第3話 続いた不幸

何時間座っていただろうか。

服も完全に乾き、同じ体勢でいたせいか、体が痛い。


気持ちも少し落ち着きたので帰ろうと思い、ベンチから重い腰をあげた。


「よし、明日から頑張るぞ!」

自分に言い聞かせるように叫ぶ。


後になって周りの目が気になり周囲を見渡すが、誰もいない。

よかったと胸を撫で下ろす。


河原を家の方向へ歩きはじめる。


この川どこから流れてきてるんだろうと思いながら歩いていると、ふとカラスがダンボールを漁る様子が見えた。

(あんなところにダンボールあったっけ?)


じっとみているとどうやらなにか入っているようだ。


(ん?たぬき??)


少しして薄汚れた何かを咥えてカラスが出てきた。


「あ、子猫!!」


なんと箱の中身は子猫だったのだ。

箱の横で何やらカラスにつつかれている。


(どうしよう…助けないと食べられちゃう…)


大の猫好きである私は子猫を見捨てることができなかった。


「やめなぁーさいっっ!!」

(えいっ!)

私は無我夢中でカラスに向かって石を投げた。


が、しかし、逆効果だったらしい。

獲物を奪われると思ったカラスが慌てて川方向に飛び去ろうとしたのだった。


(ええ?!)


しかも運が悪いことに慌てたカラスが子猫を川に落としてしまった。


(え、あんなちっちゃい子…溺れちゃうよ)

私は何も考えずに川に飛び込んだ。


幸い比較的浅い川だったため、

間一髪、すぐに子猫を確保。


今まで汚れていたせいでわからなかったが、青色の目をした可愛らしい白猫だった。


「良かった…!おうちに帰ったらおいしい ごはんあげるね。

はやく岸に上がろっか!」


大人なら足の着くほどの浅瀬だったため、美琴は歩いて岸に向かう。


(あと少し…!浅くて助かった!)


.....とその油断が悪かった。


一部深い部分があったことに気づかなかったのだ。

足を滑らせた私は川の流れのままに流されてしまう。



(重い。息ができない。)


先程までは猫を助けるのに必死で気づかなかったが、いくら春とはいえ、夕方の川は凍てつく冷たさだ。

全身が痺れる。


(嫌だ、こんな死に方したくない。蒼穹に…朱莉に…、私にこんな仕打ちをした訳を聞かなきゃ!)


どんなに足掻いても、水に流された私の身体はどんどん沈んでいく。


(お母さん…お父さん…、まだ死にたくないよぉ....。)


助けを呼びたくても声が出ない。

まして薄暗い川の中なんて誰も気づいてくれない。


だんだんと身体の力が抜けてきた。

(あ...私死ぬんだ。)


最後の呼吸をした後、私の意識はぷつんと途切れた。

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