第48話

それから俺達は寮に向かった。その道中貴族からこそこそとされたがルナは気にしてないようだったので放っておいた。恐らく噂広まっているだろう。罪人の娘がいると。まぁ広がったところで貴族にはどうすることまできないがな。うちの養子に入ってるから。うちを敵に回すと王族も敵に回すことになる。親父は経済界の大物だからだ。


「それにしても立派な寝殿造の建物があるなここは」


貴族が住む家でもここの歴史は古いから何百年前の建物もあるんだろう。作りは完全に平安時代だ。恐らくご先祖様が築造に助言したんだろう。書物では当時この造りが流行ったと書いてあった。見るからに豪華そうで貴族には好まれそうな家だからな。そもそも寝殿造自体が貴族が住んでいた家だし。


「そうですわね。あまり見たことないですわ」


「これは何百年前の流行った家だからね」


やっぱりそうか、こういった家は今は建てられてない。技術を継いでる人がいないのだろ。それに一目で造りが分かるような家ではないってことだ。


「そんな前からありますの!てことはここに住んでいる人は何百年前からやっている名門貴族ってことですわね」


「その認識で合っているだろうな。貴族は入れ替わりはそんなに激しくないし」


うちの家は何百年前から方針は変わってないんだろう。魔王を追い詰めた家なら貴族になっていてもおかしくないからな。それかなってやっぱり貴族をやめたかだな。


そんなことを話していると、寮に着いた。剃るにしても足を骨折しないでよかったわ。さすがに足だと歩くペースが遅くなって面倒だからな。


「それじゃエミリーここまでですの。私たちの家に帰りますの」


エミリーはぐぬぬと言っている。そんなに悔しがるもんか?ルナは勝ち誇った顔をしてるし。


そして俺達は悔しがっているエミリーを尻目に寮に向かった。寮に着くと、ルナは和室に座った。そして真面目な顔になる。なになんかあるのか?


「お兄様がこの寮にいなくて寂しかったですの。お兄様成分が足りなかったですの。だからそれを補うように私を抱き締めながら頭を撫でてくださいですわ」


そう言ってルナは俺に近づく。そんなに俺の撫で方な気持ちいいのか、それとお兄様成分ってなに?俺は栄養かなにかなの?まぁ別に撫でることは解くに恥ずかしくないので了承をする。


俺はルナを抱き寄せて頭を撫でた。するとルナは目を細める。


「悪かったな寂しい思いをさせて、これからはずっと一緒にいような」


もう無茶はしないってことは約束できないが、できるだけ無理のない範囲で色々やる予定だ。まずは古式魔法で新しいのを身に付けて練度を上げる。


ルナは俺から離れると真剣な表情になった。なにか大事なことを言うのか。


「お兄様約束ですわ。何があっても私の元に帰ってくると」


約束か、確かに約束をしてた方がなにがなんでも生きようとするだろう。どんな無茶をしようとも。まぁ死ぬ気は更々ないがな。折角この世界に転生したのにルナの生き末を見れないのは悲しいからな。なんとしても生きる。そして国を守り独立魔法師になって末永く幸せに暮らす。


「ああ、何がなんでもルナの元に帰ってくるぞ。そしたら暖かく向かえてくれ」


そう言うと、ルナは俺が見惚れるような頭を右肩に傾けて微笑みを浮かべた。天使か何かかな?可愛すぎて今すぐにても抱きつきたい。だがここで抱きついたら妹に抱きつくとかキモとか思われかねない。ルナにそう思われたら俺は寮に引き込もって枕を濡らすだろう。


「分かりましたの。お兄様の居場所は私のところですわ。これはエマがいても変わりませんわ。どんなときも信じて暖かく向かえますの」


エマか、その存在はまだ俺の中では大きい。エマが連れ去れる瞬間を思い出すと、胸が痛くなるし、悲しくなる。だがいつまでも気にしても仕方がない。それに今の俺にはルナがいる。それでいいじゃないか。推しと暮らせるほど幸せなものはないだろう。


「それじゃ俺もこんな怪我をしないように一から鍛え直すか。四天王にも負けないくらい」


「四天王と戦わないでと言っても聞きませんわよね。それならその特訓私も付き合いますわ。まぁ私は魔法が中心になりますが。それで私の古式魔法の特訓にも付き合ってほしいんですの」


「魔王は魔法を使ってくれるからそれはありがたい。古式魔法の特訓にももちろん付き合うぞ。ルナが強くなってくれればなにも気にしないで、強敵と戦えるからな。できれば戦いたくないが、あの鬼人と目をつけられたから戦うことは必然だろうしな」


どんなときも負けないように、俺は努力を続ける。どんな困難だって乗り越える。


「お兄様私と一緒にこの大陸に平和をもたらすんですの」


「ああ、この大陸を守るぞ。魔王の自由にはさせない。まぁできれば魔王とは戦いたくないがな」


その辺はエマが覚醒してどうにかするだろう。俺はできるだけ犠牲者を増やさないようにするのが先決だ。それが俺が推しの世界に転生した理由のひとつだ。まぁルナを救って幸せにするのも俺が神様にお願いされたことだと思うが。俺はなんとしてもルナを幸せにする。それが俺の願いだ。そう思いながらルナに笑顔を向けた。














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乙女ゲーに転生した俺が推しの悪役令嬢と過ごすスローライフ 作家目指すもの @Ronisei

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