第11話:リアルタイム執筆が始まりました③
「あぁ〜。何だか、お腹空いちゃったなぁ〜」
数時間前に、ハンバーガー屋で食べたはずだ。
それなのに、もうお腹空いたのか。
もしかしたら、燃費が悪いカラダなのかもしれない。
「で、どうする? 最後の晩餐はさ」
「僕はちょっと食べる気が……」
「何その言い方。私がデブみたいじゃん」
「……違うよ。ただよく食べるんだなと思って」
「アイドルはね、体が資本なの。食べないとやってられないんだよ」
「確かにその通りかもしれないね」
「それにさ、一緒にヤッたじゃん。それでエネルギー使ったんだよね」
体を動かしたからお腹が空いたか。
セックスでお腹が空くのは、ダイエット方法としてはアリだな。
消費カロリーがどのくらいあるのかは知らないけども、もしも彼女が痩せたいと言い出したら、僕は率先して手を挙げるとしよう。
「何か食べたいものでもないの?」
「……死ぬ前に食べたいと思わないんだけど」
「本気で死ぬ気があるの? 灰瓦礫くんは」
「怒られる要素があるの? 今の発言に」
「あるよ、それは。もう食べる日なんて一生来ないんだよ!」
言われてみればそうだ。
死んだら一生何も食べられなくなってしまうのだ。
だけど、逆に言えば、それは何もしなくてもいい世界に行けるわけだ。
まぁ、死後にも僕たちの意識が残るかは不安だけどね。
「特に食べたいものがないなら、私が選んでもいい?」
星座橋捺月にそう言われて、僕は「うん」と頷いた。
彼女は僕の腕を取り、颯爽と歩き出す。僕は腕を引かれた状態で、彼女の後を追う。
僕が全く知らない世界。大きなビルや建造物が立ち並んでいる。
僕が住む地域とは比べられないほどに、煌びやかな世界が広がっていた。
「今日一緒に食べるお店はここです」
星座橋捺月が指差す方向は、ビルの一棟だ。
何かを飲み食いする場所とは到底思えない。看板がどこにもないし、見た限りはビル内もカーテンが閉まって、明かりは一切漏れ出てないし。
「……捺月はさ、僕をハメようとしてる?」
「ん? どういう意味かな?」
「僕みたいな田舎者からお金を騙し取ろうとか思ってない?」
「…………今更そんな質問する? 私を美人局と言いたいわけ?」
用心深い僕に、星座橋捺月は呆れた声で。
「そんなはずないじゃん。少しは私を信用してよ」
「ごめん。信じてないわけじゃないんだけどさ」
「怖がる気持ちは分かるよ。ただ、ここはVIP専用の焼肉店なだけだから」
◇◆◇◆◇◆
「うわぁ〜……スゴイ……肉の香りが」
エレベーターに乗り、会員制の焼肉店に入った。
正に、その瞬間から、僕は肉の虜になってしまった。
食欲を掻き立てる肉の香りに惑わされていると、若い男性スタッフが現れた。
星座橋捺月はスタッフと手短に話し合い、僕へとウインクをしてきた。
「では、こちらへどうぞ」
スタッフの指示に従い、僕たちは店内の奥へと向かう。
ビルの一棟を貸し切った店舗だが、完全個室型のようだ。
自分たちの部屋へと向かう途中から、あちこちで肉の香ばしい煙が漂ってくる。僕は思わず、生唾を飲み込んでしまう。先程までは食欲が出てこなかったが、やはり美味しそうな肉となると、僕は抵抗することができないようだ。
先を歩く男性スタッフの後ろで、僕は星座橋捺月に訊ねてみた。
「こんな高そうなお店をよく知ってたね」
「……接待で何度も来たことがあるからね」
「聞きたくなかったよ、そんな情報は」
「自分から聞いてきたくせに」
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作家から
今日は一旦寝る。明日、仕切り直すわ。
ではでは、また数時間後に会いましょう。
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