第15話:リアルタイム執筆が始まりました⑦
「私、思うんだよね。どんな美貌を持っていたとしても、中身は同じなんだって。人間なんてさ、表面の側が違うだけど、その作りは全部一緒じゃない?」
身体の構造上はそうかもしれない。
全員が同じ作りでできている。
ただ、表面上に見えている側が違うだけで。
「で、何を言いたいわけ?」
「結論を急ぐ男の子は嫌われるよ」
星座橋捺月は呆れた声で言う。
その後、焼き立ての牛タンを食べ、強い口調で。
「私の代わりぐらいはいくらでもいるって話だよ」
「星座橋㮈月の代わりはそう見つからないと思うけどね」
「その言葉は十年後、二十年後にも言ってくれよ」
「……もう僕は居ないよ。僕の人生は今日までなんだから」
ブラックジョークが過ぎたようだ。
星座橋捺月は困った表情を浮かべている。
ともあれ、平静を取り戻し、「こほん」と咳払いしてから。
「アイドルの寿命は短いんだよ。どんなに長くても二十代後半まで」
何を話し出すのか。
そう思った頃には、星座橋㮈月のアイドル論が語られていた。
僕は星座橋㮈月が好きなだけで、他のアイドルには全く興味がない。
「これ以上を過ぎると、アイドルとして生きるのは不可能になる」
確かに。
三十代のアイドルを見たことがない。
いや、一応男性アイドルなら居るのか。
まぁ、でも女性アイドルとは話が別だよな。
「でもその一瞬の輝きがいいんじゃないかな」
柄にもなく、僕は言う。
「線香花火みたいに短いと言ったら誇張表現かもしれないけどさ」
何度も失態を繰り返してきたが、今回だけは勝手が違う。
自分でも上手く言えた感があるな。自画自賛気分だ。
「私ね、老けたくないんだよね」
星座橋㮈月は神妙そうな表情で呟いた。
「老いるのが怖いんだよ。老いてしまったら、誰からも相手にされないんじゃないかなって。私の価値はどこにあるんだろうってさ」
星座橋㮈月が死にたい理由が分かった気がした。
彼女は老いてしまった自分が怖いんだ。
アイドルとして生き続ける間は、多くの人々にチヤホヤされるだろう。
でも、いつの日か必ず訪れる終焉——それが分かるから、怖いのだろう。
「それにさ、私もいつまでも美しいわけじゃないからさ」
「美しいという感覚は人それぞれ違うと思うけどな」
「それでも歳を重ねる度に、人間は醜くなるよ」
「それは外面だけの話だろ? 内面は違うかもしれないよ」
「と言っても、キミは私の外面が好きなだけでしょ?」
僕は星座橋捺月の内面を知らない。
この場で内面が好きだなんて言ったら、顰蹙ものだろう。
僕と彼女が出会ってから、まだ半日も経っていないのだから。
「それにね、いいことを教えてあげるよ」
星座橋㮈月は無邪気に笑って。
「そもそもな話。星座橋捺月なんて人間はこの世には存在しないんだよ。キミがテレビや動画サイトで見てきた清純清楚なアイドルはどこにもいないんだよ?」
「……なら、君は誰なのさ」
「星座話捺月は、ただ私が作った理想のアイドル像だよ。誰からも愛されるように、誰にも相手にされないバカな私が必死に考えた虚構の存在。どう? 上手に演じきれてたと思わない?」
だからさ、と深い溜め息を吐きながら。
「だからさ、キミも目を覚ましたほうがいいよ」
嫌な現実を突きつけてくる。
手品師がネタバラシするぐらい、やっちゃダメなことをしているな。
と言えども、僕は本性の彼女も愛しているのでいいけれども。
「まぁ、覚ましたところで、今からキミは私と地獄へ行くんだけどね」
「……地獄か。でも二人で一緒に居れば、そこは天国みたいだけどね」
僕の返答を聞き、星座橋捺月はクスッと笑った。
その笑み一つで、僕は地獄でもやっていけそうな気がする。
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作家から
今日はこれで終了。
兎に角、完結するまで優先して書きます。
というわけで、明日からもよろしくお願いします( ̄▽ ̄)
一旦寝てから、物語を整理します。
兎にも角にも、少しでも早く終わるために尽力します。
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