第2話 川辺で
気がつくと川に来ていた。
先程まで降り続いていた雨のせいか、水かさが増して濁流となっている。
土手にあるベンチの水を払い、腰をかける。
木材に染み込んだ水が心なしか服へ移った気がしなくもないが、そもそも服自体が濡れているので気にしない。
バックに入っていた水筒を取り出す。他にノートと書類なども入っていたが水没して使い物にならないだろう。
朝に入れた水筒の中身はまだ温かく、なんだか優しい味がした。
冷たかった身体が温まったせいか、喉から熱いものが込み上げる。
(ああ、なんで蒼穹は私を捨てたのだろう。
ああ、なんで朱莉は私を裏切ったのだろう。)
遠くで腕を組み去っていった2人の姿が脳裏にフラッシュバックする。
蒼穹と私は17歳の頃からずっと付き合っていた。高校こそ別で、しばし遠距離恋愛であったが、大学は同じところに入ることができた。
蒼穹は中学の頃から剣道をやっていて、高校では関東大会で優勝する程の実力者だった。もちろん女子の間では密かな人気を集めていたが、周りから"熟年夫婦"と言われるほどに私に対して一途だった。
朱莉とは大学に入学してから知り合った。
陰気で内気な私とは違い、明るく活発な性格な朱莉は誰からも好かれた。
学内の先輩とトラブルになった時も、
朱莉が上手く言って解決してくれた。
(2人とも大事な彼氏と親友だったのになぜ?)
私はただぼーっと川を見つめることしかできなかった。
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