勉強は苦手だった。

 自分の心を見透かされる気分になるから。

 正解がないと言っても、一般的な解答とも言うべき最適解が存在していて。

 その解答に近い答えを導き出さない限り、異端者扱いされてしまうから。


「人間が生きるのに理由なんてない。理由なんて存在しない」


 そもそもな話なんだけど。

 僕はそう呟いてから、続きの解答を述べる。


「人間は生きてるから生きてるだけ。つまり、惰性で生きてるだけだ」

「つまり?」

「生きる意味なんてないんだよ、人間には」


 僕は本気でそう思っていた。

 だが、今日初めて気付いた。


「ただ、今なら分かるよ。僕は——」


 この世界に生きる意味なんてない。

 人間が生きる理由も死ぬ理由もない。

 ただ、惰性で生きているだけ。

 そう思っていたのに——。


「——星座橋㮈月と死ぬために生まれてきたんだって」


 ガタンゴトン。

 電車の揺れる音が響き渡る。

 車両には、僕たち以外の客は誰もいない。

 この世界には僕たち二人だけしかいないのではないか。

 そんな錯覚がある場所で、彼女は僕に問う。


「私と死ぬために生まれてきて幸せだった?」

「あぁ。僕は幸せだよ」


 自分が生まれてきた意味を知った。

 今日その夢をやり遂げることができる。

 嘘偽りない笑顔を浮かべて、僕は答えた。


「君が満足して死ねるのなら」


———————————————

作家から


 徹夜して終わらせます(多分)

 明日明後日はまた忙しくなるので……。

 徹夜してでも、今日中に終わらせたいです。

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